発生メカニズムから紐解く足関節捻挫の疼痛評価
こんにちは、CLINICIANSのタツ(@tatsu_bridge)です。
先日、yoshiki(@PtGekikara)さんがこちらの記事を書いてくれました。
という事で、今回は発生メカニズムから紐解く足関節捻挫の疼痛評価について、実際に私が行っている事を中心に書かせて頂きます。
本記事はこんな方にオススメです。
本記事を最後までお読み頂くと、足関節捻挫へのアプローチがしっかり出来るようになると思います。
足部に自信がない方、もっと詳しく知りたい方は必見です。
それではいってみましょう!
▶︎ 発生メカニズム
足関節捻挫はスポーツ活動において好発する外傷になります。大きく分けて内反捻挫と外反捻挫に分類されますが、内反捻挫が大部分を占めます。(なぜ内反捻挫が多いのかはこの後、解説しますね。)
内反捻挫は方向転換動作やストップ動作などで過度な内反・内旋運動が生じた際に発生します。
外側の靭帯組織(前距腓靭帯や踵腓靭帯など)を損傷する事が多く、合併症として軟骨損傷や腓骨筋腱損傷、前下脛腓靭帯損傷を伴うこともあります。
そのため、損傷組織がどの範囲まで及んでいるのかを十分に評価する必要があります。
足関節捻挫は、スポーツ外傷の中でも比較的軽度なものと捉えられがちで、十分な治療やリハビリテーションを行わずに運動や競技復帰をしたために、可動域制限や荷重時痛(下腿前傾位)の残存、再発の繰り返しに悩む症例が少なくありません。
(つい先日もこのような中学生の症例に出会いました。)
足関節内反捻挫後の機能不全の特徴や、慢性的な足関節捻挫の再発、主観的な足関節不安定感を症状とする慢性足関節不安定症(CAI)に移行するフローチャートがこちらになります。
わかりやすく整理されていて、私もよくこれを参考にしながら考えています。
足関節内反捻挫後は、距骨内反・内旋・前方不安定性(いわゆる構造的不安定性)が生じ(①)、受傷後の可動域制限(②)や足関節周囲筋(特にヒラメ筋や腓骨筋)の機能不全(③)などによるスポーツ動作時の過度な外側荷重(④)が足関節不安定感を増強(いわゆる機能的不安定性)させ、CAIに移行すると考えられています。
▶︎ 足関節内反捻挫が起きやすい解剖学的特徴
①外果と内果の長さの違い
外果の方が内果より長く、距骨は足関節のほぞ穴の中で内側に動きやすいので、足関節内反捻挫が多い。
②距骨体部の形態
距骨体部は前方が後方より幅が広く、足関節背屈位で安定し、底屈位で不安定になる。そのため底屈位での捻挫が起きやすい。
③足関節底背屈の筋力
底屈筋力の方が背屈筋力よりも大きく、底屈位をとりやすい。
(Laurin C et al : Sagital mobility of the normal ankle. Clin Orthop 108 : 99-104,1975. )
背屈についてはこちらの記事をご参考に!
④内返し・外返し筋力
内返し筋力の方が大きく、足は内反位をとりやすい。
(Laurin C et al : Sagital mobility of the normal ankle. Clin Orthop 108 : 99-104,1975.)
⑤腓骨筋の作用
外返し作用をもつ腓骨筋の力が足関節底屈位では加わりにくい。そのため足関節内反捻挫が起こりやすい。
(Cox JS et al : "Normal" talar tilt angle. Clin Orthop 140 : 37-41,1979.)
⑥外側靱帯の走行
前距腓靱帯は外果下端前方から距骨頸部外側に付着している。走行は足関節中間位で水平面から約45°で距骨の前方移動と底屈位での内返しを制動している。
踵腓靱帯は外果下端から腓骨長軸に対して約45°後方に走行し、踵骨体部に付着する。足関節中間位での内返しでは緊張するが、底屈位では外返しでストレスが増加する。
(大関 覚:踵腓靱帯機能と不全状態の徒手検査法. 日足外会誌 26:85-90, 2005.)
後距腓靭帯は外果下端後方から距骨後突起周辺に付着し、足関節底屈位で弛緩し、過度の背屈位で緊張するが、単独では損傷しにくい。
靱帯についてはこちらの記事をご参考に!(最新情報です)
上記のことを踏まえて、ここからは主訴となりやすい疼痛について考えていきましょう!
▶︎ 主訴
- 疼痛発生場面
受傷時の状況を詳細に聴取して、損傷組織や重症度を推定します。接触型の受傷は、ジャンプの着地動作などで相手の足に乗り上げたり、スライディングタックルを足関節内側に受けたりすることで内反強制され発生します。
着地動作についてはこちらの記事をご覧下さい。
非接触型の受傷は、減速動作や方向転換動作で発生することが多いです。どちらの場合でも受傷動作時の足関節の肢位を詳細に確認することが重要になります。
また、受傷後の競技続行の有無や荷重・歩行が可能であったかなどの聴取をすることで、損傷組織とその重症度を推測します。
慢性例では、足関節捻挫の受傷歴(回数)やその重症度、固定期間や免荷の有無を聴取し、足関節捻挫を繰り返している場合には、構造的な不安定性に加え、機能低下が残存している場合が多いため、可動域制限や筋力低下、不安定性を自覚していたかなど、受傷前の状況も確認しておくといいです。
- 疼痛の種類
受傷後の症状の種類を聴取し、患部の状態を推定します。
受傷後すぐ(急性期)の鋭い痛みは損傷靭帯(多いのは前距腓靭帯)の疼痛ですが、慢性期では外果周囲の滑走不全によって靭帯以外の軟部組織に伸張ストレスが加わることで疼痛が発生することもあります。
動作時の鈍い痛みや荷重時の圧迫感(窮屈感)は関節内の慢性炎症が考えられ、下腿前傾に伴って出現する痛みは、距腿関節のアライメント不良や前下脛腓靭帯損傷の合併を疑います。
- ADL上の疼痛の有無
歩行において、立脚初期から中期までに疼痛があれば、関節内の腫脹が残存し、荷重による圧迫ストレスで疼痛が出現している可能性を疑います。
立脚後期や階段の降段動作時の疼痛(足関節前方に多い)が主訴であれば、背屈位での距腿関節のアライメント不良による前方のインピンジメントを疑います。
▶︎ 疼痛検査
- 圧痛
足関節捻挫では損傷頻度の高い、前距腓靭帯、踵腓靭帯、前下脛腓靭帯の圧痛を確認して、外果の後方で腓骨筋腱の損傷の有無を確認します。
- 疼痛誘発
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