一年間を振り返って
南4局一本場。30800点持ちの親番。前局の2000オールにより、僕は2着目に浮上していた。
2022年東北最強位決定戦。予選二回戦を終えた僕のポイントは+40.2、その時点での通過ボーダーは20ポイントを超えたくらいだった。連帯すれば通過確定、3着なら素点とボーダー次第でラスはアウト、といったところだ。
3着目の木戸さん(前年度東東京最強位、本年度中部最強位)は26000点持ち、伏せても僕の2着が確定する点棒状況だった。木戸さんは予選通過のためにはトップが必要で、必ずトップ目を捲る手作り(この時は倍満ツモ条件だった)をしてくるという信頼感があった。この条件の厳しさから、僕の2着はかなり固いと思っていた。
9順目、門前で發と9筒のシャンポンテンパイを入れる。木戸さんから条件を満たすリーチがかかってきた際には緊急回避もできる形だ。何より最終盤は崩して伏せても2着。場の状況を見ると国士無双の可能性も否定されている。理想的な展開だった。
「ツモ」
予想もしてないところから発声が入る。イーソーブラック、前年度北関東最強位であり、昨年度アマ最強戦で4万点近く離れていた僕を捲った男である。
発声が聞こえてくるなり目眩がした。ブラックさんもまた予選突破のためにはトップが必要で、この時点で断ラス、役満条件だった。そして彼がこの場面で条件を満たさない和了をするはずがなかった。彼にもまた、そういう信頼感があった。
「8000-16000は8100-16100」
ゆっくりと開けられた手牌には暗刻が3つあり、今ツモった6萬で4つ目の暗刻が完成したところだった。この和了によりブラックさんは3着順アップで一気にトップへ浮上、ボーダーギリギリで予選通過を果たした。僕は親被りにより4800あった木戸さんとの差が捲られ4着に沈んだ。僕の今年の最強戦が終わった瞬間だった―――。
今回、このnoteを書こうと思った理由は2つあります。一つ目は今回の東北最強位決定戦を迎えるに当たり、応援してくださった沢山の方々に、結果をきちんとお伝えした方がいいと思ったからです。今できる最善は尽くしたつもりですが、予選敗退となってしまいました。期待に応えられず申し訳ありません。
もう一つの理由は、昨年9月に東北最強位を取ってからのこの一年間、応援の声をかけてくださった方々、麻雀を打ってくださった方々、その他最強戦関係者の皆様等々、お世話になった皆様に感謝の気持ちをお伝えしたかったからです。
思えばこの一年間は僕の麻雀人生の中で一番楽しく、かけがえのないものでした。昨年9月に登米市のエンジェルコートで開かれた東北最強位決定戦。運良く決勝に進み、山越さんとの和了競争となったオーラス。山越さんのリーチに回りながら不恰好に和了り切った7m単騎。震える声で申告した「1300は1900です」は今でも覚えています。
東北最強位として迎えたアマチュア最強位決定戦。たくさんの方々に「すごかった」と言っていただいた東4局の対々和。正直、対々和に行くと決めていた訳ではなく、下家から切られた9索に気づいたら声をかけていた、という感覚でした。「これ対々和行くのねー僕・・・」と自分自身思いながら、発進しだしたら一本道なので發と8萬も続けざまにポン。序盤の3副露で「これで生牌の役牌は切りづらいだろ」と思っていたら東・中と連続で切られ、挙句の果てに親リーまでかかってきて、内心「終わった・・・」と思っていました。運よく和了できましたが、本当に運だけです。4筒ポンしなかったのは4筒切って降りようと思っていたからで、あの瞬間白が重ならなかったら対面の平和・一通・ドラ1に放銃していたと思います。重ね重ね本当に運だけです。
結果は皆様ご存じのとおり、ブラックさんに4万点差を捲られ決勝進出はできませんでした。悔しかったのはもちろんそうですが、それよりも充実感・満足感の方が大きかったです。初めての大舞台で最後までトップ争いができたこと、東4局を含め放送対局として間違いなく楽しい麻雀をお届けできたこと、そのときできる最高の麻雀を打てたこと。今でも鮮明に覚えている、忘れられない一日です。
正直、あの日の対局の内容と結果は、当時の僕の実力以上のものが出てしまっていたと思っています。1年間、「東北最強位」として仙台を中心に各種大会等に出場させていただきましたが、僕は最強でもなんでもない。我慢は利かないし、ポカも多いし、しょうもない放銃も多すぎる。この前も最高位戦プロアマでオーラスで1着から3着まで落ちるやらかしを披露し、対局中の卓があるにも関わらず発狂していました。参加者の皆様、坂本支部長はじめ関係者の皆様にはご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。この場を借りてお詫び申し上げます。
こんな弱い自分ですが、最強戦に出てからというもの本当に大勢の方に声をかけていただきました。「Abema見ました!とても面白かったです」「これからも応援してます!」こういったお声をいただく度に、もっと強くなりたいという気持ちが一層強くなりました。一介のアマチュア雀士には身に余る応援ですが、皆様からのお言葉が大変励みになっています。
また、こうしたお声がけだけでなく、様々な方から麻雀に誘われる機会も増えました。行きつけの雀荘「杜の都」では、同卓希望を出してくれるお客様も現れました(注:僕はちょくちょく杜の都の宣伝をさせていただいていますが、スタッフでもなんでもありません。ただの客です。)。加えて、昨年度同じく地方最強位を獲得した木戸さん、ブラックさん、めぐみさんや、これまで地方最強位等を獲得された方々、仙台出身の中村プロ(RMU)からは、ネット麻雀での勉強会に誘っていただく機会もできました。特に木戸さんたちの勉強会は、今でも定期的に参加させていただいており、間違いなく自分の雀力向上につながっていると実感しています。
また打ちたい、と思ってもらえる打ち手になりたい―――。一年前の誕生日にこんなツイートをしたことを覚えています。麻雀を打つとき、常日頃から僕が意識していることです。たくさんの方から麻雀に誘っていただくたびに、なりたい自分に近づけていると実感し、大変嬉しく思っています。
「麻雀はメンツを4つそろえるゲーム。だから麻雀を打つ4人のことを「メンツ」という。ただし実際の麻雀と同じように、4人のメンツを揃えることは意外と難しい。だから宥紀も麻雀を一緒に打ってくれる友達を大切にしなさい。」僕に麻雀を教えてくれた父の言葉です。最強戦のおかげで、僕にはたくさんのメンツができました。完全にメンツオーバーです。6ブロックどころの騒ぎではありません。本当に、ありがとうございます。
冒頭、noteを書くに至った理由が2つあると言いましたが、書いている途中でもう一つの理由があることに気づきました。おそらく僕は、この楽しかった一年間を文章にすることで整理し、自分の中に一旦しまっておきたかったんだと思います。実力以上の結果となった「東北最強位」という過去の栄光にしがみつくことなく、自分が弱いということをきちんと自覚している状態で、新しい気持ちで麻雀を打ち始めるために。
本年を迎えるに当たり、僕は2つのことを目標に掲げました。1つ目は東北最強位を連覇し、昨年成し遂げられなかったアマチュア最強位になること。そしてもう一つはノーレート雀荘対抗戦で、杜の都代表として出場し、優勝すること。1つ目の目標は残念ながら叶いませんでした。その分、2つ目の目標達成に向け、一層勝ちたいという想いが強くなっています。昨年度優勝のオクタゴンをはじめ、他の雀荘も強敵ぞろいですが、優勝に向け、できる準備をしっかりしていきたいと思っています。
改めて、これまでの間、温かい応援コメントをくださった皆様、出場した大会の関係者の皆様、普段からお世話になっている杜の都の皆様、そして今まで一緒に麻雀を打ってくださった全ての皆様に、心からの感謝を申し上げます。皆様のおかげで、僕は今、楽しく麻雀を打てています。これからも、一緒に楽しく麻雀を打っていただけると大変嬉しいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。