見出し画像

【映画感想】oblivion

2013年/アメリカ/主演トム・クルーズ

※ネタバレあります。

<あらすじ>

スカヴという宇宙からの侵略者に勝ったものの、地球は破壊されて人類はタイタンへの移住を余儀なくされた。
人類の一部はまだテットという宇宙ステーションのようなものにとどまっている。
移住には海水のくみ上げが必要で、ジャックは恋人のヴィクトリアといっしょに汲み上げプラントの護衛をしている。
ある日謎の宇宙船が砂漠に墜落し、ジャックはジュリアという女性を助ける。
彼女とともに宇宙船のフライトレコーダーを回収していると、謎の集団に拉致される。
謎の集団はテットを破壊しようとしており、そのためにジャックに協力しろと言う。
ジャックは拒否するが、立入禁止の危険区域でもう一人の自分と遭遇し、騙されていたことを知る。
もう一人のジャックも、ジャックと同じようにプラントを護衛し、ヴィクトリアとチームを組んでいた。
本当はテットが侵略者で、数十年前に調査に行ったジャックとヴィクトリアが捕まり、クローンを作成されていた。
宇宙船から助けたジュリアはジャックの妻で、謎の集団はレジスタンスだった。
真実を知ったジャックはレジスタンスに協力し、テットを破壊する。

<感想>

構成がよかった。
侵略戦争があったことや、ジャックが今何してるかは、全部ナレーションで冒頭に入る。
前提の規模がでかいから、これは一々映像にしていられない。

全面的に描写がとても丁寧。
ジャックが乗る探査機(小型飛行機?)の構造や可動域が発射前の確認作業として提示される。
私はあんまり意識してなかったけど、このシーンがあるからその先の飛行シーンやドローンとのチェイスがすんなり入ってくるんだと思う。
ドローンが生物をスキャンして敵か味方か判断するシーンもくり返し出てきてすぐ覚えられたし、探査機含め雷で不調になることも前の方でちゃんと描写されていた。
肝心なところで使う技をあらかじめ提示してあるとうれしい。

ヴィクトリアの女優さんが常に怖くてよかった。
絶対裏切るだろうなぁって空気を最初から出している。
まばたきが少なくて目を大きく開いているのが人外っぽかった。
ヴィクトリアの、テットからの指令に従順で機械的なところが、ジャックの人間らしさとの対比としてよかった。
最初はヴィクトリアが正しくてジャックが問題児に見えるんだけど、あとからジュリアやレジスタンスが出てくることで、おかしいのはヴィクトリアだっていうのが浮き彫りになる。

レジスタンスのリーダーもいいキャラだった。
死亡フラグを一度跳ね返す。
最初は核爆弾をドローンで運ぶ予定だったんだけど、直前に襲撃を受けてドローンが壊れちゃう。
結局ジャックが運ぶって言い出して、リーダーは「テットが破壊されるところをこの目で見たい」って言う。
それを一旦冗談で流しておいて、最後に本当にジャックといっしょに爆弾を運んで死ぬ。
フラグを立ててへし折って、フラグじゃないと思わせておいて回収する……緻密。

この話では、クローンは全部同じ人間として扱われる。
ジャックは死んじゃうんだけど、前に危険区域で遭遇していた別のジャックは生きていて、最後にジュリアと再会する。
同じ遺伝子を持っていても別の個体で、別の人生を歩んできたから別人っていうクローン感の方が、これまでの創作では一般的だった気がする。
ジャックは大量にクローンが作られていて、みんな記憶を消されてるんだけど、ジュリアを夢に見続けている。
消される前の記憶という一点で、クローンのジャックの同一性を担保している。
厳密に言えばジュリアを助けた記憶も、レジスタンスといっしょに戦った記憶も、再会したジャックにはない。
ヴィクトリアはどうなったのかとか、どこまで事情を知ってるのかとか、ジュリアの記憶を本当に取り戻したのかとか、細かい説明がないのが気になった。
そういうの素っ飛ばして、「彼は僕だ」って死んじゃったジャックと自分の同一性を前面に押し出してくる。
最後の最後まで細かいことをちまちま描写してたら切りがないし、絶対だらだらする。
気になったけど、思い切って説明がないからすっきりしてるんだと思う。

心が一個で身体がいっぱいあるのは、森博嗣の『迷宮百年の睡魔』で、自爆するのはハルマゲドン。
要素ごとに切り分けると、まったく新しい発想はない。
組合せの勝利。

oblivionの意味は忘却。

いいなと思ったら応援しよう!