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【新刊】『パラドックス思考』に込めた想いとは?

新刊『パラドックス思考:矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』の予約が開始されました!

おかげさまでたくさんのご予約をいただき、Amazonの「本の人気度ランキング」で1位をとることができました。ご予約いただいたみなさま本当にありがとうございます!もしまだ予約をされていない方は、ぜひ紙の本でご予約いただけますと幸いです。

この記事では、出版にあたり、以下の3つをご紹介したいと思います。

  1. どんな内容の書籍なのか?:ざっくり内容をご紹介!

  2. なぜこの書籍を書いたの?:この本に込めた2つの想い!

  3. どうやってこの本を書いたの?:安斎さんとの二人三脚!

1.どんな内容の書籍なのか?

"無理ゲー"課題を読み解き、心から納得いく解決策を生み出す

最初に、書籍のポイントを簡単に紹介します!

本書パラドックス思考では、ビジネスや人生における"無理ゲー"課題の特徴を読み解き、それらの問題に対して「心から納得いく解決策」を導き出そうとするものです。

  • トップダウンか、ボトムアップか?

  • 正社員か、フリーランスか?

  • 個々の働き方の尊重か、チームの一体感の醸成か?

両立困難で、二者択一と思われる課題に対して、私たちは日々頭を悩まされています。この問題を解くためには、筆者らは、自分自身の中にある「矛盾した欲求(=感情パラドックス)」と向き合うことに着目しました。

例えば「自由に働きたいので、転職・起業をしようかな…」と悩んでいる場合に、「よし、すぐに辞めよう!」と行動するのではなく、一度自分の感情とじっくり向き合う時間を確保します。

すると、実は「安定もしたい」「ある程度は管理をしておいてほしい」といった、「自由」とは一見矛盾する感情を発見することができるかもしれません。

「自由が欲しいのに、管理もされたい」なんて、なんと欲張りな!と思うかもしれませんが「人間はめんどくさいけど、愛らしい存在」です。

パラドックス思考は「自由が欲しいけど、管理もされたい」などの感情パラドックスを受容し、「自由と管理」という相反する感情を両立する方法を探そうとする思考法です。

この例は、働き方(キャリア)の例ですが、組織のマネジメント課題や、アイデア創出に関わる課題、さらには日常のささいな悩みまで、幅広く取り扱っています。「部下の育成をしたいけど、自分も成長したい」など、「あるある」と思える悩みとその対処法を見つけることができるのではないかと思います。

2.なぜこの書籍を書いたのか?

パラドックスに着目する契機となった"違和感"

次に、なぜ私がこの書籍を執筆したのかについて説明します。

私は普段「リーダーシップ教育」を専門として研究・実践をおこなっているので、「パラドックス」というキーワードを聞いて「どうして急に?」と思われる方も多いようです。しかし、この2つのキーワードは密接に関わっています。

色々な角度から、関わりについて紹介することはできるのですが、今回は、私が「パラドックスに着目するきっかけ」に焦点を当てて説明します。そのきっかけは、リーダーシップ教育を実践する中で感じた"ある違和感"からでした。

「自分らしさを生かした全員発揮のリーダーシップ」のはずが?

私がリーダーシップの話をする時には、必ずこの2つの話をします。

  • リーダーシップは「権限」によらず、誰でも発揮できる

  • リーダーシップは「自分らしさ」が重要である

これらをまとめて「自分らしさを生かした全員発揮のリーダーシップ」と呼んでいます。

この話をすると、受講生の方々は「なるほど」と思って聞いていただけるのですが、その後の様子を注意深くみてみると「おや?」と思う現象に気がつきました。具体的には以下の2つの現象です。

  • 権限はよくないもので、フラットであるべきと考えて行動してしまう(フラット至上主義)

  • 「自分らしさ」を過度に求めるあまりに、「本当の自分は何か?」と悩んだり、言行一致に縛られすぎてしまう(一貫性至上主義)

いずれも自分が伝えたいと思っていたことと少しズレてしまっています。「教え方が悪いのでは?」というツッコミはいったんおいておき、ここで感じた違和感が「パラドックス」に注目する契機になりました。2つの違和感について詳しく説明します。

違和感1:気がつくと「A or B ?」の問いに変換されてしまう


A or Bの問いではなく、Cを探す

元々伝えたかったことは「権限がある人も、ない人も、リーダーシップが発揮できる」ということなので、「権限そのものを否定・無視」するわけではありません

しかし、気がつくと「トップダウン or ボトムアップ」といった極端な「A or B ?」の議論になってしまっています。本当は「A and B」の新しい形を目指しているはずなのに、これはとてもまずい状況です。

考えてみると、リーダーシップ以外でも「A and B」として実践する事柄が、知らぬ間に「A or B」の議論になってしまうことがよくあります。

コロナ禍における「対面か、オンラインか」の議論もそうでしょう。「出社か、テレワークか」はいま現在も議論されている内容です。本来は「A or B」ではなく「組み合わせ」の議論のはずです。しかし、いつの間にか「どっち?」の議論になってしまいます。これではせっかく新しい考え方を取り入れても、建設的な議論ができません。

これらの経験から「新たな考え方」を取り入れて、人や組織がよりよい状態になるには、「二項対立を乗り越える思考法」が必要であると考えるようになりました。

一見矛盾するような主張を理解して、受け入れること。そして「どっちも大事!」というだけではなく、具体的にその両立を探るための考え方をより深める必要があると考えたというわけです。これが私がパラドックスに注目した1つ目のきっかけです。

違和感2:「一貫性」を求めすぎてしまうことの弊害

もう一つは「自分らしさ」についてです。自分らしさを求めるのはよいことなのですが、過度に一貫性を求めるあまりに「人前に出て話したい自分もいるし、陰からサポートしたい自分もいるし、どっちが本当の自分なのでしょうか」といった類の相談を受けることが増えてきました。

これらは「どちらも自分」だと思うのですが、過度に一貫性を求めすぎているようにも思います。

リーダーシップの発揮においては「言行一致」が大事ということがよく言われます。もちろん「言っていることと、やっていることが違うリーダー」にはついていきたくないというのは感覚的には理解できるものです。

一方、リーダーをめぐる環境や状況に目を向けてみると、一貫性を保ちにくい状況は日に日に増えているように感じます。

例えば、ビジネスのスピードアップに加え、コロナ禍である現在は、組織の状況は日々刻々と変化します。「これ!」と明確に言えればいいですが、このような状況では「昨日と今日で言っていることが違う」ということがよく起きるでしょう。

これに加え、近年はチームのメンバー個々人と向き合おうとする傾向が高まっていると思います。しかし、これも個々人に向き合おうと思えば思うほど「全体で一貫した対応」をすることは難しくなり、これもまた一貫性を継続することが難しくなります。

にもかかわらず、リーダーに過度な一貫性を求めようとすることは「リーダーに対する攻撃」にもつながりやすく、さらにはリーダー自身も「自分はこうあるべき」という思いに縛られて、がんじがらめになってしまうのではないでしょうか。

リーダーは、組織の矛盾をやりくりする非常に大事な存在です。特に、組織の中間で活躍するリーダー(ミドルマネージャー)は、組織のさまざまな矛盾を上手に吸収、調整する役割を担っています。こうした役割の人を助けられる知見を提供できなくては、益々「リーダー離れ(管理職になりたくない)」は進む一方です。

これらを踏まえ、そもそも人間は「矛盾」を抱える存在であり、そこが人間の愛らしさでもあるという前提に立った議論ができないかを考えるようになりました。人間が矛盾しているなら、組織も当然矛盾を抱えるというわけです。

書籍では「人間はめんどくさいけど、愛らしい存在」という言葉で表現しています。これがパラドックスに着目したもう一つの理由です。

「矛盾を受け止めて、両立を目指す考え方」を提案したい

これらの違和感をもとに、本書では以下の2つをコアメッセージに据えました。

  • 「A or B」ではなく「A and B」もしくは「C」を目指す

  • 人間や組織の矛盾や曖昧さを受容・活用する

本書の中では、さまざま理論や具体的な方法を紹介していますが、根底にはこうした想いが込められているのです。

3.どのようにこの書籍を書いたのか?

最後に、本書の執筆プロセスについてご紹介します。

テーマも決まって、これで執筆すれば「めでたし、めでたし」なのですが、書きはじめると、このテーマはいわゆる「ラスボス級」の難しさで、執筆作業そのものがまさに"無理ゲー"状態へと陥りました。これはガチでいままでで一番苦労した書籍といっても過言ではありません。

それもそのはず、本書は世の中の"無理ゲー"課題の攻略本を書こうとしているわけですから、簡単なわけがないのです。

しかし、このテーマでなんとか執筆できたのは安斎勇樹さんと共著で執筆をしたからです。安斎さんは、現在株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOでありながら、東京大学大学院 情報学環 特任助教もしています。

私と安斎さんは、大学院生の頃の友人なので、もう約15年の付き合いになります。舘野が2年先輩で、お隣同士の研究室で切磋琢磨していました。院生時代は、六本木のクラブでラーニングイベントを実施したりと、本当に色々な実践・研究をともにしてきました。

安斎さんとの約15年前の出会い(みんなめっちゃ若い笑)

特に研究テーマが同じというわけではないのに、15年も一緒に切磋琢磨してこれたのは、お互いが「研究と実践を本気で両立したい」という欲張りな欲求を共有していたからでしょう。

今回「一緒に本を書こう」といってはじまったプロジェクトが、気づけば「矛盾と創発」にたどり着いたのも、半ば必然的だったのかもと思います。

実は、これまで色々な仕事を一緒にしてきましたが、共著で本を出すのは今回が初めての経験です。「絶対良い本にしよう!」という強い想いで書籍と向き合ったことで、なんとかこのテーマで書籍を書ききることができたのだろうと思います。

本を書きあげたいま、あらためて「ひとりなら絶対に書ききれなかった」「書いている中で自分が大きく成長できた」と実感できています。自分は今年で30代がラストですが、最後にこのような経験ができたこと自体をすごくうれしく思っています。

執筆のプロセスでは、ライターの大矢幸世さんが伴走してくださり、これもまた本当にたくさん助けられました。このような機会をくださり、書籍執筆のさまざまな側面においてご支援いただいたダイヤモンド社の小川 敦行さんにも本当に頭があがりません。

まとめ

ということで、出版記念に3つの内容で記事を書いたのですが、想いが溢れすぎてしまい約5000字になってしまいました。

まだまだ語りきれない溢れ出る想いについては、来週のCULITBASEの出版記念イベントで語りたいと思います!2/13(月曜日)19:00-20:30です。たぶん、ここでも想いが溢れそうで、いまから楽しみです笑

今回の記事では書ききれませんでしたが、「パラドックス思考」の着想の背景には、私の学部ゼミ(立教大学経営学部 舘野ゼミ)での活動が大きく影響していることもあるので、今度は別のエントリーで、ゼミ生たちとの活動も紹介したいと思っています。学生がゼミのnoteで活動をコツコツ紹介してくれているので、よかったらぜひ覗いてみてください。

ということで、あらためて「パラドックス思考」多くの方々に読んでいただけたらうれしいです!ぜひご予約よろしくお願いいたします!

【追記 2/10】
書籍の序文が公開されました!よろしければぜひご覧くださいませ。


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