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足し算のない正義
とても美味しい焼豚が手に入った時に、先輩にどうやって料理するべきか聞いたことがある。
そこで僕が思いついたのはやっぱり炒飯。
最強焼豚と卵。鬼に金棒、竜に翼を得たる如し。勝利の方程式を先輩に熱弁した。しかし先輩のアドバイスはそれとは真逆であった。
「こんだけ美味い焼豚なら卵は余計。油も焼豚から出るので十分だよ」
僕は稲妻に打たれたような気分になった。卵のない、サラダ油のない炒飯など考えもしない。実際その通りに調理をしたら最高に美味かった。そこには余計な味の一切しない完成された「焼き飯」があった。
料理は足し算という概念が崩れ、時として何もしなくて良い事があるのだと知った瞬間であった。
月日は流れ、今度は演奏しているお店のお客さんから取れたてピチピチの大根を頂いた。スーパーでカットされた状態でしか買った事がなかったので、どうやって調理をしようか考えていたらマスターが一言。
「旬の大根だけで味噌汁作ってみな。他に何もいらずに。すんごい美味いから」
実際そのように作ってみたら大根の味だけで最高に美味かった。ここに豆腐やネギを入れるのは野暮であると思える程、シンプルな味わいに心は美味しんぼの山岡状態であった。
きっと日常には余計な事が沢山潜んでいる。
多くを求めて失ったものも沢山あるのだろう。今一度食事の際にこの「足し算のない正義」について考えてみようではないか。
「トッピング」という魔術に魅せられて、大事なものを見失ってないだろうか。
その料理における「主人公」が何なのかを考えれば、自ずとシンプルで美味しいものを作れるのではないだろうか。そしてそれは音楽にも通ずるのではないだろうか。
ど素人なりの食への探求は続きます。