見出し画像

楽園の記憶

私の中で時々湧き起こる、不思議な感覚がある。
「懐かしい」なのか、「憧れ」なのか、「閃き」なのか。ウキウキするようでもあり、清々しいようでもあり。

残念なことにそれは一瞬だけ湧き起こり、すぐに消えてしまう。目が覚めた途端に見ていた夢を忘れてしまうかのように。何がきっかけで湧き起こるのかもわからない。

どこかつかみきれないこの感覚に襲われたとき、うまく言い表せないのだが、一切の不安のない、幸せな状態になる。

鏡リュウジ氏の『牡牛座の君へ』で、牡牛座が持つ「楽園の記憶」について語られている。私の不思議な感覚が、はたしてその「楽園の記憶」のことなのかはわからない。

はっきりしているのは、それが私にとってとても「快」だということ。できることならずっとその感覚に浸っていたい。

一瞬浮上してくるたび、逃すまいとなんとかたぐり寄せ、正体を突き止めようと試みているが、毎回取り逃してしまう。

その感覚の正体をつかんで、好きなときに呼び起こし、あるいは常に浸っている状態になれたら、私に取ってそれは、解脱とか涅槃に入ることと同じことのような気がする。

私の奥底にあるものだと信じて、いつか再び浮上してくるのを楽しみに待っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?