改めて向き合うアニソンとしての「ムズイ」
先日の「ANIPLEX 20th Anniversary Event -THANX-」でアニプレックス20周年を記念して発売された「Aniplex 20th Anniversary
Mix Collection」に、20年の軌跡を彩る名だたるアニソンの中の1曲としてTVアニメ「22/7」のオープニングテーマが収録されている。
アニメ放送から4年が経っているが、このタイミングで改めてアニソンとして「ムズイ」が注目されたことが非常に嬉しい。
そこで改めてアニソンとしての「ムズイ」の魅力について自分なりに考えてみようと思う。
今回はアニソンとして捉えるので、オープニングサイズの90秒での感想を並べていこう。
まずこの曲はセリフから始まる。22/7はデジタル声優アイドルなので、やはり曲中にセリフがあるというのは注目点の一つだろう。
セリフから始まるのだが、正確にはイントロが流れている中でセリフが入るのでセリフから曲が始まるわけではない。また、サビ終わりのラストにもセリフが入り、そのセリフで曲が終わる。
セリフから始まるアニソンはそれなりにあるかもしれないが、イントロに合わせたセリフで始まり、セリフで曲が終わるという点は珍しい部類かもしれない。
次にこの「ムズイ」のオープニングテーマとしての印象だが、アイドルアニメとしては圧倒的に暗い。
一般的にアイドルアニメのオープニングテーマとして浮かぶ曲は、アイドルとしてのキラキラした輝きや夢、これから始まるアイドルとしての楽しい日常に焦点を当てたものが多く、物語を楽しみにしている視聴者のワクワク感ともリンクする明るく前向きな曲が多いはずだ。
それらの曲と比べると圧倒的に暗く、そして前向きでもない。
そもそも22/7というグループを知っていれば、この暗い表現こそ22/7の魅力であることが充分わかっているので、このオープニングテーマこそ22/7の真骨頂であるとさえ思えるが、知らない場合はどうか。
22/7を知らない状態でこの曲を聞いても、もちろん暗いという印象が大きくなるのは間違いないと思われるが、アニメ「22/7」のオープニングテーマという見方をすればアニメの内容には非常に寄り添っていると思うので、アニソンとしては素晴らしいと思う。(なにせアニメ自体が明るいアイドル像を描いた物語ではないので。)
ではなぜそもそもアニメはそんな暗い物語を描いているのかと話し出すと長くなるのだが、改めて1話を見返すと滝川みうが「一番やりたくないことをしに来ました」と言ってアイドルとして生きる決意をした瞬間に「壁」が出す「22/7へようこそ」が全てを物語っているように思う。
決してアイドルになりたい訳じゃなかったメンバーが集められて22/7というアイドルグループが始まったということが重要な点だ。
要するにアイドルやりたい!とキラキラした気持ちから始まるアイドルの物語ではないのだ。
半ば強制的に始めさせられたアイドル生活の中ではキラキラした面よりもアイドルであることに対する苦悩や葛藤など暗い面の方がむしろ目立って見える、というような見方をしたのがアニメ「22/7」の描いている部分なのではないだろうか。逆に言えばそんな苦悩や葛藤の中にもアイドルとして輝くキラキラした瞬間はあるわけで、暗い中に一瞬見えるその光の儚さや尊さにとてつもない魅力を感じた人にはとてもハマる作品なのではないかと思う。
歌詞についてはここで特段言及しなくても、メッセージ性が強いので印象に残る部分が多くあるとは思うが、よく考えるとまだまだ人生これからの若いアイドルたちが人生の難しさについて歌っているというおかしさがある。だが、そんな疑問を抱かせないほど説得力を持って聞こえるのもアイドルという人生がいかに深く苦難に満ちているのかを感じる部分かもしれない。
明るい、激しい、熱い、盛り上がる等がアニメのオープニングとしては重視されがちな要素ではあるが、やはりアニメの内容に寄り添って意識された曲調や歌詞がアニソンとして最も重要な部分であると思う。
そういう意味では「ムズイ」はアニソンとしてもよく機能しているし、22/7というアイドルグループを表現する1曲としても成り立っていると思う。
盛り上がる主題歌が多いアニソンの中での「ムズイ」
明るいアイドルソングが多い中での「ムズイ」
どちらの流れでも、この他と毛色が違う曲は何だろうと気になってくれたら、きっと22/7にハマる1歩目だと思うので、この他と違う世界観にこそ魅力を感じたら、アニメ、楽曲、そしてグループについて興味を持ってもらえたらすごく嬉しい。
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