あるタクシー運転手の格言「青は希望、黄色は乱暴、赤は死亡の意味が隠れてる」
タクシー運転手からは時たま格言が生まれる。
タクシー運転手以前の経験、タクシー運転手になってからの経験、
失敗を経験した者が就くというイメージも少なからずあるこの職業には
それらの経験の中で生まれた格言が多くの人間を納得させ、少しだけ困惑させる。
そんな、一度は聞いておきたいタクシー運転手の格言を紹介していく。
今回は「東京都、32歳、女性、Uさん」が頂いたという格言を紹介。
Uさんはタクシーに乗っても運転手と会話することは無いそう。
音楽を聴いているフリや電話をして塞いでいるというが、たまに音楽を聴いて何の反応がをしなくても勝手にしゃべり倒す運転手に出会うことがあるという。
今回紹介する格言はその時のおじちゃん運転手が言っていた言葉なのだとか。
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私、たまにタクシーとか利用させてもらうときがあるんです。
タクシードライバーってたまに喋る人とかいて、私は大体イヤホンで耳塞いだり電話したりして、出来るだけ会話しないで済むようにしてるんですけど、今回はイヤホンして無視してるのにずっと喋ってきました。
しかも、なんか妙な事を言うので意外とイヤホンの音楽止めて聞き入っちゃってしまっていました。
最初の方はほとんど聞いてませんでした。
昨日の何がどうたらこうたら、この場所はどうたらこうたら、とにかく休み続けることなく、しかも冗談を言って楽しくなっちゃったんでしょうね。一人で喋りながらたまに笑ったりして。
ほんとによく喋るドライバーさんでした。
楽しそうにしてるから、その分イライラはせず「ずっと喋ってんなー」って思うくらいでしたけど、ついには停まっている時に目の前にある信号のことまで語りだしました。
「信号はね、交通整理以外にボウヨウが隠れてるんだよ。」
ここから次第に興味が沸いてしまいます。
「青は希望、黄色は乱暴、赤は死亡、つってね」
なんかボウを使って韻を踏んだっぽいのですが、まずその前にボウヨウの意味が分かりません。
でも聞いてきないことになっているので、今更質問することも出来ずスマホで調べてみました。
そしたら「亡羊」「茫洋」「冒用」とか色々出てきます。
どれか分かりません。一つ一つ調べるのも面倒だったのでやっぱり聞き流そうと思うと、
「ボウヨウっていうのはね、でたらめに使うことの意味なんだけどね」
「ヘッ、ンンー」
知ろうとしていたことをを教えてくれたので、思わず反応してしまいそうななりました。
咳払いして誤魔化し、早速調べます。
「ぼうよう でたらめ」で調べると出てきました。
ボウヨウも色々あるのですが、その中に「妄用」と書いて「ボウヨウ」と読む漢字があり、その意味には「でたらめにつかうこと」「むやみにつかうこと」等の意味があります。
「なるほどなー、信号にはデタラメが隠れてるって言いたかったのねー、それで、色ごとにでたらめな意味を付けたのか」
と、勝手に納得し、おじちゃんの漫談も終わるかなーと思っていると。
「俺はね、この相棒と一緒に居れるならいつ死んでも本望だよ」
と、ハンドルをポンポンと叩きながら言いました。
・・・え、何?ちょっと怖い。
急にちょっと怖いことを言いだしました。
でもさっきの妄用のときの「ボウ」にかけてるし、デタラメで言っているんだろうなー、ていうか、
「そうでしょ?それも妄用でしょ?」と聞きたい思いが高まったところで
キィーッ!!!
目の前が少し詰まったらしく急ブレーキを踏みました。
事故ではありませんがもう心臓バクバクです。
ちょっとマジでやめて、冗談であって。
そう願っていると、
「こういう渋滞のときこそ、辛抱しないとねー、イライラしたってしょうがないんだからー、んー、、、ボウ」
辛抱を使って再びボウ縛りで明るく喋ってくれました。
あ、良かった、冗談だったんだ。
そう安心したのも束の間、「イライラしたってしょうがないんだから」の最後も何かボウでかけたかったのか「んー」と何かを考えるようにしながら、「ボウ」と小さく発しました。出てこなかったのでしょうか。
でも私は「しょうがないんだからー、もう」をボウに変えたのかと思い、思わず吹き出してしまいましたがここまで来るとこのおじちゃんも可愛く見えてしまいます。
この後も数回、ボウ縛りで発した後、降り際
「お客さん、これおみやげ」
ニコッっと笑いながらそう言ってうまい棒をくれました。
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以上が「東京都、32歳、女性、Uさん」の頂いた格言でした。
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