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先輩攻略戦 #3

駅に着いて二人で電車を待っていた。


〇〇先輩と同じ電車だと知った時は死ぬほど喜んだなー。


ちなみに私のもう一つ先の駅が〇〇先輩の駅らしく、運命ってまさにこのことだと思う。


○○「……。」


ちらっと〇〇先輩を見る。


あれ?


少し様子が変?


いつもより眉間にシワがよっているといいますか、怒ってらっしゃる?


何かした覚えはないんだけど…。


いつも不機嫌そうだけど今日はさらに不機嫌そうだ。


奈央「あの、〇〇先輩?」


○○「……なに。」


あれ?


やっぱりいつもより声が低い?


考え事かな。


奈央「どうしたんですか?」


○○「……は?」


意味がわからない、とでも言いたげな顔をする〇〇先輩。


もしかして無意識?


奈央「いや、〇〇先輩の様子がおかしかったので…」


○○「顔に出てたのか。お前って本当にすぐ気付くんだな。」


いや、今度は表情に出して気持ち悪がらないでくださいよ!


奈央「〇〇先輩を一番近くで見てるんで!」


○○「ストーカーかよ。」


いいんです、私はなんと言われようが打たれ強いんで!


奈央「それで、何かあったんですか?」


もう一度聞くと、少し黙ったあと口を開いた。


○○「……来週、何があるかお前知ってんのか。」


奈央「来週ですか?」


突然の質問に戸惑う私。


来週何かあったっけ?


○○「知ってたらそんな冷静なわけないか。」


冷静?


逆に不安になるんですけど。


一体来週に何が?


○○「二年、月曜から修学旅行。」


奈央「修学、旅行……」


なんだ〜そんなことか〜


と一瞬安心したのも束の間……


奈央「って、えぇ!?何泊ですか!?私は何日〇〇先輩に会えないんですか!?」


○○「あー、うるさい。」


奈央「答えてくださいよー!じゃあなんで私に言ったんですかー!」


○○「前もって言わないとお前、まじで何かやらかしそうだから。修学旅行は三泊四日。」


修学旅行、は……?


その言葉に疑問を覚えて少し考え込むと……


奈央「ま、待って、ください……。〇〇先輩、来週の金曜日って学校ありますよね?」


○○「ない。創立記念日。」


奈央「そ、そんなー!無理です!一週間も会えないなんて、いや違う、九日も会えないなんて殺す気ですか!?」


○○「うるさい、駅だから静かにしろ。」


いや、そんなの無理に決まってる


なんで創立記念日がこんなタイミングよくあるの!?


奈央「無理です、〇〇先輩休んでください。」


○○「休む価値がない。」


むむ……〇〇先輩は私をいじめようとしてるのですか!?


そう思って、〇〇先輩をじっと見つめればまだ何か言いたげで。


奈央「なんですか、まだ何か私をいじめたいんですか!?」


○○「はぁ?んなわけないだろ。」


奈央「じゃあはっきり言ってください!」


〇〇先輩のバカ。


私もう死にそうだよー。


○○「あーもう!お前そんな暗くなんなよ!」


奈央「……はい?」


なぜか突然キレだした〇〇先輩。


○○「……土産。」


奈央「えっ?」


○○「土産、何が欲しいか言え。」


み、やげ……みやげ、土産、お土産!?


奈央「えっ、かっ、買ってきてくれるんですか!?」


どうしよう!


嬉しすぎて悲しさ全部吹き飛んじゃった!


単純な私だけどそんなの気にしない


○○「だから聞いてんだろ。」


奈央「えっと、じゃあわがまま言っていいですか?」


○○「物による。」


本当は〇〇先輩が欲しいって言いたいけど、無理なのはわかってるから真面目に答えた。


奈央「ぬ、ぬいぐるみが欲しいです!あっ、できれば〇〇先輩の匂い付きで…」


○○「やっぱ買わねぇ。」


奈央「う、嘘です嘘!〇〇先輩が買ってくれたものならなんでもいいです!」


そう、本当になんでもいい。


〇〇先輩が触れたものを私はもらえるんだ。


たとえ食べ物だとしても一生大事にする。


○○「……ん。」


奈央「あ、ありがとうございます!」


やばい、本当にかっこよすぎて今すぐ倒れそう


でも……でもやっぱり。


○○「なんだよ。」


じっと〇〇先輩を見つめる。


奈央「やっぱり無理です!」


○○「は?」


奈央「九日も〇〇先輩に会えないの辛くて死にそうなんです!」


〇〇先輩の連絡先も知らないから連絡も取れないっていうのに。


連絡先聞いたら教えてくれるのかな?


なんとなく教えてくれなさそうな気がして今も聞けていない…


奈央「〇〇先輩、修学旅行終わってからでいいんで一日だけ私と会ってくれませんか?」


もちろん断られる覚悟で聞いてみた。


○○「……ん。」


奈央「……え?」


今『ん』って言ったよね。


それはどっちの意味!?


スルー?それとも返事ですか!?


奈央「い、いいってことですか!?」


○○「ああ。別にいい。」


う、嘘!?


これは夢?夢ですか!?


奈央「う、嘘はダメですよ!?一度言った言葉には責任持ってくださいね!?」


○○「だからいいって言ってるだろ。」


な、なんということでしょう!


これはデート、ということでいいですよね!?


奈央「デートだぁ!〇〇先輩とデートです!私のために、ありがとうございます…!」


嬉しくて頬が緩んでしまう。


○○「……。」


そんな私を見て、〇〇先輩は顔をそらしてしまった。


奈央「〇〇先輩?どうして顔そらすんですか?」


○○「うるさい。」


〇〇先輩、顔をそらして隠してるつもりでも耳が赤いですよ?


照れてるんですね!


私の笑顔を見てかな?


それともデートという響きが照れくさいのかな?


どっちもだと嬉しいなぁ。


じーっと見てたらなんだか愛おしくて可愛くなっちゃって、つい意地悪したくなる。


奈央「〇〇先輩ー?」


顔をそらすから、つい〇〇先輩の顔が見たくて覗き込んだ。


○○「ばっ……見んな!」


いつもクールな〇〇先輩が取り乱している。


可愛い、たまらなく可愛い。


ギャップだ。


奈央「〇〇先輩、もしかして照れてますか?」


○○「照れてない。調子乗んな。」


その時ちょうど電車が来てしまい、歩きだしてしまった。


○○「まじで調子狂う。」


ぼそっと〇〇先輩がつぶやきながら電車に乗ったのを、私は聞き逃さなかった。


電車が出発して落ち着いてから、私は聞いてみた。


奈央「〇〇先輩、どうして調子狂うんですか?」


さあ、なんと答えるのでしょうか。


お前が好きすぎて、とかって言われたい!


絶対無理だけど笑。


○○「なんでって、こっちが聞きたい。お前といると自分の心臓うるさいんだけど。」


奈央「……っ!?」


予想外の言葉に、私の顔があつくなった。


○○「なんで顔赤いんだよ。」


奈央「〇、〇〇先輩のせいです……!なんでそんなに鈍感なんですか!」


自分の心臓がうるさいって、ドキドキしてるってことですよね?


私といると!


なにそれ、可愛い。


こんなクールなのにドキドキして照れるとか、〇〇先輩は私を殺す気ですか!?


○○「鈍感なわけないだろ。」


奈央「鈍感です!それって私のこと好きってことですよ?」


言ってやった!


さあ、先輩はなんて答え……


○○「はぁ?嘘つくなよ。そんなわけないだろ。」


はい、そうきますよねー。


想定内です!


奈央「じゃあ私が他の男子と付き合っていいんですか?」


○○「は?そんなのダメだ。」


……や、やばい死ぬ。


自分から聞いておきながら、どうしよう私死ぬ。


い、今のは何!?


胸が、胸が苦しいです〇〇先輩。


ドキドキしてきゅんきゅんして、胸が締め付けられてます息苦しい。


○○「……どうした?」


今度は〇〇先輩が私の顔を覗き込んできた。


至近距離に〇〇先輩の顔があって、もう無理です。


さっきの仕返しですか!?


……いや、そんなわけないか。


だって心配そうな顔してるもん。


奈央「し、死にそうです。」


○○「はぁ?」


奈央「息苦しいです…!」


すると〇〇先輩の手が突然私の額に当てられた。


奈央「……っ!?こ、ここ電車です……!」


これは恋人同士に見られるんじゃないでしょうか!?


○○「だから?お前息苦しいんだろ?顔も熱いし熱なんじゃ……」


奈央「違います!だから、〇〇先輩のせいですって!」


急いで〇〇先輩から離れる。


離れるのは名残惜しいけど、自分の命が優先だ。


失神でもしたらそれこそ〇〇先輩の迷惑をかけてしまうから。


○○「俺のせいにされる意味がわかんねぇ。」


奈央「かっこよすぎる〇〇先輩が悪いんですよ!?これ以上かっこよくなってどうするんですかー!」


○○「それはお前が勝手に思ってることだろ?てか随分元気そうだな。心配して損した。」


奈央「し、心配……!?心配してくれたんですか!?〇〇先輩って意外と心配性なんですね!」


○○「もう二度とお前の心配はしないって今決めた。」


奈央「嘘です嘘!嬉しいんです、ありがとうございます!でも、命がですね……」


○○「命?ふざけてんのか?」


奈央「ち、違います!身がもたないんです!」


私の言葉に先輩は呆れ顔。


呆れ顔じゃなくて私は笑顔が見たい。


まあ呆れ顔でもかっこいいんですけどね!


奈央「で、でもデートしてくれるんですよね!?じゃあ連絡先、交換してください!」


呆れられても私は気にしない!


いつものことだから。


○○「………いいけど。」


ほら、やっぱり優しい!


思わぬ展開で連絡先をゲットできた!


〇〇先輩と登録して見つめれば、もうニヤニヤが止まらない。



○○「顔、きもい。」


奈央「これも〇〇先輩のせいですね!」


○○「意味わかんねぇ。」


奈央「そのままの意味です!かっこよすぎるからです!」


もう私幸せすぎてどうしよう。


今からデートの日が楽しみだ!


奈央「先輩、いつ会いましょうか?」


○○「いつでもいい。」


奈央「先輩金曜日は疲れてるでしょうから、土曜日?それでも七日間も我慢しなきゃいけないのか……あっ、えっと、土曜日でお願いします!」


○○「ん、わかった。一週間ぐらい我慢しろよ。」


奈央「むむっ、〇〇先輩は平気でも私は無理なんです!……あっ、そうだ!電話しましょう電話!修学旅行で夜寝る前に電話ください!」


○○「はぁ?なんで俺が…」


奈央「じゃあします!とってくださいね!?」


少し調子に乗りすぎたかな。


でもいいや!


せめて声だけでも聞きたい…!


○○「……もう勝手にしろ。」


奈央「ですよね……あはは………って、え?ちょ、今なんておっしゃいましたか!?」


○○「勝手にしろ。」


奈央「こ、こ、こ、肯定と受け取ってよろしいんでしょうか!?いや、もう肯定ですね!話題とかもう私が全部ふるんで任せてください!」


○○「……。」


あ、〇〇先輩が黙ってしまった。


けど無表情も素晴らしくかっこいいです。


奈央「もう〇〇先輩、本当に優しいんですね!そんなに私のこと好きなんですかー?」


○○「お前…」


奈央「ジョ、ジョークです!えっと、修学旅行どこ行くんですか?」


少し〇〇先輩がキレかけたので急遽話を変えた。


○○「沖縄。」


奈央「沖縄ですか!もう秋ですけどまだ暖かいですよね」


○○「多分な。」


奈央「水族館行きますか?」


○○「ああ。」


奈央「うわー!いいですね!沖縄って海もすごいですもんね!」


〇〇先輩と沖縄に行く二年生が羨ましすぎる!


奈央「ちなみにですけどグループって男子だけですか?」


○○「当たり前だろ。」


奈央「ですよねー」


でも〇〇先輩って女子が近づきにくいオーラ放ってるけど実際はどうなんだろう。


奈央「〇〇先輩って女嫌いなんですか?」


○○「……苦手。」


奈央「えっ!?そうだったんですか!?」


苦手なのか…。


なのに私は〇〇先輩に近づいたわけですね。


○○「お前みたいなやつが多くいると思ったらな。」


奈央「なっ……!そ、そんな!」


悲しいです、〇〇先輩。


奈央「私のことも苦手なんですね…。無理矢理付き合っていただきありがとうございます…。」


結構落ち込んでしまう私。


○○「別にお前苦手って言ってないけど。」


そんな私を見て、そっけないが〇〇先輩はそう言ってくれて一瞬で元気になった。


奈央「ど、どういうことですか」


○○「だから、お前みたいなやつはお前だけで十分だって言ってんの。」


私みたいなやつは私だけで十分……?


奈央「じゃあ私は苦手じゃないんですか?」


○○「慣れた。」


慣れていただけたなんて……!


奈央「こ、光栄です!」


○○「あっそ。」


なんか今日はいつも以上に幸せなことばっかだ!


〇〇先輩が修学旅行だから?


その前のひと時の幸せ?


でも修学旅行終わってからも幸せだもん!


〇〇先輩とデートだなんて。


いつも冷たくてクールな〇〇先輩だけど、優しさを兼ね合わせている。


なんだかんだいって、私のこと好きなんですよね?


気づいてください〇〇先輩。


私が〇〇先輩の中で特別な人だって。


そしたら付き合えるのになぁ、なんて思いながら今日も〇〇先輩と一緒に電車に揺られていた。




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