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ご近所さんの稲刈り

愛犬との散歩で田畑を歩いていると、「秋の匂い」を感じた。幼い頃に嗅いだ、懐かしいこの匂い。「秋の匂い」の正体は、ハセ掛けされた稲の匂いだった。

これはうちの上のご近所さんの田んぼ。台風が来る前に、と思ったのだろう。連日田んぼ周りの草刈りと草焼きをこなし、この前の週末に、一家総出で稲刈りとハセ掛けをしていた。

辞書には「稲架(ハサ)」とあったが、岩手の私の地元では「ハセ」と言う。隣町ではハセではなく、棒を一本地面に突き立てるタイプの「ホンニョ」が主流のようで、漢字では「穂仁王」と書くとか。伊達藩か南部藩かの違いでハセかホンニョかに別れる、という説も聞いたことがあるが、本当のところはよくわからない。

うちの上のご近所さんの子育て法は、古き良き昭和を思わせる。子供たちは幼い頃から大人と同じように農作業をしていて、私よりも立派に一人前である。

先日も子供たちが大人と一緒に稲刈り作業をしていて、下の子はまだ小学生なのに、ジイジと一緒にハセを組んで、紐で固定していた。本当、頼もしい子供たちである。

近頃はハセをほとんど見なくなった。地元の団体がコンバインで一気に終わらせてしまうから、田んぼには何も残らない。

昔の稲刈り風景が見られるのは、このへんではうちの上のご近所さんくらいになってしまった。

母親が一輪車に下の子を乗せて、稲刈りした田んぼをみんなでキャッキャと笑いながら走り回っていた。昔は当たり前にあったその風景が、今ではとてもまぶしく見える。

このご近所さんだけは、できることなら変わらずにずっと、そのままでいてほしい。


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