Kenny Kirkland
今回はピアニストKenny Kirkland唯一のリーダー作91年リリース「Kenny Kirkland」を取り上げてみましょう。
Released: October 1, 1991
Studio: BMG Studios A & B, New York City
Producer: Delfeayo Marsalis, Kenny Kirkland
Executive Album Producer: Ricky Schultz
Label: GRP Records
p, key)Kenny Kirkland ts, ss)Branford Marsalis ds)Jeff “Tain” Watts(on 1~4, 6, 7, 9) ds)Steve Berrios(on 8, 10) perc)Don Alias(on 5, 8, 11) perc)Jerry Gonzales(on 8, 10) as)Roderick Ward b)Charnett Moffett(on 1, 4, 7) b)Andy Gonzalez(on 8, 10) b)Christian McBride(on 6) b) Robert Hurst(on 9)
1)Mr. J. C. 2)Midnight Silence 3)El Rey 4)Steepian Faith 5)Celia 6)Chance 7)When Will the Blues Leave 8)Ana Maria 9)Revalations 10)Criss Cross 11)Blasphemy
Kenny Kirklandの幅広く豊かな音楽性、魅力が詰まった素晴らしい作品です。 55年9月New York City, Brooklynで生まれた彼は6歳でピアノを始め、Manhattan School of Musicでクラシック・ピアノと音楽理論を学びました。その後僅か22歳でPoland出身の名バイオリニストMichael Urbaniakの欧州ツアーを経験し、東欧を代表するベーシストMiroslav VitousのECMアルバム79年「First Meeting」80年「Miroslav Vitous Group」にも参加します。この時既にソロ、バッキングで自己のスタイルを発揮しています。
美しくクリアーなピアノタッチ、Herbie Hancockをルーツとしていますが明確なオリジナリティを聴かせるスタイル、一聴彼と即断出来る8分音符のフィギュア、申し分のないタイム感、思わず引き込まれてしまう麻薬的魅力と言える独特の色気、そしてリーダーの音楽性に確実にブレンドし、変幻自在、柔軟にバックアップするサイドマンとしての資質が認められ、その後も数多くの優れたミュージシャンと共演を重ねます。
枚挙にいとまがありませんがざっと思い付く限り、Dizzy Gillespie, Terumasa Hino, Elvin Jones, Kenny Garrett, Sting, Wynton Marsalis, Branford Marsalis, Michael Brecker, Carla Bley, Hiram Bullock, Franco Ambosetti, Dave Liebman, John Scofield, Stone Alliance…
いわゆる売れっ子ピアニスト、旬のアーティストとして最先端ミュージシャンのツアーに参加し、彼らの代表作と言える作品で優れた演奏を数多く残しています。
個人的にお気に入りの作品を挙げておきましょう。
Stone Alliance / Live in Berlin(83年), Wynton Marsalis / Black Codes(85年), Sting / The Dream of the Blue Turtle(85年), Michael Brecker(87年), Branford Marsalis / Crazy People Music(90年), Kenny Garrett / Black Hope(92年)
まさに将来を嘱望されていた音楽家ですが、残念なことに98年11月鬱血性心不全の発作を起こし、43歳の若さで帰らぬ人となります。
直前まで変わらず元気に演奏活動を行なっており、青天の霹靂、発作の原因は諸説ありますが定かではありません。
Branford Marsalisのリーダー作98年録音「Requiem」は同年8月にKirklandほかベースEric Revis、ドラムJeff “Tain” Watts当時のレギュラー・カルテットで録音されました。すぐさま彼らはレコーディングされた楽曲を携えてツアーに出ましたが、直後の10月にKirklandが急逝、12月に残された3人で彼に捧げたナンバーElysian(理想郷、至上の幸福)をレコーディングしアルバムに追加して発表しました。
彼の演奏をこよなく愛していたリーダーたちは突然のKenny Kirklandロスにさぞかし呆然とした事でしょう。彼のプレイの素晴らしさ、One & Onlyなアプローチから、Kirklandの演奏が無ければ自分の音楽が成り立たないとまで考えたプレーヤーもいた事でしょう。
しかしいつまでも悲しみに暮れている訳にはいきません。時間も音楽もどんどん前に進行して行きます。
彼の後釜探しはさぞかし難航したことでしょう。知る限りではMichael Brecker BandやBranford Marsalis QuartetにてJoey Calderazzoが紛失したパズルのピースを埋めるが如く適材適所で活躍し始めました。そしてBranfordのバンドにはその後不動のメンバーとして、Joeyが参加します。
そのJoeyですがKirklandと同じく91年に初リーダー作「In the Door」をリリースしています。作品プロデューサーは彼を「発掘」したMichael Brecker、クリニック演奏を行った先の大学で彼を見つけ、ピックアップしたと言っていました。
Joeyをバックアップすべく1曲プレイも行なっていますが、他にもBranford, Jerry Bergonziと重量級テナーサックスをフロントに迎えて、コンテンポラリーな楽曲やアレンジされたスタンダードナンバーを演奏しています。
作品「Kenny Kirkland」ではBranfordがアルバムのメインボイスとして5曲プレイしており(1曲アルト奏者Roderick WardがOrnette Coleman役で参加していますが)、彼のテナー、ソプラノが作品のカラーのひとつを決定付けているように聴こえます。
複数のテナー奏者の参加はアルバムにバラエティさを添えますが、サウンドの志向的にはフォーカス感は希薄になります。若くしての(25歳)デビュー作ですので本人の音楽性も然程定まっていなかったでしょう、色合いの多彩さを聴かせようと言うプロデューサーMichaelの采配だったと思います。
因みに本作のプロデューサーはBranfordの弟でMarsalis兄弟三男Delfeayo、兄Wyntonのアルバムもプロデュースするトロンボーン奏者でもあります。
87年4月14日Michaelが初リーダー作「Michael Brecker」をリリース(同年6月25日発売)する直前、場所は今はなき六本木Pit Inn、”Michael Brecker Special Session”と銘打ったコンサートで、僕も生Kirklandの演奏に至近距離で触れることができました。
ts, EWI)Michael Brecker, g)Mike Stern, p)Kenny Kirkland, el-b)Jeff Andrews, ds)Omar Hakim、素晴らしいメンバーによる来日公演でした!
何と言っても当夜はOmarが炸裂し絶好調、煽られたメンバー全員凄まじい演奏を繰り広げていました。
例えばライブ1曲目はアルバム収録のNothing Personal、テナー、ギターソロと盛り上がりに盛り上がり二人の演奏に全てを持って行かれ、ステージには雑草も生えていないような荒涼としたツンドラ大地を感じましたが(汗)、しかしKirkland全く意に介さず、ひたすらマイペースにアプローチし、更なる山場作りを模索しつつストーリー性をしっかりと感じさせながらソロを巧みに構築して行き、煽り役のOmarを寧ろ扇動するプレイを展開、遂には六本木Pit Innのステージに青々とした樹々が生い茂った熱帯雨林のように見えたのを覚えています(爆)。
後日Michaelとその日の演奏について話をしました。本人かなり手応えがあったようでStern, Kirkland, Andrewsらの演奏を絶賛していましたが、Omarのドラミングが音量、音数的にもtoo muchで個人プレイに走り気味と話していました。そして何といっても女性にモテモテ(爆)だったのが気に入らなかったようで、「Omarは女の子にちょっかいを出し過ぎる」と嘆いていたのが印象的でした。単に羨ましかっただけなのかも知れませんね(笑)。
「Kenny Kirkland」は彼が36歳の時にリリースされました。収録全11曲中いずれもが高い音楽性を放つ自身のオリジナル6曲、他にBud Powell, Ornette Coleman, Wayne Shorter, Thelonious Monkたちジャズジャイアンツのナンバーも素材として取り上げ、独自の解釈によるアレンジを十二分に施し、曲毎に編成を変え様々なカラーを持たせ、またシンセサイザーをサウンド付けに巧みに用いアコースティックと融合させ、自身の音楽として表現しています。
本作のレコーディング日程に関するディテールがクレジットされていないのは残念です。幾つかのセッションで成り立っているので複数日を費やした事でしょうが、Kenny Kirklandリーダー作プロジェクトとして他にもアイディアがきっとあった事でしょう。それは恐らく次作に持ち越されたのではないかと睨んでいますが、プレイヤーとしての資質に恵まれているのは当然として、ジャズジャイアンツのオリジナル選曲にどこか「いち」ジャズファンの匂いを感じさせるのです。
実現しなかった2作目のリーダーアルバム、演奏内容は言うに及ばず、ジャズファンの心をくすぐる選曲の一枚になったのではないかと勝手に想像しています。
Kenny Kirkland
それでは演奏について触れて行く事にしましょう。1曲目アップテンポのナンバーMr. J.C.、ピアノ左手の印象的なパターンから始まるアグレッシブな楽曲、曲のフォームとしては基本的に倍の長さのマイナー・ブルース、前述のMichael BreckerオハコのNothing Personalと構成が被る部分もあります。
ところでJ.C.とは誰の事でしょうか。イニシャルから連想されるのはJohn Coltrane、そう言えば彼のアルバム「Giant Steps」収録のオリジナルCousin Maryのメロディとリズムのフィギュアが良く似ています。
Branfordの深いテナーサウンド、Jeff Wattsのタイトかつ超弩級ヘヴィーなドラミングとCharnett Moffettの極太でon topなbassが織りなすビートが相俟って、これは盛り上がらない訳がありません!
ソロの先発はKirkland、端正で音の粒立ちが半端ない8分音符、脱力感とスピード感、テンションが並走するプレイは聴き手をナチュラルにジャズの真善美へと誘い、豊かなリズムはスイングの極意を提示しているかのようです。
比較的クールに対処していたリズム隊ですがソロ半ばからはKirklandの知的でリズミックなラインにインスパイアされ、とうとうレスポンス炸裂、しかしもう少しイケそうなところ手前で、続くソロイストBranfordに華を持たせるべくソロを終えますが、この辺りも伴奏の手練れぶりを物語っています。 Kirklandのタイム感が素晴らしいのもありますが、それにしてもベーシスト、ドラマー共にピアニストの提示するリズムのセンターの捉え方が実に確実で、結果三者の織りなすスイング感は絶品です!
その後Branfordのテナーがパターンに乗って悠然と現れますが、まずこの音色の魅力にしてやられます!極太、ダークでダブルリップ奏法ならではの艶や付帯音の豊富さ、柔らかさとエッジのバランスがまるで化学的処理を施したかのような配合の絶妙さを感じさせ、テナーのトーンだけで既に十分に説得させられます。
ピアノソロが構築したリズム、サウンドの世界に、更なるケミカル・リアクションを起こすべく同じベクトル方向を描く強力な因子を加わえたかのように、カルテット演奏が次のグレードに向かい始めているのが分かります。
Kirklandのバッキングはテナーソロを俯瞰しつつ、決してtoo muchにならずほど良きスタンスを保ち、巧みな即断の合わせ技としての合流部分と放置箇所の選別、バックアップと自己主張の狭間を全くスムーズに往来します。
WattsのドラミングはサウンドとしてコンテンポラリーなElvin Jonesと評しても良いでしょうし、重厚なリズムとスピード感、繊細なカラーリング、レスポンスの良さは歴代ジャズドラマーの系譜に間違いなくノミネートされる事でしょう。Elvin~Tony Williams~Jack DeJohnette~Steve Gadd~Peter Erskine~Jeff “Tain” Watts!!Branfordとのコンビネーションの素晴らしさはここでも群を抜いています。ラストテーマ後のバンプ部分ではやはりとんでも無いことが行われていました。
Branford Marsalis
2曲目Midnight Silenceは彼のピアノとWatts, Branfordの3人で演奏が行われますが、ベースが鳴っているのでシンセベースをKirklandがオーバーダビングしたのでしょう、カルテット状態です。
リリカルなピアノイントロに導かれシンセサイザーとシンバルが加わり、その後ソプラノサックスがソロを取りつつメロディを奏でます。シンセの音がホーンセクションやストリングスを聴かせ、サウンドに厚みを持たせています。その合間に聴かれるいかにも彼らしいピアノのバッキングやソロ、ここではコンパクトな楽曲に仕上げ、引き続きWattsの短いドラムソロをフィーチャーした3曲目El Reyへ。このドラムのフレージングはまさしくElvinスタイル!しかもこの上なくタイトな!それもそのはず、RayはElvinのミドルネーム、彼に捧げたテイクなのです!そして組曲のように4曲目Steepian Faithに繋がります。
シンセの織りなすラインがイントロとして演奏され、ソプラノがフィルインを入れつつピアノ共々テーマを演奏しますがアコースティック音とシンセサイザーのブレンド感が見事です!そのままピアノのソロへ、たっぷりしたタイムとレイドバック感がゴージャスさを引き出し、バックグラウンドに挿入されるシンセの音がジャジーなムードを高めます。その後はソプラノのソロへ、誰でもない、Branfordそのもののトーンが曲想に合致しています。SteepとはBranfordのニックネーム、こちらは彼に捧げられたナンバーなのでした。
Jeff “Tain” Watts
5曲目CeliaはBud Powellのナンバー、Don AliasとのDuo演奏です。
多重録音を駆使しAliasはパーカッション、シェイカー、コンガ、ボンゴ等を、Kirklandはピアノとシンセサイザー、ベースを重ねラテンジャズ・バンドの様相を呈していますが、何とタイトでグルーヴィーなリズムでしょう!思わず椅子から腰が浮き上がり、リズムに合わせて踊り出しそうになります!
Kirklandはスイングのリズム感も素晴らしいですが、ラテンミュージックに関してはマスターの称号を与えるべきではないでしょうか。
シンセサイザーの使い方も巧みで楽しげにそして遊び感覚満載、効果的な音色やサウンド、こちらも一切の作為的な用い方のない、全てに必然性を感じさせるエフェクトです!
そしてAliasもラテンパーカッションのマエストロです!彼とは日野皓正さんの作品「Spark」で共演しましたが、気さくな人柄で、物静かな中に内に秘めた熱いスピリットを感じさせる、素晴らしいミュージシャンでした。
本テイクは粒立ちの良いプリプリとした音符によるリズムの洪水を、Powellのプリティなナンバーを素材に、ふたりのラテンプレーヤーが面白おかしく丁寧に音を重ねて作り上げた演奏と言えます。
Don Alias
6曲目Chanceはミステリアスな雰囲気を湛えたワルツナンバー、ベーシストがChristian McBrideに交代します。
ピアノのリズミックなイントロに誘われ、曲が始まります。Wattsはブラシでリズムを刻みますがこちらでもElvinのテイストを感じます。Wattsがスティックに持ち換えたのにリンクするように演奏が熱気を帯び始めます。
McBrideのベースワークは巧みで重厚、Wattsとのコンビネーションも申し分ありません。それにしてもKirklandのフレージングの長い事と言ったら!「息を呑む」とはこちらの事を指すのかも知れませんが、3連符、16分音符の洪水、緻密にして大胆、猛烈なテクニックと音楽理論の集大成的アプローチです!ベースやドラムのソロはなく、Kirklandの独壇場で演奏されており凝縮された彼のプレイが聴かれます。
Christian McBride
7曲目When Will the Blues LeaveはOrnette Colemanのブルース・ナンバー、この演奏は作品中異彩を放ちます。
アルトのRoderick Wardは音色、フレージング、ソロのアプローチともOrnetteからの影響を強く感じさせますが、本演奏参加Charnettの父親Charles MoffettがOrnetteバンドのドラマーです。因みにChaernettの名前は父親のCharlesとOrnetteを合成させたものです。
ここでのWardはかなり健闘しており、Ornetteのサウンドを再現するのが目的なのであれば十分に成功していると思います。
一方のKirklandは比較的オーソドックスなブレースプレイに終始しており、個人的にはもっとフリーフォームにまで突入して欲しかったところではあります。 Ornette Coleman Trioはピアノレス、コード感のない編成なので、オーソドックスなピアノ奏者が加わればこのような演奏になるという、デモンストレーションの様相を呈してはいます。
Charnett Moffett
8曲目Ana MariaはWayne Shoterのオリジナル、かの大名盤「Native Dancer」収録のナンバーです。
オリジナル演奏に肖りBranfordのソプラノにShorter役を任命したのかと思いきや、Kirkland自身のピアノがフィーチャーされた極上のラテン・ジャズに変身しています。
ベーシストAndy、パーカッションJerryのGonzales兄弟にドラマーSteve Berrios、ボンゴにAliasとメンバーが一新されています。
オリジナルよりも早いテンポが設定され、パーカッション、ボンゴの繰り出すビートが演奏の核となり、気持ちのこもったピアノソロが実に心地良く、どこまでも美しいこの名曲に新たな解釈を施した名演奏が誕生しました。
Native Dancer / Wayne Shorter
9曲目RevalationsはBranfordのソプラノをフィーチャーしたカルテットによる演奏、ベーシストがRobert Hurstに交代します。まずはソプラノの魅惑的音色に惹かれますがピアノソロが先発、ひたすらしっとりと抒情的に歌い上げ、Branfordもコンセプトを引き継ぎ美の世界を構築しますが、1曲目Mr. J. C.のアグレッシヴさから同一人物の演奏とは到底思えません。Hurstのベースが終始好サポートを聴かせています。
Robert Hurst
10曲目Thelonious Monkの名曲Criss Cross、Monkのオリジナル演奏は51年7月録音「Genius of Modern Music vol. 2」に収録されています。 実にユニークな楽曲、Monkならではのナンバー、僕自身彼の楽曲中フェイバリットな1曲です。
オリジナルはミディアム・スイングでしたがここではCeliaと同じラテンの饗宴、ゴージャスにプレイされています! Ana Mariaと同一メンバーによる演奏ですがAliasの代わりにBranfordがテナーで参加します。
Celiaは多重録音を駆使してるとは言え二人で演奏したテイクでしたが、こちらは参加人数が多いので自ずとバンドのグルーヴはより深く、そしてリズムの奥行きがぐっと増します。 面白いもので、人間が奏でるリズムはその参加者数が多くなればなるほど密度や重厚感が対数的に増加して行きます。こちらは実に見事な総勢5人によるリズムのシンポジウムです!合奏感が半端ありません!
想像するにCeliaではクリック(メトロノーム)を用いてタイムを統一させていますが(全体的に限りなくデジタル的に正確ゆえ)、Criss Crossの方はテンポが結構速くなっていることからクリックを用いていません。こちらの方が人間の繰り出すビート感が合わさり、グルーヴし易くなるのです。
印象的なテーマ後Kirklandのピアノソロ、リズミックに快調に飛ばしつつもその後おもむろにモントゥノのリズムを弾き始め伴奏に回り、その上でシンセサイザーのビブラフォン・ライクな音色でソロを開始するのですが、興味深いトライアルです。オリジナル演奏にMilt Jacksonのビブラフォンソロがあるのでひょっとしたら敬意を表しているのかもしれません。 その後ラストテーマ終了してからBranfordが登場、ピアノの伴奏が抜け、しばらく後ベースも演奏を止め打楽器群を相手にブロウします。おそらく延々と続いたのでしょうが短く収められてFade Out、こちらも面白いアプローチです。
11曲目Blasphemyは再び多重録音を用いたKirklandとAliasのDuo、タイトルの意味は神・神聖な事物に対する冒涜。何やら意味慎重ですがこちらも作品中異色なナンバーです。陽気なはずのラテンのリズムが背徳的な匂いのするサウンドで満ちています。Kirklandはキーボードを駆使し様々な音色で色付けを行い、対してAliasはシンプルにリズムを刻み対応します。どこかWeather Report的なムードを感じさせますが作品のエピローグとして余韻を残し、to be continuedとしています。