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甘える君に恋してる #19

「「どうきょーっ!?」」


教室に響きわたる、保乃と□□の声。


ひかる「ちょっとっ!!」


これは、聞かれたら困るのっ。


もちろん、こんなに大声で言われたら、クラスメイトの耳には入る。


ただ、保乃と□□が大声で話すことは毎日のことだから、気にされてないのが唯一の救い。


保乃「○○と同居って……ほんまに?」


声の音量を落として、疑いながら聞いてくる。


ひかる「……うん」


こんなはずじゃなかったのに……


なんでこんなことになってしまったのか……


それは、昨日のこと。




***




いつも通り、学校で○○を起こしていつもの道を帰る。


私が、○○の家に泊まることになったあの日から私と○○はやっと付き合い始めた。


だけど、特に何も変わらなくて……


変わったことといえば、いつものように抱きついて甘えてくる○○に、前以上にドキドキするようになったこと。


他は何も変わらない。


でも、そんな日々が幸せなんだ。


変わらない日々だったのに……


ひかる「ただいまー」


ひかる母「おかえりなさい、ひかる」


ひかる「あれ、お母さん帰ってたの?」


いつもは仕事で居ない筈なのに。


ひかる父「お、帰ったか」


え、お父さんまで?


2人とも、仕事じゃないの??


ひかる父「まぁ、座りなさい」


ひかる「う、うん……」


ぼーっとしていると、お父さんに言われて、目の前にあるソファに座る。


なんか真面目そうな話……?


ひかる父「明日から、北海道へ行くことになったんだ」


へっ……?


北海道??


ここからだとだいぶ距離がある。


……ってことは引越し……?


……嫌だよっ


ここから離れるなんて嫌。


ひかる「私……行きたくないっ!しかも明日からなんて……。」


いくらなんでも早すぎる……


せっかく○○とも付き合えたのに……


保乃とも□□とも、離れるなんて嫌だよっ。


ひかる母「ふふっ」


ひかる「……へっ?」


泣きそうになっている、いや、もう頬に涙が伝っている私を見て笑い出すお母さんとお父さん。 


なんで、笑うのよっ。


みんなと離れることになるなんて……


笑い事じゃないよ。


ひかる母「安心して、ひかる」


私に優しく微笑んで言うお母さん。


安心なんて……


無理だよ……


ひかる母「ひかるはここに残っていいのよ?」


……?


ここに残る?


ってことは……


ひかる「私……一人暮らし?」


だよね?


ひかる母「そんなはずないじゃなーい笑」


へっ?


一人暮らし……じゃない?


じゃあ、なに?


やけにお母さんは楽しそうで、お父さんは複雑そうな顔をしていた。


ん?


私の頭の中は、?だらけ。


ひかる父「ひかる、お前には○○くんとここで一緒に暮らしてもらう」


納得のいってなさそうなお父さんからは、予想もしないとんでもない言葉が出た。


ひかる「○、○○と一緒にっ!?」


……そ、それって……


○○と“同居”するってこと?


あ、ありえないよっ!!


ひかる母「そうよ」


いやいや……


無理だってっ!


ひかる父「俺は反対なんだが……」


お父さん、複雑そうだったもんね。


だから、止めてくれると思ったけど……


ひかる父「ひかるを一人にする方が心配だから、○○くんにいてもらう」


結局……


私が止めようとする暇もなく、○○との同居が決まってしまった。




***




「おはよ」


後ろから聞こえる大好きな声に、体がぴくっと反応する。


ひかる「おはよう、○○」


今日から私の親が北海道に行く。


北海道には3ヶ月いるらしい。


イコール、○○と3ヶ月同居するってこと。


想像するだけで、ドキドキする。


保乃「あ、ダーリンの登場やな?」


ひかる「だ、ダーリンっ!?」


そ、そんなんじゃないからっ!


○○「ひかちゃん」


カバンを置くなり、いつものように抱きついてくる○○。


ただでさえ、まだ気持ちが落ち着いてないのに。


ひかる「な、なにっ」


緊張からか、言葉が上手く出ない。


だって、これから今私に手を回してる○○と1日中一緒にいることになるんだもん。


○○「今日からよろしくね?」


私の肩に顔を乗せて言うものだから、耳の近くで○○の声がする。


それだけで、私の胸はきゅんと反応してしまう。


ひかる「…うん」


私の親が……というかお母さんが頼んだことだから……


まぁ、勝手にだけど……


こっちがお願いしますっていうとこなのかな。


○○と一緒にいられるのはすっごい嬉しい。


だけど……


こうして教室で隣にいるだけでもドキドキと音を立てる私の心臓が3ヶ月も持ちそうにないよっ。


そして、今日も授業が始まって……


隣の○○は私に寄りかかって寝てるし、目の前の2人もイチャイチャしている。


でも、私は上の空。


頭から、昨日言われたことが離れなくて……


授業は全く聞けなかった。


保乃「……る、ひかる?」


ひかる「へっ?」


保乃「へっ?やないって。○○もひかるも……もう放課後だよ?」


いつの間にそんな時間が経ってたんだろ……


ひかる「ごめんっ」


急いで帰る支度をする。


気持ちよさそうに眠る○○は起こすのが可哀想だから、一応最後に起こす。


ひかる「○○ー?」


ゆさゆさと体を揺すると、ゆっくり目をあけて起きる。


最近はすぐ起きてくれるから楽。


一番はちゃんと寝ないで起きてくれてるのが理想だけど。


□□「ひかる、○○、いくぞー」


ひかる「はーい」


□□に呼ばれて、カバンを持ってあとをついていく。


学校を出て、家に近づくにつれて速くなる鼓動。


ちらっと隣を歩く○○を見ても……


○○は何も気にしていないみたいで、いつも通り。


こんなに緊張してるのは私だけ??


保乃「もー、ひかるったら……ぼーっとしすぎ!」


ひかる「……へっ?」


しまいには、ため息をつかれた。


そんなこと言われてもね?


もう、わたしの頭の中は○○のことでいっぱいなの。


□□「じゃあな、2人とも」


私がぼっとしていたうちに、いつもの分かれ道に来ていたようだった。


保乃「楽しんでなー?」


ひかる「あ、保乃っ」


保乃は何を期待してるのっ!


保乃&□□「「ばいばーい」」


仲良く声を合わせて2人は帰っていった。


どうせまた、どっちかの家に行ってラブラブするのは間違いないと思うけれど。


ひかる「いこっ、○○」


2人が行くのを見送ってから、私たちも歩き始める。


別に喧嘩したわけじゃないけれど、気まずい


……って感じてるのは私だけだよね。


○○「なに?」


無意識に○○を見ていたみたいで、目線があってしまった。


ひかる「う、ううん…なんでもない」


○○「そっ」


ひかる「うん……っ?」


素っ気なく返されたかと思えば、繋がれる手。


○○の手から、○○の熱が伝わってくる。


○○「いや?」


普段、いつでも抱きついてくるくせに…………


手だって何回も繋いでたのに。


私を見ないようにしている○○を見ると、ほんのり耳が赤く染まっていた。


……可愛い


ひかる「いいよっ……嬉しいから」


○○「ひかる、顔真っ赤」


○○に顔を覗かれて、恥ずかしくて俯いてしまう。


ひかる「見ないでっ!……○○だって赤くなってたくせに」


○○「……なってねーし」


ちらっと横から見た○○の顔はまだちょっぴり赤くて……


隠しきれてないんだから。


ひかる「ふふっ」


○○「なんだよ」


思わず笑いがこぼれてしまう。


ひかる「ううん、なんでもないよ?」


ただでさえ短い道のりなのに、さっきまでとは違って、あっという間に着いてしまった。


○○「じゃあ、あとで荷物持っていくから」


ひかる「うん、待ってるね?」


そう言って、私たちはわかれて、それぞれ家に入る。


ひかる「ただいま」


返事が帰ってこないのはいつものことだけど……


本当に誰もいないから、なんとなく寂しい。


とりあえず、部屋に荷物を置いて、制服からいつもの部屋着に着替えた。


○○が来るから、部屋着って言ってもちょっと可愛いデザインのにしてみた。


さてと……


少し早いけど、夜ご飯作ろっかな?


キュッと後ろでリボンを結んで、エプロンを付ける。



これはお母さんからのプレゼント。


結構お気に入り。


ひかる「……よし」


今日の夜ご飯は、オムライスにしよう。


自慢じゃないけど、私の作るオムライスはふわふわとろとろ。


○○が大のオムライス好きで……


しかも、ふわふわとろとろ卵のオムライスがいいみたい。


だから、すっごい練習したんだ、ふわふわとろとろオムライス。


トントントンとリズムよく具材をきざんでいく。


きざみ終わったら、フライパンで具材たちを炒める。


ひかる「ふっふふーん」


誰もいない家で、鼻歌を歌いながら料理する。


○○「なぁーに歌ってんの、ひかちゃん」


ひかる「きゃっ……」


危うくフライパン落とすところだったよっ!?


だ、誰もいない筈なのに……っ。


玄関だって、ちゃんと鍵閉めてたはずだよね??


ひかる「○、○○……どこからっ!」


○○「どこからって玄関から」


いやいやいや……


確かに、玄関の鍵は閉めたよ??


針金で開けたとか??


○○……実はスパイ??


○○「何変なこと考えてるの?具材焦げちゃうよ?」


ひかる「……わっ」


手、動かすの忘れてたっ……


○○「俺、ひかちゃんの家の鍵持ってるから」


ひかる「……え?」


○○「ほら、手動かさなきゃ」


あっ……


また、焦がしちゃう。


ひかる「なんで、○○が私の家の鍵、持ってるの?」


○○「ひかちゃんのお母さんから、預けられてんの。ひかちゃんの面倒見てって」


お母さん…………


そこまでしなくても…………


昨日渡されたんじゃなくて、だいぶ前から鍵を預けられていたらしい。


ひかる「ねぇ、○○……料理しにくいんだけど……」


○○「いいじゃん、料理出来てるんだから」


さっきからそうなの。


正確に言うと、突然声をかけられてから……


ずっと○○は私の腰に手を回して抱きついてる。


ぎゅっと抱きつかれてて、身動きが取れないから本当に動きにくい。


もーっ。


○○になんて言っても離してくれないと思うから……


仕方なくそのままオムライスを作る。


真っ白のお皿にレタスとトマトを一緒に盛り付けて……


ひかる「……完成っ」


○○「ひかちゃん、お腹すいたー」


ひかる「はいはい」


本当、子供みたい。


あと、人懐っこい猫ちゃん。


リビングにあるテーブルにオムライスの乗った皿を運んで、手を合わせる。


ひかる「いただきまーす」



私はスプーンを持って食べようとするけれど、○○は食べようとしない。


オムライス好きだよね??


今日も上手く作れたはずだし……


それとも、不味そう?


……どうしよう。


○○「……べさせて?」


ひかる「へっ?」


○○「だから、俺に食べさせて?オムライス」


え……あの?


えーと……あーんってことですか?


カレー以来だよ?


○○「ほら、お腹すいたんだから、早く」


ひかる「……わかった///」


甘えん坊の○○に負けて、仕方なくあーんをする。


○○「ん、美味しい」


ひかる「よかった」


美味しい、そう言ってもらえるだけで嬉しいよ。


にこっと私に微笑む○○に、顔を赤く染めながら、私も微笑み返し、夕食を食べたのだった。




投稿63作目です。
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