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甘える君に恋してる #2

うっすらと目を開けて、ゆっくりと顔を上げると、


俺を見つめるひかるがいた。


ひかる「もう、帰るよ?」


○○「あっ、あぁ。」


眠くて開かない目を擦って言った。


その前には、呆れ顔で並んで立つ、保乃と□□。


□□「ったく、俺たちが起こしても起きないのによー」


保乃「ほんまやで。ひかるが起こすときは文句言わんと起きんのにな~。」


そんなこと言われても


眠いもんは眠いんだから、起きたくねーじゃん。


…でも、ひかるは特別。


ひかるは小さい頃から仲がいい。


そして、その頃からずっとひかるのことが好きだ。


本人は全く気づいていないみたいだけど。


朝だって、


“○○はなんとも思ってないでしょ?”って。


なんとも思ってないはずねーじゃん。


そう思うと、気分が悪くなる。


ひかる「○○?」


○○「あ、ごめん。」


気がつくと、ひかるが俺の顔の前で手を振っていた。


俺を心配そうな目で見つめながら。


そんな目で見んなよ。


ひかる「行くよ?」


○○「うん。」


机に掛けてある鞄を持って、先を行く保乃と□□の後をついて行く。


ひかるは俺の少し後ろをついて来る。


ひょこひょことついて来るひかるはすごい可愛い。


ひかる「ん?何??」

○○「え?」


俺は無意識にひかるのことを見ていたらしい。


○○「別に。」


俺がそう言うと、不思議そうな顔をしてから、俺から視線を離した。


玄関に着き、靴を履き替える。


ひかる「もーっ!なんで、一番上なの!?」


隣に、子犬のように飛び跳ねるやつが1人。


保乃「また、ひかる跳ねてるっ!」


お腹を抱えて笑い出す、保乃。


ひかる「保乃、笑わないでよー!」


その隣でも□□がクスクス笑っている。


それに俺も。


だって、背が足りなくて、自分の靴箱に手が届かないんだよ?


まぁ、ひかるが好きで一番上の靴箱になった訳じゃなくて、出席番号的にそうなっちゃったんだけど…………


そうやって、頑張って手を伸ばして飛び跳ねるひかるは、面白いし、可愛いからいつもすぐには助けてあげない。


ひかる「んーもう、誰か助けてよっ。」


○○「はいよ。」


“助けて”そう言われたら、助けてあげる。


ひかるの言うことは、なぜか断れないんだよな、俺。


でも、すぐに助けないで困ってるひかるを見て笑う俺は、Sかもしれない。


□□「よし、じゃあ行こーぜ?」


全員が靴を履き替えたところで、□□が言った。


それから、みんなついて行く。


保乃「□□っ。」


□□「はいはい。」


外に出るなり、保乃は□□の腕に絡みに行く。


どれだけ、保乃は□□のことが好きなんだろうか。


まぁ、□□も喜んでるから良いんだけど。


この2人は、相当なバカップルだな。


そして、校門に来た頃。


□□「それじゃ、俺らこっちだから。」


ん、デートか?


俺らは、家もそれなりに近い。 


ちなみに、俺の家とひかるの家は隣。


だから、いつも一緒に帰ってんだけど。


今日は家とは反対の方向。


ひかる「2人ともまたデート?」


そう、また。


こいつら、結構デートに行くからな。


保乃「そうやで。なぁ?□□。」


□□「あぁ、そうゆうこと。」


保乃「あ、でも、ひかるも○○と、今日も“お家デート”でしょ?」


やけに、“お家デート”を強調して言ってくる保乃。


俺は別にそれでいいんだけど。


ひかる「で、で、デートなんかじゃっ!!」


保乃の言葉を聞いて、突然慌てだすひかる。


何だよ、そんな慌てなくても。


いつものことなんだからさ?


保乃「まあ、お2人さんも楽しんでなー?また明日ー。」


手を振って、腕を絡ませた2人は行ってしまった。


○○「じゃ、帰ろ?」


そう言って俺はひかるに手を伸ばす。


ひかる「う、うん。」


顔を真っ赤に染めて下を向くひかる。


○○「可愛いっ。」


ひかる「え?」


○○「いや……。」


つい言葉に出てしまった。


手を繋ぐ。


だからと言って、付き合っている訳じゃない。


これは小さい頃からの習慣。


2人で歩くときはいつも手をつなぐ。


だから、俺らにとっては、そんな特別なことじゃない。


ただ、俺にとってはひかるに触れられることは幸せだけど。


こうやって、いちいち可愛い反応をしてくれるから。


ひかる「着いたよ、○○。」


いつの間にか着いたらしいひかるの家。


まぁ、隣が俺ん家だから、家に帰ってきたも同然だけどな。


ひかる「入って?」


ドアを開けて、ひかるは俺を中へ通す。


これが、保乃と□□が言っていた“お家デート”の正体。


○○「お邪魔します。」


靴を脱いで、見慣れたひかるの家の中へと入る。


幼なじみってこともあって、小さい頃から来てるから家の中はわかってるつもり。


そして、俺の親とひかるの親は俺らが生まれる前から仲が良くて……


ひかるの親は2人とも働きに出てるから、帰ってきても遅くまでひかる1人。


それで、俺に見てくれるよう頼んできた。


だから、毎日学校が終わるとひかるの家に通っている。


ひかる「そこ、座ってて?」


○○「うん。」


ひかるは何か飲み物を取りに台所へ行った。


やっぱりひかるの家は落ち着く。


まるで、自分の家にいるみたいに。


俺はリビングにあるフカフカのソファーに腰をかけた。


ひかる「おまたせ?○○はココアでいいんだもんね?」


○○「うん、ありがとっ。」


ひかるの手からココアの入ったカップを受け取り、一口飲んだ。


○○「美味しい。」


ココアはやっぱり上手い。


何よりも、ひかるが作ってくれたものは1番。


ひかる「本当、○○は甘い物好きだよね?子供みたい。」


そう言って、クスッと笑う。


俺は甘いものが好き。


だけど、


○○「子供じゃねーよ。オレンジジュースを飲んでるひかるの方がお子ちゃま。」


ひかる「私はお子ちゃまなんかじゃないもん。」


俺がそう言うと、すぐ拗ねてしまう。


お子ちゃまじゃねーか。


○○「おいで?」


カップを近くのテーブルに置いて、ひかるの手を引く。


ひかる「ちょっと!」


そのまま引っ張って、俺の隣に座らせる。


間も開けないで、ぴったりくっつけて。


そうすることで見る見るうちに赤くなるひかるの頬。


本当、可愛い。


そう思いながら、ひかるのサラサラな髪に触れる。


俺がこうやってひかるに甘えても、ひかるは何も言わずに許してくれる。


これが日課だからか?


ひかる「あ、今日お母さんもお父さんも遅いんだけど…………夕飯食べてかない?」


今日、遅いんだ。


まぁ、ちょくちょくこんな日はあるんだけど。


○○「食べてく。」


その度に俺は、ここで夕飯を食べていく。


ひかる「じゃあ、ちょっと待っててね?」


そう言って俺の元から去っていく。


準備しないといけないのはわかるけど……


離れては欲しくないんだけどな。


しばらくすると、キッチンの方からクツクツと音が聞こえてきて、美味しそうな匂いが漂ってくる。


この匂いは…………


カレーかな?


ひかる「○○、出来たよ?」


俺の前に、美味しそうに盛られたカレーが置かれた。


○○「美味しそう…………いただきます。」


ひかる「どうぞ?今日は…………お母さんが作っていってくれたんだ。」


お母さんねー。


見た目はひかるのお母さんのと一緒だけど…………


一口口に入れてから確信する。


○○「美味しいよ、これ。」


ひかる「よ、良かったっ……」

ひかるは安心したように、笑った。


○○「でも、これお母さんじゃなくて、ひかるが作ったんでしょ?」


ひかる「えっ…………」


ひかるは一瞬にして固まった。


いや……


○○「前にも食べたことあるんだから、ひかるの味くらいわかる。」


いつだったか、作ってくれたんだよね。


ひかるの作った料理は本当に上手い。


言っちゃ悪いけど、母さんの料理よりもひかるの料理の方が好きだ。


ひかる「そっか…………」


○○「ねぇ、ひかちゃん、あーんして?」


ひかる「えっ?」


驚いた顔をするひかる。


良いじゃん?たまにはさ?


○○「してくれないの?俺を騙そうとしたのに…………」


ひかる「わ、わかったよっ………………あ、あーん///」


照れくさそうに、俺に食べさせてくれる。


可愛すぎんだろ。


○○「ん、ありがとっ。」


やってくれたご褒美に頭をポンと撫でる。


それだけで顔を赤く染めるひかる。


○○「はい、口開けて?」


ひかる「ん、えっ…………んっ」


お返しにひかるにもカレーを食べさせる。


俺らバカップル見てーだな。


まだ付き合ってもいねーのに。




投稿45作目です
るんちゃんをヒロインにしたのは下駄箱でのシーンを書きたくてでした。
ぜひ感想などお待ちしてます。

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たっつー
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