33歳はしっかりしないといけない?

いつもの居酒屋のカウンターに顔の赤いお姉さまが2人。

その日私は財布を持っておらず、先輩が代わりにだしてやると2人ですこし腹ごしらえにきていた。

私たちが来たときには既にお姉さまたちは出来上がっており、私たちに興味津々で、

「何歳?」
「わっかー!なんでもできるじゃん」

と年齢を言うだけで大盛り上がりだ。

お姉さま方は30代で2人とも未婚だそうで、
1人は8年ほど付き合った彼氏がおり結婚の話は出ていないがもうその気はないらしい。
もう1人は彼氏がおらず、社内の4つ上に片想い中。
しかもそれを隣に座っている友達にはいえず、友達が先に席を立ったあとにこっそりと教えてくれた。

なぜアタックしないのかという我々にお姉さんは「どうせ終わりが見えている」と言った。
派遣社員として働くお姉さんは今年の6月からオーストラリアに行くのだそうだ。
そんな自分が無責任に思いを伝えることなどできないから何もできないと。

こんなに切ないことがあるのかと我々はお姉さま方に奢っていただいたマッコリを仰ぎながら胸を痛めた。

そこから話は盛り上がり、女3人で恋や仕事について話し合った。

お姉さんは日本だけに縛られてるともったいないと
行きたければすぐ海外にでもいくべきだと熱く語ってくれた。

私も先輩も留学を逃した人間だったので、憧れと自分のもしもの人生を諦めきれずに引きずっていた。

私は年齢やお金を言い訳にしていたのに、自分よりも年上のお姉さんが新たに1人で旅立とうとしてる事実がとても眩しく、恨めしかった。

そこには愛だの恋だの私が縛られていた話はなく、自分に焦点をあててどう動いていきたいのかどんな人間になりたいのかひとつの存在の話があった。

初めて会ったとは思えないほどの濃い時間を過ごしたのに、連絡先は交換しなかった。
ただ金曜日にまた飲みに行くかもしれない。そんなヒントだけを残してお姉さんを見送った。

1人で歩く帰り道は夜が怖くなくて、街灯は輝き、風は涼しく私の背中を押してくれた。

私は友達に電話をして言ってしまった。
あと2年以内に海外に飛び立つと。

言ってしまったから、もうその未来しかない気がした。

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