恩田陸著 灰の劇場(ネタバレなし)
物語の構成も面白くてどんどん読んでいけるし、確かに読んだ後に語りたくなる小説ですね。
誰もが自身の過去、現在、未来を思わずにはいられないと思うし、自身の家族との関係や、過去に聞いた友達の、家族との関係をつい思い出してみたり。
過去に“T“と同じ事を考えていた場面もあって衝撃を受けたり、私の母を病院で1人きりで逝かせてしまった事や、40歳になってすぐに命を絶つことになってしまった姉の境遇を思い起こしてみたり…
地球上で生きた人の人生は、それぞれが舞台に立っているようなものじゃないかな。灰とは。劇場とは。それは何なのか、ネタバレしたくないので細かい描写は敢えてしないけど、読み進めていくうちに心に積もっていくものは、1人ひとり同じものはないんだろうな。
もちろん小説自体も面白く、大きな事件などは起こらないけれど、クライマックスに差し掛かってきたな、これは最後どういう展開になって締めくくられるのかな、と静かに、鼓動が早くなるのを感じるような物語で、
「ああ、こういう気持ちで終わりを迎えるんだ」
と大満足な小説でした。