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キャッティン・ウイズ・コルトレーン・アンド・クイニシェット/ジョン・コルトレーン、ポール・クイニシェット

ジョン・コルトレーンポール・クイニシェット二人のテナーサックス奏者をフィーチャーした1957年作品『キャッティン・ウイズ・コルトレーン・アンド・クイニシェット』を取り上げましょう。

録音:1957年5月17日
スタジオ:ヴァン・ゲルダー・スタジオ、ハッケンサック、ニュージャージー
エンジニア:ルディ・ヴァン・ゲルダー
プロデューサー:ボブ・ワインストック
レーベル:プレスティッジ

(ts)ジョン・コルトレーン  (ts)ポール・クイニシェット  (p)マル・ウォルドロン  (b)ジュリアン・ユーエル  (ds)エド・シグペン

(1)キャッティン  (2)サンデイ  (3)イグザクトリー・ライク・ユー  (4)アナトミー  (5)ウォッカ

キャッティン・ウイズ・コルトレーン・アンド・クイニシェット

 ジャズ鑑賞の醍醐味の一つに、同一楽器によるバトル演奏があります。
特にテナーサックス奏者同士、丁々発止とやり合うスリリングな展開はジャズファンには堪らない表現手段です。
 バトルにはおよそ3種類のタイプが存在するように思います。
まずバトルの真骨頂と言えますが互いに闘志を燃やし、刺激し合いながらソロを交換する。相方のインプロヴィゼーションにインスパイアされ、コール・アンド・レスポンスを行うのが基本です。
ソニー・ロリンズとソニー・スティットによる、ディジー・ガレスピーの作品『ソニー・サイド・アップ』でのエターナル・トライアングルがその代表格、ロリンズは絶頂期にあり飛ぶ鳥を落とす勢いのプレイで只管ひたすらマイペースに、しかし年下の新人テナーに負けじとばかりにライヴァル心剥き出しのスティットが火付け役となり、結果テナーバトル史上有数の勝負を繰り広げました。

ソニー・サイド・アップ/ディジー・ガレスピー

他にはマイケル・ブレッカーとジェリー・バーガンジの濃密バトルを収めたドラマー、アレックス・リールの『アンリール』、エルヴィン・ジョーンズ『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』ではスティーヴ・グロスマンとデイヴ・リーブマンのユダヤ系知的情念バトル、エディ・ロックジョウ・デイヴィスとジョニー・グリフィンの『ザ・テナー・シーン』に代表されるプレスティッジ・レーベルでの作品群、そして『ボス・テナーズ』のジーン・アモンズとソニー・スティット、いずれもが熱いバトルチームです。

アレックス・リエル/アンリエル
エルヴィン・ジョーンズ・ライヴ・アット・ザ・ライトハウス
ザ・テナー・シーン
/エディ・ロックジョウ・デイヴィス、ジョニー・グリフィン
ボス・テナーズ/ジーン・アモンズ、ソニー・スティット

 次に双方の実力を認め合った横綱相撲の如きバトル、60年ドイツに於けるJATPコンサートの一環で行われた、スタン・ゲッツとコルトレーンによる演奏です。
それはそれは美しいほどに各自の個性を発揮し、お互いの音楽性を尊重しながら、挑むようなスタンスではフレーズを交換する事はありません。互いに見つめ合う東西横綱の眼差しは慈愛に満ちています。

他にもロリンズとコルトレーン唯一の共演を収めた『テナー・マッドネス』、ピート・クリストリーブとウォーン・マーシュの『アポジー』、ボブ・ミンツァーとマイケル・ブレッカーの『ザ・サキソフォン・フィーチャリング・トゥー・ティーズ』が挙げられます。

テナー・マッドネス/ソニー・ロリンズ
アポジー/ピート・クリストリーブ、ウォーン・マーシュ
ザ・サキソフォン・フィーチャリング・トゥ・ティーズ

 上記2つのタイプは音楽的コラボレーションが基本にあるバトルですが、両者間に微妙な隙間風が吹くのを感じる、もしくは異種格闘技的なタッグマッチにも人間臭い魅力を感じる場合があります。
本作『キャッティン・ウイズ・コルトレーン・アンド・クイニシェット』では全く演奏スタイルの異なる二人のテナー奏者のバトルが収録されています。

 まずはクイニシェットの経歴について触れてみましょう。
1916年5月17日コロラド州デンヴァー出身、幼少期よりアルトサックスを習い、13歳の頃レスター・ヤングにレッスンを受けます。
ジェイ・マクシャン、ルイ・ジョーダン、ラッキー・ミリンダーらジャンプ・ナンバーを演奏するバンドに参加し音楽性を固め、その後カウント・ベイシー・オーケストラでプレイを華開かせています。
クイニシェットはレスターのプレイを模倣し、あまりにもそっくりであったがために、レスターのニックネームであるプレス(大統領)をもじり、ヴァイス・プレス (副大統領)と名付けられました。54年リリース初リーダー作のタイトルは文字通りの『ザ・ヴァイス・プレス』です。

ザ・ヴァイス・プレス/ポール・クイニシェット

 米国ジャズミュージシャンは何よりも自分の個性を出す事を重んじており、誰かに似ている、大前提として誰それ風を回避する傾向にありますが、クイニシェットはレスターの影響を臆面もなく示し、寧ろむしろ似ている、そっくりだと周囲から言われる事を喜んでいたように感じます。
因みにレスターの方はクイニシェットの事をレディ・キューと呼んでいたそうです。レスターと懇意にしていたビリー・ホリデイのニックネーム、レディ・デイに肖ったあやかったのだと思いますが、クイニシェットが幼少時にレッスンを受けた以降も、二人はずっと近しくしていたのでしょう。

 レスターの演奏はリラクゼーション、ジャズの本質に根差した緻密でスインギーなインプロヴィゼーション、迸るほとばしる色香、そして退廃的にまで感じる脱力感を湛えていて、そこに彼の本質を感じます。
クイニシェットの方はレスターのスタイルを基に、より強いテイスト、ニュアンスを加味し彼と一線を画しています。
言ってみれば元気で溌剌とした、明瞭で健康的なレスター・ヤングです。
とは言え生涯彼の影響下から抜け出る事はなく、最後まで副大統領の職務を全うしました。
 60年代は健康状態を害しリタイア状態で、それでも電気技師として働いていたそうです。73年にキャリアを再スタート、翌74年にピアニスト、ブルックス・カーとの共同名義作品『プレヴュー』をリリース、健在ぶりを知らしめました。

ポール・クイニシェット
プレヴュー
/ブルックス・カー、ポール・クイニシェット・カルテット

 コルトレーンの方は本作録音のちょうど半年前56年11月、タッド・ダメロンの作品『メイティング・コール』参加で好演奏を残し、マイルス・クインテット時代のプレイから脱却を図りつつありました。そして本作『キャッティン〜』です。ここではそれまでを刷新するプレイスタイルを示しており、目眩めくるめくブロウを聴かせます。
 機は熟し、このレコーディングの丁度2週間後に初リーダー作品『コルトレーン』を録音します。収録バラード、ヴァイオレット・フォー・ユア・ファーズでは確固たる信念に基づいた真善美の世界を構築しました。以降も短いスパンで目まぐるしい変化を遂げます。

コルトレーン/ジョン・コルトレーン

 急成長を遂げた57年のコルトレーン、一体何が貴方をそうさせた?
叶う訳がありませんが、同業者の私としては彼に対し、そのようにぜひ質問をしてみたいです。
 一方クイニシェットは、コルトレーンのプレイには馬耳東風を決め込んだかのブロウを行い、レスターならばここでこう言う音使いをするだろう、ヴィブラート、ニュアンス付けを行うだろうと、まるで自分に課しているかの拘りこだわりある演奏を行います。自己愛の成せる技、その裏返しかも知れません。
結果コルトレーンとは平行線を辿り、地平線の果てまで行っても交わる事はありません。クイニシェットは自分の持ち場を離れず、自己の務めを遂行し続けた感があります。
 逆にコルトレーンの方は全く演奏スタイルの異なるクイニシェットのプレイに何処か影響を受けていて、その当時のプレイで発するテイストとは異なったアプローチを聴かせています。
普段のペースを乱されてなかなか調子を掴めなかったと言う見方も出来ますが、いずれにせよ相方テナー奏者クイニシェットが触媒となり、コルトレーンにある種の化学反応を起こさせたフシが伺えます。

ジョン・コルトレーン

 本作レコーディング当時コルトレーンは未だ無名な存在でした。周囲はマイルスのクインテットでデビューし、一風変わったプレイを行うテナーマンという程度の認識で、急成長を遂げていたとしてもその変貌ぶりは一般のジャズファンには届いておらず、寧ろクイニシェットの名前の方が通っていた模様です。
 翌58年1月3日録音ジーン・アモンズのリーダー2作品『ザ・ビッグ・サウンド』『グルーヴ・ブルース』が5管編成で演奏され、いずれにもコルトレーンが参加しています。
アモンズのテナーサックスの他、本作のクイニシェットもテナーで加わっていますが、何とコルトレーンはアルトサックスで参加と言うレアさを提示、ホーンアレンジ上の都合でしょうか、テナーは3管必要なく、ペッパー・アダムスは不動のバリトンサックス、ジェローム・リチャードソンがフルートを吹くので、(格下の)コルトレーンにアルトサックス役のお鉢が回ってきた形です。

ザ・ビッグ・サウンド/ジーン・アモンズ
グルーヴ・ブルース/ジーン・アモンズ

 それでは収録曲について触れて行く事にしましょう。リズムセクションは本作キャッティン〜と同日録音(!)のピアニスト、マル・ウォルドロン作品『マル/2』と同じリズム隊が担当します。
ベーシスト、ジュリアン・ユーエル、ドラマー、エド・シグペン、因みにこの作品マル/2にもコルトレーンが参加しています。二つのセッションからなるレコーディングの別日、約1ヶ月前でもコルトレーンは演奏し、参加メンバー唯一全編に渡りフィーチャーされ、いずれに於いてもフレッシュなプレイを聴かせています。

マル/2/マル・ウォルドロン

 1曲目キャッティン、アルバムタイトルにも用いられたウォルドロン作のブルースナンバー、キーはF。ハードバップ期の雰囲気をそのままにイメージさせるメロディライン、ハーモニーが用いられています。
 テーマ終了後先発ソロが決まっていなかったのでしょうか、若しくはウォルドロンが出忘れて暫し混沌とします。その後のピアノの打鍵は訥々としたテイストで、穏やかに進行します。
続いてコルトレーンのソロが始まりますが、テナーの音色が放つ倍音の豊富さが半年前と大きく違っています。
倍音成分はトーンのインパクトを後押しし、サックスの表現をより魅力的なものに仕立てます。何よりプレイしている本人に心地良さが伝わり、インプロヴィゼーション時のイメージアップに繋がります。
 楽器の鳴らし方を習得したのでプレイが向上したのか、演奏のクオリティが上がったので楽器のコントロールにまで波及したのか、卵が先か鶏が先かは分かりませんが、とてつも無い向上意欲と鍛錬の賜物により57年のコルトレーンが存在します。
 自身のテンションが上がり、ソロが佳境に達したところでクイニシェットにバトンタッチします。コルトレーンとの差異を明確にするためでしょうか、敢えて音量を抑えてプレイ開始です。
同じ楽器とは思えない二人の音色の違い、つくづくテナーサックスと言う楽器の表現力の幅を感じます。
彼らの使用楽器ですが、コルトレーンの楽器本体は米セルマー、スーパー・バランスド・アクション、マウスピースがオットー・リンク・メタル、トーン・マスター・モデル。クイニシェットの楽器本体はコーン、おそらく10Mモデル、マウスピースは白色が印象的なブリルハートのトナリンです。

 クイニシェットの朗々としたフレージングはおおよそスケール内での動きになりますが、テーマで用いられている#11の音は確認できます。コルトレーンの方法論が代理コードやテンションを随所に駆使したチャレンジャブルなものなので、トーンとアドリブの手法両方の違いから彼らが同じ土俵内に存在するとは思えない程です。
 クイニシェットのソロに被るようにコルトレーンが再登場、4小節のソロ交換を行いラストテーマに向かいます。バトル形式であればよりコーラス数を重ねるのが常の筈ですが、僅か1コーラスで終えています。数を重ねても音楽的な盛り上がりを見込めないとコルトレーンが判断したのかも知れません。

 2曲目サンデイはジュール・スタイン作のスタンダード・ナンバー、シグペンの8小節ドラムソロから始まります。
シグペンは堅実なスタイルのドラマーで、59年から名門オスカー・ピーターソン・トリオのレギュラー・ドラマーになります。
ピーターソン・トリオでのシグペンは、ピーターソンとベーシストであるレイ・ブラウンが双生児の如く同一で強力なグルーヴ、オントップのタイミングで疾走するのに対し、スピード違反を規制するかの取締官の如きステディなスティック捌きさばきを行い、トリオのリズムの纏め役となりました。
巨漢二人を恰もあたかも後ろから羽交い締めにして制するかのドラミングは、小柄な彼にとってはさぞかし大変だったと思います(笑)。

エド・シグペン

 メロディ奏はクイニシェットが行い、そのままソロに続きます。2コーラスのアドリブにはクイニシェットの唄心を認める事が出来、続くコルトレーンのソロに影響を与えています。の取り方、イントネーションの付け方に、いつものコルトレーンでは聴かれないアプローチが現れています。同じく2コーラスをプレイした後、クイニシェットが再登場、先程よりも自身のエッセンスが顕著なアプローチを展開します。その後コルトレーンが同様に2コーラスをプレイ、次第にアグレッシヴなアプローチに発展し、あわやシーツ・オブ・サウンドに踏み込みそうな場面も見受けられます。
その後の4小節交換では互いのフレーズで応酬しますが、フレージングの最後を聴き取って次に繋げる、尻取りの如く呼応しソロのフレーズを発展させる、互いのプレイを踏まえてカンヴァセーションを行うというスタンスは感じられません。

 クイニシェットのプレイ時に何やら金属が触れ合うような、叩くような、ドラムのリムショットと重なって判別が難しいのですが、音楽とは無関係な音がランダムに入ります。これはクイニシェットの楽器から発するノイズで、キーアクションの保護フェルトやコルクが外れている等の調整不足に起因するものだと思います。
一般的にバラードや音量の小さい演奏ではアクション・ノイズが聴こえる場合がありますが、ここまで派手に雑音が入るサックス演奏は極めて珍しく、クイニシェットの楽器のコンディションに頓着しない、おおらかな性格に由来するものではないかと推測しています。
ラストテーマもクイニシェット一人が演奏します。結局テナー以外のソロは行われず、二人を終始フィーチャーしたテイクになりました。

 主にテナー二人の噛み合わない演奏に起因するのですが、淡々とソロに関係なくバッキングするウォルドロン、ひたすらタイムをキープするユーエル、イントロとエンディング以外は殆ど無表情にシンバル・レガートを繰り出すシグペン、本作はプレスティッジ・レーベルの作品ですが、ブルーノート・レーベルであったならば情熱家のプロデューサー、アルフレッド・ライオンがドイツ語訛りの英語で、「シュイングは?もっとシュイングして!」とミュージシャンを鼓舞したように想像します。

 3曲目イグザクトリー・ライク・ユーはミュージカルのためにジミー・マクヒューが書いた、小粋さ際立つナンバー、カウント・ベイシー楽団でのレスター・ヤングのプレイが印象的です。
ピアノトリオによる8小節イントロ後、こちらもクイニシェット単独によるメロディ奏で水を得た魚状態、憧れのヤングの名演奏ナンバーを気持ち良さそうにプレイします。引き続きソロを3コーラスプレイ、その後ピアノソロへ、2コーラスを淡々と歌い上げた後、クイニシェットが再登場、1コーラスプレイしラストテーマへ。コルトレーンは参加せずじまいでした。

  4曲目アナトミーはウォルドロンのオリジナリですが、ジェローム・カーン作曲のスタンダード・ナンバー、オール・ザ・シングス・ユー・アーのコード進行そのままに則しています。
いきなりコルトレーンによるテーマ奏から始まります。ピアノがここではバッキングを行わないためコード感が希薄、ですのでオール・ザ・シングス・ユー・アーのコード進行は感じられません。寧ろバッキングを行う事で元の曲が明確になるのを避けたのでしょう。
コルトレーンの音色がクイニシェットに影響を受けたかの、サブトーンを生かしたトーンに聴こえます。
テナー二人が8小節ずつ交互にテーマを演奏し、サビ以降はユニゾンとハーモニーを生かした展開へ、ピックアップソロからコルトレーンの出番です。
クイニシェットよりもリードの硬さを感じるソリッドなトーン、様々な音の成分を含んだ鳴らし方はそれまでのテナー奏者には見られないオリジナリティ溢れるもの、フレージングの妙味、語り口のユニークさ、8分音符のレイドバックも相俟って実にスリリングです。
2コーラスをブロウした後、クイニシェットのプレイにバトンタッチします。ジョークフレーズも交えながら同様に2コーラスを演奏しますが、凡そおよそダイアトニックで平坦な語り口では、コルトレーンのクリエイティヴさの前に聴き劣りは致し方ありません。
ウォルドロンの1コーラスのソロに続き、テナー二人で4小節交換が2コーラス行われます。コルトレーンが途中オール・ザ・シングス・ユー・アーのメロディ断片を交えつつ、彼が主にクイニシェットのフレーズを拾いながら会話を行い、クイニシェットは唯我独尊体勢を崩さずマイペースにプレイします。
冒頭と同じくテーマがピアノレスで演奏され、最後はカットアウトでFineです。

 5曲目ウォッカもウォルドロンのオリジナル、こちらも同じくジェローム・カーンのナンバーであるイエスタデイズのコード進行を用いた替え歌です。
原曲とはかなり掛け離れたトリッキーなテーマを、ユニゾンを基本にハーモニーを混ぜながらテナー二人はプレイし、ウォルドロンはテーマでハーモニー部をバックアップすべく伴奏を行います。
 先発はコルトレーン、推測するに収録曲中このナンバーを最後に録音したのでしょう、隣にいるもう一人のテナー奏者とのコンビネーション、音楽的対応の仕方、スタンスの取り方もテイクを重ねて把握に至り、いよいよ本格的稼働が可能となり、本作中最も充実した内容のテイクに仕上がりました。
 コルトレーンは58年11月、チューバ奏者レイ・ドレイパーのリーダー作『ア・チューバ・ジャズ』に於いて元曲イエスタデイズを録音しています。若干テンポが速めですが僅か1年半後のプレイにも関わらず更なる進歩を感じさせる、強力な演奏を繰り広げます。
具体的にはタイム感、音色が一層洗練され、楽器を操る能力は格段に前進し、泉の如く湧き上がり尽きる事の無いアイデアを認められ、収録時間の制限が無ければ幾らでもソロは続いた事でしょう、しかも創造性に富みながら。
そして何よりも自身が表現すべきプレイスタイルを確実に掴んでブロウしているのが伝わります。

ア・チューバ・ジャズ/レイ・ドレイパー

 続くクイニシェットは圧倒的な相方のプレイを尻目に只管ひたすら自分流を貫き通します。
その後ピアノソロへ、ウォルドロンは56年11月自身の初リーダー作『マル-1』でトランペット、アルトの2管編成による緻密なアレンジを活かし、ここでもイエスタデイズを録音しています。

マル-1/マル・ウォルドロン

 ピアノソロの後はコルトレーンから8小節交換が2コーラス行われ、3コーラス目から4小節交換になります。圧倒的に説得力のあるコルトレーンのプレイの前に、クイニシェットは単なる引き立て役に過ぎないとまで実感させられます。
その後ラストテーマを迎えFineとなります。

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