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生涯独身者の性格と幸せ度は?交際経験のある人との比較研究
以下の解説は、2025年1月19日付で PsyPost に掲載された
「New research reveals personality and life satisfaction differences between lifelong singles and partnered individuals」
という記事をもとに構成しています。実際の内容と若干の差異がある可能性がある点、ご了承ください。
1. 基本情報
1.1. タイトル
New research reveals personality and life satisfaction differences between lifelong singles and partnered individuals
1.2. 著者
記事執筆: Eric W. Dolan(PsyPost, 2025年1月19日付)
引用研究: Julia Stern(University of Bremen)らの研究「Differences Between Lifelong Singles and Ever-Partnered Individuals in Big Five Personality Traits and Life Satisfaction」
1.3. 記事
本記事は、Julia Stern らが Psychological Science で発表した研究論文を紹介するニュース・解説記事です。
研究では「一度も交際経験がない(lifelong single)」人と「交際経験のある(ever-partnered)」人を比較し、パーソナリティと人生満足度の差異を探究しています。
2. 要約
2.1. 1行要約
生涯独身者(lifelong single)は、ビッグファイブの外向性・誠実性や人生満足度が、交際経験者(ever-partnered)に比べて低いことを示した大規模調査の研究を紹介する記事。
2.2. 3行要約
約77,000人を対象とした大規模調査で、生涯独身者は外向性と誠実性が低く、人生満足度も低い傾向がみられた。
年齢が上がるほどこの差異が大きくなり、高齢の生涯独身者は健康面・経済面で困難を抱えやすい。
研究者は、こうした人々がより良い社会的支援を受けられるようにする必要があると強調している。
2.3. 400字要約
Psychological Science に掲載された新研究によれば、生涯独身者(lifelong single)は交際経験のある人々(ever-partnered)に比べて、外向性と誠実性のスコアが低く、人生満足度も低い傾向が確認された。この違いは主に中高年以降で顕著にみられ、特に健康や経済面で課題を抱えやすい高齢者に影響が大きい。研究者によると、独身という選択が増える社会背景のなかで、こうした生涯独身者をターゲットにした社会的ネットワークや支援体制の整備が、人生満足度向上に重要だという。また、この因果関係が生涯独身であることから生じるのか、あるいはパーソナリティが交際状態を規定しているのか、さらに検証が必要とされる。
2.4. 800字要約
概要
生涯にわたり結婚や同棲、真剣交際の経験がない人々(lifelong singles)と、そうした経験がある人々(ever-partnered)を比較し、パーソナリティ特性(ビッグファイブ)や人生満足度との関係を探る研究が行われた。約77,000人を対象にした大規模調査データ(SHAREなど)を分析した結果、生涯独身者は外向性や誠実性などの傾向が低く、また人生満足度も相対的に低いという結果が示された。
方法と定義
サンプル: 27のヨーロッパ諸国およびイスラエルから集めたSHARE(Survey of Health, Ageing, and Retirement in Europe)のデータ。年齢22~105歳(平均68歳)。
独身の定義: (1) 結婚経験がない、(2) 同棲経験がない、(3) 長期的交際経験がない――これらの条件をいずれか満たす場合を“lifelong single”と分類。
パーソナリティ測定: ビッグファイブ(外向性、誠実性、神経症傾向、協調性、開放性)の簡易版を使用。
人生満足度: 0~10の自己評価形式で測定。
結果
生涯独身者は外向性・誠実性スコアが低い傾向が統計的に有意。
人生満足度も低めであり、特に年齢が高いほどその差異が顕著。
神経症傾向(neuroticism)に関しては大きな違いがみられず、協調性や開放性も大きな差は一定しなかった。
ただし、文化・所得・性別などの要因によって結果は若干変化し、特に高所得者では差異が小さくなるなどの moderating effect が報告された。
考察
研究者は「生涯独身であること自体がパーソナリティや幸福感に影響しているのか、もともとのパーソナリティ傾向が交際状態を規定しているのかは依然として不明」と述べ、因果関係を明確にするにはさらなる縦断研究が必要だと指摘している。加えて、独身者へのターゲット支援や社会的ネットワーク構築が重要であるという。
2.5. 1,200字要約
1. 研究背景
婚姻や長期交際を「当たり前」と捉える風潮が強い西洋社会において、意図的・非意図的を問わず、生涯独身を選ぶ人が増えている。この新しい社会現象が、高齢化や社会的支援の必要性と絡み合っている点に着目し、研究者らは独身状態が続くこととパーソナリティ・幸福感の関係を大規模データから検証した。
2. 研究デザイン
27の欧州諸国とイスラエルを対象にしたSHAREデータ(約77,000人)から、(1) 結婚したことがない、(2) 同棲経験がない、(3) 真剣交際経験がない——という任意の条件を満たすと“lifelong single”、それ以外は“ever-partnered”と定義。
短縮版ビッグファイブインベントリで外向性、誠実性、神経症傾向、協調性、開放性を測定し、また0~10の自己評価による人生満足度も取得。性別、所得、年齢、教育水準などを統制し、パーソナリティ・幸福感との関係性を多角的に分析した。
3. 主な結果
外向性・誠実性の低下: 生涯独身者の外向性と誠実性スコアが有意に低い。一方で神経症傾向や協調性、開放性に関しては明確な差がみられず、結果が揺れた要素もあった。
人生満足度の低下: 生涯独身者は平均的に人生満足度がやや低く、特に高齢になるほどその差が顕在化。
個別要因のモデレーター効果: 高所得者・女性などにおいては差が縮まるなど、社会経済的要因や文化的要因によりパターンが異なる。
4. 考察と今後
研究者は大規模・多国的データに基づき、過度に一般化は避けつつも「生涯独身は潜在的に社会的・心理的ハードルを生み、特に高齢期における不利が人生満足度の低下につながる可能性がある」と指摘。加えて、パーソナリティ面の差異が存在するものの、因果関係や背景要因は明確になっていない。研究チームは、より長期的・多面的な縦断研究の必要性を強調し、独身者の多様性を踏まえた社会的支援策の検討が急務だとしている。
2.6. 1,600字要約
1. 研究の狙い
近年、欧米を中心に結婚や同居などの長期的パートナーシップを結ばないまま生涯を送る人が増えているが、彼らがどのようなパーソナリティ特性を持ち、幸福感がどのように変化するのかは比較的未知だった。こうした状況を踏まえ、本研究では大規模な国際的データを用いて「生涯独身(lifelong single)」と「一度でもパートナーがいた(ever-partnered)」集団を比較し、パーソナリティと人生満足度にどのような違いがあるかを明らかにすることを目的とした。
2. データセットと分析
SHARE(Survey of Health, Ageing, and Retirement in Europe)の約77,000人分データ。対象国は27か国の欧州諸国とイスラエル。
年齢は22~105歳で平均68歳。
「結婚歴がない」「同棲歴がない」「長期的交際歴がない」という条件のいずれか1つ以上を満たす者を生涯独身と定義。
パーソナリティはビッグファイブ(外向性、誠実性、神経症傾向、協調性、開放性)の短縮版で測定。
人生満足度は自己評価(0~10)。
性別、年齢、所得、教育レベル、国の特性などを制御するためにSpecification-curve analysesを適用。
3. 主な結果
外向性・誠実性・人生満足度
生涯独身者は外向性と誠実性が低い傾向が一貫してみられ、人生満足度も低下。
神経症傾向にはほぼ差が見られず、協調性や開放性は分析によって結果がまちまち。
年齢による差異の拡大
年齢が高くなるほど、人生満足度の差が大きくなる。高齢の生涯独身者は健康や経済的課題も重なり、満足度がより低いという仮説が支持される。
社会経済的・文化的要因
所得や国レベルの性別比率などにより、差異の大きさが変化。例えば高所得者では誠実性の差がやや小さくなる傾向。
宗教性が高い国や性別比が偏る国で、独身と交際経験ありの間に差が大きくなる可能性。
4. 解釈と限界
本研究は横断デザインであり、因果関係を断定できない。「独身であること」がパーソナリティを形作るのか、それとももともとのパーソナリティが独身を選択(または結果的にそうなる)させるのかは未解明。さらにビッグファイブの簡易版を用いているため、性格特性を深く掘り下げるには物足りない面もある。
5. 今後の展望
筆頭著者Julia Stern氏は、縦断研究を通じて生涯独身者のパーソナリティや幸福感がどのような過程で変化・形成されるのかを明らかにしたいと述べる。また、生涯独身が増える現代では、高齢期の健康と経済的支援が重要課題となるため、独身者向けの社会的ネットワークの拡充や、個々人のニーズに合った支援の必要性が高まるだろう。研究者はさらに、若年世代を含む多様なサンプルや長期追跡を駆使し、シングルライフにおけるメリットとデメリットを総合的に解明していく考えを示している。