_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__92_

#タクシードライバーは見た「歩きたばこの男」

銀座の晴海通り、三原橋の交差点。
歌舞伎の演目がされる劇場、歌舞伎座を目の前にしたその交差点で左折待ちをしていると、20代後半くらいだろうか、タバコを吸いながら信号待ちをする男がいた。
「あれ、ここってたぶん、路上喫煙禁止だったよな~」
ニコニコ動画で画面に文字が流れるように、ほんのわずかであるが頭のなかに言葉が流れ、そこから思量にふけりだした。

男は交差点の隅で顔を俯きながら、眉間にしわを寄せ、タバコを口にくわえている。路上喫煙禁止だと知った上で急いで吸っているのだろうか。
なんとなくだが、中学生がタバコを吸いだし、少し慣れたときの「タバコ吸ってる俺」に酔っているような雰囲気にも見える。
―――もしかして、吸いだしたのは最近からなんじゃないのか。
タバコを吸う奴は中学高校から吸い始めるだろうし、そう考えるともう10年近い月日が経っている。だが、そんな人の吸い方では無かった。
わざわざ20代後半にもなった大人がタバコを吸う自分に酔う訳が無い。
二十歳を越えて吸い始めるなんてよっぽど追い込まれない限りストレス発散の選択肢としては入らない。

コントレオナルドのレオナルド熊さんは、ネタの中でこう言っていた。
「あなた、二十歳を越えてタバコを吸い始めたの?バカなの?」
自分の娘の喫煙により、指導として学校に呼ばれた父親役の熊さんと教師役の石倉三郎さんのやり取り。
「二十歳を越えなければタバコは吸ってはいけないと言うルールなんです」という石倉さん演じる教師に屁理屈のような言葉で返す父親役の熊さんは
「そんなこと言ったって、二十歳を越えてタバコ吸うバカなんていないよ」と。
すると石倉さんは
「私はきちんと、二十歳を越えてから吸い始めましたよ」
それに対する答えが、驚きながら「あなた、バカなの?」だった。
そもそもタバコは若気の至りで手を付けるもの。
身体に害しかないそのタバコを、害を理解できる大人になってから吸い始めるなんてバカだよ。という社会風刺的なネタのひとつ。

交差点で信号待ちをしながらタバコを吸うその男性に、このレオナルド熊さんの言っていた二十歳越えてタバコを吸いだした人なんじゃないかという推測が立った。
更に思う、こういう路上でタバコを吸う人とクスリで捕まる人、本当に周りに害悪を与えているはどちらだろう?
タバコだってクスリだって、身体への害はあるだろうが自己責任であり、またそれによって自己完結で満たされているくらいならどちらも同じ。
何かのきっかけでクスリに手を付けるより、周りへの配慮に欠けることの方がよっぽど罪なことだ。
とはいえくだらない考え事のひとつ。

私自身、今もこれからもタバコは吸わないが、
26歳も越え、お金にもならない、義務でもない、こんな大したことない一瞬を書き留めていることも、ある意味バカなのかもしれない。
副流煙はバラまかないが、炎々としたタクシーエピソードの気流を蔓延させていこうと思う。

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