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部下からの「片思い」を解消?上司がカギを握る職場の信頼形成
1. 基本情報
1.1. タイトル
「上司と部下が信頼しあう“らせん関係”とは?――2,000人超調査で見るマネジメントの新知見」
1.2. 著者
パーソル総合研究所
九州大学大学院 池田浩研究室
1.3. 出典元
2. 要約
2.1. 1行要約
上司と部下の間で生じる「信頼」だけでなく「被信頼感」の双方向的な循環が、職場における健全なマネジメントとエンパワーメントを生むという研究結果が示された。
2.2. 3行要約
調査概要:5業種・複数企業の上司304名・部下1,848名を対象に2回のアンケートを実施し、「互いの信頼」と「被信頼感」がらせん的に強化されるプロセスを検証。
結果:半数近くの職場では部下が上司を信頼しているが、上司が部下を信頼しない“一方向不全関係”が存在する。
意義:最終的に職場の好循環を生むカギは、上司がメンバーを信頼する態度や人材観であり、能動的報連相・自己開示などメンバー側の積極性も重要と分かった。
2.3. 400字要約
輸送機器製造業や航空運送業など5つの組織から協力を得て、上司304名・部下1,848名を対象に約3カ月間隔で2回のアンケートを実施し、「相手を信頼する」ことと「相手から信頼されていると感じる(被信頼感)」の相互作用を分析した結果、両者は循環的に強化され“らせん関係”を形成することが確認された。しかし、約半数の職場では部下が上司を大いに信頼している一方で、上司が部下を信頼していない——いわば“一方向不全関係”——が存在し、これが改善されないと負のらせんに陥る可能性が示唆される。改善のポイントとしては、上司側が部下に積極的な期待をかける態度や、メンバー側の能動的な報連相・自己開示がともに重要である。
2.4. 800字要約
調査背景と目的
「信頼」が組織マネジメントにおける要石となりつつある時代、パーソル総合研究所と九州大学大学院の共同研究チームは、職場の上司と部下間の信頼関係をより精緻に理解するために大規模アンケートを行った。本調査は、国内5業種(輸送機器製造業、航空運送業、電気・ガス事業、介護・福祉事業、基礎自治体)から抽出したリーダー304名とメンバー1,848名を対象に、期間をずらして2回の回答を得る形で実施され、上司と部下の「信頼」「被信頼感」がどのように循環し強化されるかを検証している。
主な結果
信頼は相互交換と被信頼感で循環する
上司が部下を信頼→部下が「自分は信頼されている」と実感→部下がさらに上司を信頼→上司も「自分は信頼されている」と感じる…といった4つの変数がスパイラル状に作用し合う。“一方向不全関係”の多さ
信頼が高め合われる“正のらせん関係”は約26%に留まり、部下側が上司を信頼していても上司側が部下をあまり信頼していない“一方向不全関係”が全体の半数を占める。リーダーからの信頼が鍵
部下への期待や“能動的忠実性”への評価が、上司が部下を信頼する動機に。部下にとっては報告・連絡・相談を先回りで行い、自己開示することが、上司からの被信頼感を育む。
意義
リモート環境など働き方が多様化する中、上司・部下間で信頼が欠落するとコミュニケーションロスが拡大しがち。本調査は、上司がまず部下を信頼する姿勢や、部下の能動的行動が信頼スパイラルを加速させ、組織全体のマネジメントを円滑化できることを強調している。
2.5. 1,200字要約
1. 調査内容と手法
この研究は、上司(304名)と部下(1,848名)のペアを対象に、2回のアンケートを3カ月間隔で実施して、リーダーとメンバーの信頼関係が時間をかけてどう変化するかを分析した。回答者の業種は輸送機器製造業・航空運送業・電気ガス事業・介護福祉事業・基礎自治体と多岐にわたり、サンプル規模が大きいのが特徴。
2. 信頼と被信頼感のらせん関係
本調査では、以下の4要素が双方向に影響を及ぼすと仮定した:
リーダーがメンバーを信頼する(①メンバーへの信頼)
メンバーが「リーダーから信頼されている」と感じる(②リーダーからの被信頼感)
メンバーがリーダーを信頼する(③リーダーへの信頼)
リーダーが「メンバーから信頼されている」と感じる(④メンバーからの被信頼感)
集計の結果、この4つは相互に正の相関を示し、特に時間経過とともにその関連が強まることが判明。つまり、3カ月の間に上司・部下間の信頼循環が促進される可能性が示唆された。
3. 職場における信頼の3類型
分析の結果、(A)リーダーとメンバー双方が互いを信頼し合う「正のらせん関係」が26%、(B)互いに信頼水準が低い「負のらせん関係」が21%、(C)部下が上司を信頼しているが上司は部下を信頼していない「一方向不全関係」が52%という3類型に分けられた。最大数派はCであり、ここから負のらせんへ転落しないよう、リーダーがメンバーをどう信じるかが重要だと結論づけられた。
4. リーダーとメンバーそれぞれの方策
リーダー側では、拡張型の人材観(部下の能力や成長を信じる)や、能動的な行動を肯定的に評価するなどの姿勢が「メンバーを信頼する」要因に。逆に、部下を変わらない存在とみなす「固定型の人材観」は信頼を阻む。
一方、メンバー側としては、上司へこまめに報告・相談・連絡を行い、先取り行動する「能動的忠実性」がリーダーからの信頼を得る要因に。また1on1ミーティングなどで個人的な部分をオープンに話すことも、リーダーに「自分は信頼されている」と思わせる効果がある。
こうしたやり取りを継続し、時間をかけることで、上司・部下双方の信頼がらせん状に強化され、より豊かな組織マネジメントが可能になるという示唆が得られた。
3. AIからのフィードバック
以下は、本「紹介ドキュメント」(上司と部下の信頼関係に関する研究)そのものに対するKPT法でのフィードバックです。
3.1 Keep
幅広い業種・サンプル規模: 5業種・2,000人超という大規模調査で説得力がある。
2時点調査での経時変化分析: 時間経過で信頼が強まる仕組みを検証している点が新鮮。
3.2 Problem
中長期フォローが不明: 3カ月以外の期間や1年以上のフォローがどうなるかは未検証。
部下から上司への信頼が先行する一方向不全関係の対処法: 具体的な改善事例・成功例がもう少し欲しい。
3.3 Try
長期的な追跡調査の実施: 1年や2年といったスパンでらせん関係がどう成熟・停滞するかを追うと、企業現場に深いインサイトを提供できる。
ケーススタディの提示: 信頼関係が一方向不全から正のらせんへ改善した組織の実例を紹介すると、実践者にとって有益。