人生を最適化するお金の考え方
幸福な人生を送るためにお金はいくら必要でいつまで貯蓄を続けなければいけないのか疑問だった。その答えの一つを「DIE WITH ZERO」という書籍が教えてくれた。
話は変わりますが、FIREをご存じでしょうか。
「Financial Independence Retire Earily」の略で「経済的自立と早期リタイヤ」の意味です。FIREを達成できれば、それこそ好きなことをして生きていけるとなんとなく思い、ブームに乗っかりNISAを始めたわけですが、いつまで貯め続けるのかと疑問を抱いていました。その一つの答えがアメリカで行われた年収と幸福度の関係を研究した結果です。この研究によると年収800万円までは年収が上がるにつれて幸福度も上昇するが、それ以降は年収が増えても幸福度はあまり変わらないというものです。これを受けて日本でも内閣府が2019年に「満足度・生活の質に関する調査」でも年収と幸福度の調査が行われました。
年収100万円未満 5.01
年収700~1000万円 6.24
年収1000~2000万円 6.52
年収3000万円以上 6.6
年収5000万円以上 6.5
年収1億円以上 6.03
日本の調査においてもアメリカと似たような結果を示しており、年収800万円を目安にそれ以上は年収が幸福度に示す影響が薄れていく。そして5000万円から下降していくことがわかりました。これらのことから幸福度の高い生活を維持するためには年収800万円が理想であることがわかります。
投資信託で利回りを4%で考えると年収800万円の収入を確保するためには2億円が必要であることがわかります。投資であるため2億円全てを労働で確保する必要はありませんが、一般会社員にとって途方もない数字であることは間違いなく、現実味がありません。そもそも定年後に2億円を貯めたところで、使いきれるのかも疑問である。
やっぱりもやもやしていましたが、「DIE WITH ZERO」という書籍のなかに答えを見出すことができました。本書において大前提として、人間の幸福度は経験によって左右されるものであるとしている。そして、経験は金利付き(思い出すことで繰り返し幸福を感じることができる)であるため早く経験した方がその後の人生への影響が大きくなるというものである。確かにFIREを目標として生きていれば、経験のためにお金を使うことより、投資に回すことを優先してしまう。幸せな人生を送ることが目的であり、FIREはそのための手段であるはずなのに目的化してしまっていた。しかも2億円などと一般市民にとっては莫大な資産を目標としてしまうと達成することなく、ただ貯蓄して続けて死を迎え、子孫に遺産を残すことになりかねない。そして死ぬときに思い出すことは、貯蓄して続けてきた人生とお金のことだけとなってしまうかもしれない。さすがにそんな人生は悲しいなと思う。
でも人生100年時代と言わる現代において、今を楽しむためだけに貯蓄もせず、お金を使うことは働けなくなった時に貧困になり、恐ろしい未来が待ち受けるかもしれない。そのことについても「DIE WITH ZERO」は教えてくれる。結局のところバランスが大切なのだ。確かに老齢期の貧困で苦しんでいる人がいるのは間違いないが、多くの人にとっては、それを恐れるあまり貯蓄しすぎているというのです。そのバランスをとるために必要なことは、自分の寿命を予測することだと教えてくれます。本書ではアプリを使うことを勧めていますが、平均寿命や近親者の寿命などを参考に考えれば十分だと思います。おおよそでも寿命を予測しておけば、どれくらいのお金が必要でいくら使うことができるかを知ることができ、お金の使い方を最適化できるというのだ。具体的なテクニックも教えてくれる。いくら予測してもいつ死ぬかはわからないので、予測より長生きするかもしれない。長生きしすぎるのも老齢期の貧困も招くリスクなのである。その対処方法としてもちろん公的年金を活用すればいいが、それでも不安な人のために民間の長寿年金を使うこともおすすめしている。そういったリスクを排除し、老後に必要なお金に意識的になることで効果的に経験のためにお金を使うことができる。老後2000万円問題やメディアによる不安の冗長によって老後について漠然と不安になっており、その対処方法の一つとしてFIREを意識していたが、老後の生活に必要な金額と長寿リスクに対する公的年金や長寿年金の活用を具体的に計算することは、不安を解消することができ、もっとも大切な「今」に集中することができ、やりたいと思うことにいくらまでならお金をかけることができるのか的確な選択をできるのではないだろうか。死後にお金は持っていけないし、身体的には年を重ねるほど、経験できることは少なくなっていくのだから、やりたいと思ったことは早く経験して、思い出をいっぱい携えて豊かな気持ちで人生最後の日を迎えたいものです。