タクシーの最適ルートは難しい!
タクシーの最適なルートを選定する際、単に最安(最短距離)や最速だけを考慮するのではなく、さまざまな要因を考慮する必要があります。特に安全性を重視する場合、その選定は一層難しくなります。多くのクレームがルートに関連している背景も考慮する必要があるでしょう。
以下で、タクシーの最適なルート選定の難しさについて詳しく説明します。
1.交通状況の変動
交通状況は予測が難しいため、最適なルートを選定することは容易ではありません。タクシードライバーは、経験と勘を頼りに、最善の判断を下す必要があります。交通の流れは時間帯や日によって大きく変わるため、リアルタイム交通情報をナビゲーションシステムやアプリで確認し、迂回ルートを選択するかどうかを考えなくてはなりません。
悪天候は運転の難易度を上げます。滑りやすい道路や視界が悪い条件下では、通常のルートよりも安全を重視したルート選定が必要となります。
1)ラッシュ時の渋滞
朝の通勤ラッシュや夕方の帰宅時は、多くの車が道路を利用します。
特定のエリアや道路が一時的に混雑することがあります。
渋滞を避けるルート選定や、お客様に予想到着時間を正確に伝えることが求められます。
2)時間帯による変動(規制)
学校や駅、繁華街周辺などでは時間帯規制が実施されていることがあります。規制がなくても通常とは異なる交通の流れや、特定のエリアで混雑が発生することがあります。
3)事故や工事による渋滞
交通事故や道路工事は、予期せずに交通の流れを妨げる要因となります。
4)イベントや行事による渋滞
イベントやコンサート、祭りなどの大規模なイベントがある日は、その周辺エリアが混雑します。
5)季節や天候による影響
雨、雪、霧、強風、朝夕の日差しなど、さまざまな天候条件が運転の安全性や効率、交通の流れに影響を与えます。雨や雪、霧といった天候は、視界を悪化させるだけでなく、道路の滑りやすさなど、運転条件を変える要因となります。安全を最優先にしたルート選定が求められます。
2.地理の知識
タクシードライバーは最新の地理知識を持ち、それを活用してお客様を安全に運ぶ必要があります。都市の変化や新しい施設、道路の情報を常に把握し、ルート選定に活用することが大切です。
1)再開発の把握
都市の再開発により、新しい道路が作られたり、既存の道路が変更されたりすることがあります。これにより、ドライバーは常に最新の道路情報を更新し、新しいルートを考える必要があります。
2)新しい施設や店舗の出現
ドライバーは新しい施設への最適なルートを速やかに把握する必要があります。また、新しい商業施設やオフィスビル、観光地の出現は、その周辺の交通量を増加させる可能性があります。
3)施設や店舗の閉鎖
一度賑わっていたエリアが、施設や店舗の閉鎖により静かになることも。これにより、以前のような混雑を避けるルート選定が不要になる場合があります。
4)都市の複雑な道路構造
東京などの大都市や歴史的な都市では、道路の構造が非常に複雑であり、一見直線的に見える道も実際には迂回していることが多い。このような道路の特性を理解していないと、効率的なルート選定は難しくなります。
5)道路の種類と特性
高速道路、主要道、狭い道、裏道など、道路にはさまざまな種類があります。それぞれの道路には、速度制限や通行料金、混雑の傾向など、異なる特性があります。狭い道は避けるか、適切な速度で通過するかの判断が非常に難しいです。
3.お客様の要望
タクシーを利用するお客様は、単に目的地まで運んでほしいという基本的な要望だけでなく、さまざまなニーズや期待を持っています。タクシードライバーとして、これらの要望を正確に理解し、適切に対応することが求められます。タクシーメーターによる運賃は、距離と時間に基づいて料金が計算されるため、お客様の要望にどれだけ応えるかの判断は非常に重要です。
1)特定のルートを希望
お客様は、自分が知っている道や、特定の景色を見たいという理由で、特定のルートを希望することがあります。
お客様の好みは多種多様です。住宅街の狭い道を避けたいとか見通しの悪い道を避けたいと希望するお客様はありがたいが、逆の場合は安全を理由にこちらから避けたいと希望を出した方が良い時もあると思います。
2)特定の場所を経由、途中での寄り道や停車
途中でコンビニや銀行、観光地などに立ち寄りたいという要望が出ることもあります。停車場所の安全性を確認し、お客様の要望に応じたルートや場所を提案します。
3)ルートお任せ
①「最安」か「最速」で確認、「最短」(距離)は「最安」を希望か確認
ルートの選択に関しては、お客様の希望に「最安」か「最速」かを確認することが重要です。また、「最短距離」と「最安」は異なることを理解しておく必要があります。「最安」は料金が安くなるルートを指し、最短距離のルートとは必ずしも一致しません。渋滞の激しい最短ルートを選ぶことは、最安を望むお客様の希望に合わないと考えられます。都市部では、遠回りして有料道路を利用する方がコスト的に有利な場合もあります。また、最短距離のルートが最速であるとは限らないことは明らかですが、ごく一部のお客様は「最速」と「最短(時間)」を混同している場合がありました。
最初に時間と料金のどちらを優先するかを確認し、共有することが重要です。渋滞を迂回する際には、お客様に確認し、相談することも考慮すべきです。時には、迂回を希望しないお客様もいます。
「最速」のルートを希望するお客様はありがたいですが、急かされている可能性も考慮し、渋滞情報を正確に把握して共有することが望ましいです。別の交通手段を選択されることもあるかもしれませんが、それは仕方のないことです。渋滞に巻き込まれるよりは、他の選択をしてもらった方が良いとも考えられます。
また、「最安」で「最速」と要望される場合、具体的な優先点を明確にすることが重要です(例えば、有料道路を使うかなど)。
仕事や休息を求めるお客様が車内での静寂を希望することもありますので、そのような要望は最初に確認しておくと良いでしょう。
②ナビルートそのままで良いか確認
ナビを使う場合、表示されたナビルートを簡単に口頭で説明して、そのままで良いか確認する必要があると思います。現在のナビゲーションシステムは渋滞を考慮してルートを提案しますが、渋滞情報の信頼性が必ずしも高くない事や完成度が低いため、時折遠回りとなることがあります。
さまざまなナビアプリが存在する中、多くの人が利用するアプリを事前にインストールしておくと便利かもしれません。私自身は、主に会社提供のナビを使用しており、不自然に感じた場合には他のアプリでルートを確認しています。多少の遠回りはお客様も理解してくださることが多いですが、多少でない場合はそうとも限らないと思います。
また、目的地に近づいてからかナビを入力するときに、最終的な付け場所を確認することは必要だと思います。ナビは入口まで案内してくれないと思っていた方が良いです。最後で右往左往は印象が良くないです。
出来るだけお客様の希望を聞き入れてお互い気持ち良く目的につけるよう努力はした方が良いとは思います。
参考)ナビアプリのルート選択肢
最短距離のルートが迷った時の基本だと思いますが、選べないものもあります。最短距離の代わりは、一般、安、おすすめ?
4.ナビ(アプリ)技術の限界
ナビゲーションシステム(アプリ)は、現代のタクシーにおいて欠かせないツールとなっていますが、その技術的な限界や課題を理解し、適切に利用することが求められます。
1)リアルタイム情報の遅延
ナビアプリはリアルタイムの交通情報を提供することを謳っていますが、実際には数分の遅延が生じることがあります。これにより、突発的な交通渋滞や事故情報を即座にキャッチするのは難しい場合があります。
2)地図データの更新頻度
都市の再開発や新しい道路の建設、既存の道路の変更、道路規制など、地図情報は常に変動しています。ナビアプリの地図データが最新のものでない場合、誤ったルート案内が行われるリスクがあります。
3)GPS信号の不安定性
高層ビルや山間部、トンネル内など、GPS信号が届きにくい場所では、正確な位置情報の取得が難しくなります。これにより、ナビゲーションの精度が低下することがあります。
4)過度な依存のリスク
ナビアプリの高度なサポートに過度に依存することで、ドライバーの直感や経験に基づく運転判断が鈍る可能性があります。これは、特に技術的なトラブルや誤った案内が発生した際に問題となります。
5)人間の判断とのギャップ
ナビアプリはアルゴリズムに基づいてルートを提案しますが、その判断基準は必ずしもドライバーや乗客の期待と一致するとは限りません。例えば、狭い道や急な坂を避けたいという人間の感覚は、アプリの判断には反映されないことが多いです。
5.安全とのバランス
Uターンや停車位置の選択は、安全と効率、そして乗客の要望との微妙なバランスを要求される瞬間となります。ドライバーは、安全や効率を考慮した選択の理由を乗客に説明し、理解を求めることが重要です。
また、居住車両のルールは、タクシーにも当てはまるのでしょうか?
1)Uターンの課題
タクシーは都市部での運転が多く、Uターンの必要性が頻繁に生じます。しかし、Uターンは交通の流れを妨げる可能性があり、また安全上のリスクも伴います。
乗客の要望で急なUターンを求められることも。しかし、ドライバーは交通ルールと安全を最優先に考える必要があります。
2)停車位置の選択
乗客が指定する停車位置と、ドライバーが安全と効率を考慮して選ぶ停車位置は必ずしも一致しないことが多いです。
例えば、混雑した通りでの停車は他の車の流れを妨げる可能性があります。また、歩道や交差点の近くでの停車は、事故リスクを増加させる可能性があります。
特定の場所での降車を強く希望する場合、ドライバーはその要望を満たす方法を考えながらも、安全運転を最優先に行動する必要があります。
3)居住者用車両のルール
タクシーは居住者を自宅まで送迎する必要がありますので、居住者用車両で良いと思いますが、厳密にいうとエリアの範囲が問題となりそうです。
しかし下記記事を参考にすると、空車時以外にはあまり気にしなくて良さそうな気がします。
乗りものニュースから抜粋
「そのエリアの居住者がタクシーを利用したい場合にタクシーがそこを通ったり、あるいはそのエリアに配達物のある配送車、郵便車などが通ったりする場合はよいのだそう。」
6.ルートに関するクレームの背景
タクシーのルート選定に関するクレームは、業界内でよく知られる問題の一つです。その背景にはいくつかの要因が考えられます。
以下に、その主な理由とその背後にある事情を解説します。
1)お客様の期待とのギャップ
乗客は過去の経験や情報に基づいてルートや料金に対する期待を持つ。
乗客の期待する「最適なルート」とドライバーの選択するルートは必ずしも一致しない。
料金の不透明性や追加料金は、期待とのギャップを生む要因となる。
期待する所要時間と実際の所要時間の違いはクレームの原因となる。
ドライバーの説明不足は、期待とのギャップを生じやすくする。
2)料金に対する敏感さ
タクシーの料金は距離や時間に応じて変動します。もし遠回りをしたと感じた場合、お客様は不必要に高い料金を支払っていると感じることがあります。
3)通信技術の普及
スマートフォンの普及により、多くの人々がリアルタイムでのナビゲーションやルート提案を手軽に利用できるようになりました。その結果、お客様自身が最適と考えるルートの情報を持っていることが増え、それと異なるルートを選択した際のクレームが増加しています。
4)ドライバーの判断の多様性
交通状況、地理の知識、経験など、ドライバーごとの判断基準は多様です。そのため、同じ出発地と目的地であっても、ドライバーによって選ばれるルートは異なることがあります。
5)コミュニケーションの不足
お客様が乗車時にルートの希望を伝えないと、ドライバーがルートを選択。
ドライバーが選択理由を十分に伝えないと、誤解や不満が生じる。
乗車時に目的地やルートの確認が不十分だと、後でトラブルの原因となる。
似た名前の場所や道路がある場合、事前の確認は不可欠。
ドライバーがナビに過度に依存すると、乗客とのコミュニケーションが疎かに。
ナビだけでなく、乗客の要望や状況に応じたルート選定が必要。
6)過去の経験に基づく不信
お客様が過去に不正確なルートで運転された経験がある場合、新たなドライバーに対しても疑念を持つことがあります。
過去の悪い経験
以前のタクシー利用時の不快な経験(回り道、高料金、遅延など)が、次回の利用時の不信感の原因となる。情報の不均衡
タクシードライバーは地域の道路知識が豊富だが、乗客は情報を持っていないことが多く、ルート選定に疑念を抱くことがある。コミュニケーションの欠如
ドライバーがルート選択の理由を乗客に説明しないと、乗客は過去の悪い経験を連想し、不信感を抱く可能性がある。都市伝説や口コミの影響
タクシーに関するネガティブな都市伝説や口コミが広がると、乗客は乗車時から不信感を持つことがある。料金体系の不明瞭さ
タクシーの料金体系の不明瞭さが、ルート選定に対する疑念の原因となることがある。