1. はじめに
理由はいつか書くとして、私は語学が大好きです。定年後、10か国語をマスターしたいと思っていました。そんな時、昨年(2022年)暮れにチャットAI(生成系AIともいう)であるchatGPT3.5が登場し、語学学習をめぐる環境が大きく変わりました。チャットAIと対話を続けることで、定年後ではなく、早ければ今年度、10ヶ国語をマスターすることができるのではないかと期待しています。なぜ、私はそんな自信を持つことができたのでしょうか。その問いに、本記事で答えていきます。そして、「チャットAI(chatGPT)との対話のコツ10」を通して、AIによる「疑って学ぶ」語学学習法を提案します。
2. AIとの対話で必要な3つの力〜聴く、依頼する、疑う〜
「chatGPTに何をどう聞いたらよいかわからない」という声を聞きます。その理由の一つとして、これまでのコミュニケーションでは話し手が主役であることがあります。話す力が重要とされ、聴く力はそれほど重要とされませんでした。一方、chatGPTとの対話では、聴き手の役割が非常に重要になります。まず、聴き手に「(1)聴く」力がないと対話が続きません。chatGPTとの対話が続くと、聴き手は、特典として様々なことを「(2)依頼する」ことができます。ただし、気をつけなければならないのは、chatGPTは意識的なのか無意識なのかはわかりませんが、高い頻度で誤った情報を伝えます(よく嘘をつきます)。そこで、chatGPTとの対話では、聴き手は『話し手を「(3)疑う」力』を持ち、chatGPTが作った文章があっているか間違っているかを判断する必要があります。また、間違っているならどこが間違っているかを理解しなければなりません。以上から、chatGPTとの対話では、聴き手側は以下の3つの力が大切です。
3. 聴く
あなたが話し手で、言いたいことを聴き手にきちんと伝えたい場合、どのようなことに注意するでしょうか?このとき、英検1級の英作文での指示が参考になります。そこでは、テーマに対して、結論とその根拠と3つの例を書くように指示があります。このことから、話し手は、言いたいことの結論だけでなくその根拠と具体例を伝えると聴き手に伝わりやすいということがわかります。そこで、聴き手が話し手の言いたいことを理解するために、この話し手の手法を逆に利用します。話し手の言いたいことが理解できない場合、話し手に、言いたいことの「根拠(コツ①)」と「具体例(コツ③)」を聴くのです。また、そもそもの大前提として、テーマに関して話し手と聴き手でズレていると話が進まないので、聴き手は、対話中のキーワードの「定義(コツ①)」について最初に聴いておきます。
3.1. ①定義を聴く
chatGPTを初めて利用する場合、まず、知りたいことに関する定義を聴いてみましょう。
ここでいう「定義」とは、決まり事や約束事のようなものです。例えば、英語の「現在完了」が分からなければ、chatGPTに「英語の現在完了について教えてください。」と聞きます。
■AIへの質問例
■AIの回答
■質問のコツ1
3.2. ②根拠を聴く
誰もが、言いたいことや言わんとすることがあります。ただ、その言いたいことの結論だけを言っても、聴き手に理解してもらえないことがあります。例えば、子供に「勉強しなさい。」というだけでは、子供は話を聞かないかもしれません。そこで、言いたいことがある場合、その根拠を伝えることが大切です。聴き手の立場からは、相手の結論に対して、その根拠に耳を傾けるように意識します。
■AIへの質問例1
■AIの回答
■AIへの質問例2
■AIの回答
■質問のコツ2
3.3. ③具体例を聴く
言いたいことと言わんとすることやその根拠が抽象的であると聴き手は理解しづらいです。というのは、抽象度が高いほど、聴き手は具体的なイメージがしづらくなるからです。そこで、聴き手は、説明が抽象的すぎてわかりづらい場合、具体例を聴きます。もし1つの例でわからなかった場合、複数の例を聞くとよいです。
■AIへの質問例1
■AIの回答
■AIへの質問例2
■AIの回答
■質問のコツ3
3.4. まとめ
■AIへの質問のコツ1
■AIへの質問のコツ2
■AIへの質問のコツ3
■AIへの質問例(コツ①〜③利用)
■AIの回答
■AIへの質問例(②根拠を聴く)
■AIの回答
■AIへの質問例(①定義を聴く)
■AIの回答
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問例
■AIの回答
4.依頼する
夢や目標を叶えるため、アイデアを形にするために、chatGPTにサポートしてもらいましょう。例えば、英語を流暢に話したり、TOEICのスコアをあげることが目標であるとします。そのためにどうすればよいかをchatGPTに相談し支援してもらいます。まず、ここでは、セルフマネジメント(自己管理)のサポートをしてもらいます。chatGPTに管理について相談しましょう(コツ④)。次に、ビジネスの世界で「PDCAサイクルをまわせ」と言われるように、chatGPTから、Plan(計画する)、Do(実行する)、Check(検証する)、Act(アクションする)のアドバイスをもらいましょう。「企画や設計(コツ⑤)」、「作成(コツ⑥)」、「修正や改善(コツ⑦)」をchatGPTに依頼できます。また、例えば、ITの世界でサービスをリリースするとき、企画、設計、製造、テスト、の流れがありますが、これらもchatGPTに手伝ってもらうことが可能です。
4.1. ④管理してもらう
資格試験の計画を立てても、3日坊主になることがあります。それは、計画に問題があるかもしれません。そこで、chatGPTに計画を立ててもらいましょう。
■AIへの質問例4
■AIの回答例
■AIへの質問のコツ4
4.2. ⑤企画や設計をしてもらう
AIに企画や設計をしてもらいましょう。
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問のコツ5
4.3. ⑥作ってもらう
アイデアを形にするため、chatGPTに実際に作ってもらいましょう。
■AIへの質問例1
■AIの回答
■AIへの質問例2
■AIの回答
■AIへの質問例3
■AIの回答
■AIへの質問のコツ6
4.4. ⑦修正や改善をしてもらう
英作文を作成して気になるのは、その作文が正しいかどうかです。そこで、chatGPTに書いたものをレビューしてもらいましょう。誤りがあれば修正してもらいます。改善点があれば提案してもらいます。
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問のコツ7
5.疑う
年上や尊敬する人の言ったことについて、疑いなくスッと頭に入ってしまうことがあります。一方、chatGPTは嘘があることがわかっているので、chatGPTの言動を「疑う」ことがしやすいです。本記事では、疑うポイントとして3つ取り上げます。
先日、AIができることが増えると人間の仕事が減る、というニュースで、人々は「生産性」を向上する必要があると言っていました。例えば、AIとこの話題について対話するとき、大前提の「生産性」とは何か確認します。このように、chatGPTとの対話では、まず「前提(コツ⑧)」を確認しましょう。例えば、「生産性」について対話するときは、まず、chatGPTが「生産性」をどう捉えているかを確認します。次に、対話が論理的かどうかを疑います。例えば、論理が飛躍していないか(コツ⑨)、「女性はピンク色が好きだ」のように「すべての」女性なのか「ある」女性のことを言っているのか(コツ⑩)、などを確認します。
5.1. ⑧前提を疑う
「生産性」について対話するときは、chatGPTが前提として「生産性」をどう捉えているかを確認します。「無限」について対話したい時、例えば、数学者に聴く場合と哲学者に聴く場合で、視点が異なるので、最初に確認します。このように、AIとの対話では、前提を確認することが大切です。
■AIへの質問
■AIの回答
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問のコツ8
5.2. ⑨「ならば」を疑う
「人間は生物です。」と「生物は人間です。」が同じ意味だと思っている方がいますが、誤りです。もしかしたら、「○は△です。」が「○=△」だと思っているからかもしれません。「人間は生物です。」は「人間であるならば、生物です。」の意味です。なので、正しい主張です。一方、「生物は人間です。」は「生物ならば、人間です。」の意味なので、誤った主張です。
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問のコツ9
5.3. ⑩「すべて(all)」と「ある(some)」を疑う
日本人は、英語のように冠詞を意識しないからでしょうか、「すべての(all)」と「ある(some)」の区別が苦手なようです。実際、私が行った論理力を試すアンケートでは、得点が低かったです。
例えば、「アメリカ人は日本人より背が高い」という文章は正しいでしょうか?「すべてのアメリカ人はすべての日本人より背が高い」は誤りですし、「あるアメリカ人はある日本人より背が高い」は正しいです。AIとの対話でも「すべての(all)」と「ある(some)」を意識することが大切です。
■AIへの質問例
■AIの回答
■AIへの質問のコツ10
6. 英語学習法〜TOEIC対策〜
chatGPTを利用した、「疑って学ぶ」英語学習法の具体例を記載します。以下は、chatGPTとの対話の例です。初級編では、TOEICL&Rのスコアアップを題材としました。
6.1. ④管理してもらう
■AIへの質問例
■AIの回答
6.2. ①定義を聴く
TOEICで950点はどのようなものかを聴きます。
■AIの回答
6.3. ②根拠を聴く
■AIへの質問
■AIの回答
6.4. ③具体例を聴く
■AIの回答
6.5. ⑤企画や設計をしてもらう
■AIへの質問
■AIの回答
6.6. ⑥作ってもらう
■AIへの質問
■AIの回答
6.7. ⑦修正や改善をしてもらう
■AIへの質問例
■AIの回答
6.8. ⑥作ってもらう
■(1)AIへの質問
■(1)AIの回答
■(2)AIへの質問
■(2)AIの回答
■(3)AIへの質問
■(3)AIの回答
7. 学習するchatGPT
7.1. 学習前(東大数学の解答)
■AIへの質問
■AIの回答
■AIへの質問
■AIの回答
7.2. 学習後のAIの回答
■AIへの質問
■AIの回答
■AIへの質問
■AIの回答
7.3. 学習後のAIの回答(その2)
■AIへの質問
■AIの回答
8. おわりに
8.1. 疑って学ぶ語学学習法
chatGPTへの最初の質問は、「松田達哉について教えてください。」でした。なんと、chatGPTによると、私はSMAPの一員なのです!また、おすすめのレストランを聞くと、住所も名前も存在しないレストランを、あたかも存在するかのようにchatGPTは答えました。
このようなchatGPTの回答を読んだ時、私たちは、今後、chatGPTの嘘や誤りを見抜く力が大切だと感じました。これくらいの嘘であれば、正誤を判断できます。しかし、chatGPTの嘘が巧妙になると、正誤の判断が難しくなってくるだろうと感じたからです。
今回の記事では、「疑って学ぶ」語学学習法を提唱しました。これまでの詰込教育や、動画による一方通行教育、AIによる難易度の自動調整などの教育では、私たちは人や文章を疑うことに慣れていません。疑い学ぶことは最初時間がかかるかもしれないですが、chatGPTの正誤を判断することに役立ちますし、そもそも、ものを深く考えたり、脳を使うことに役立つと考えます。
■AIへの質問例
■AIの回答
8.2. 中級編
本記事は、初級編です。中級編では、1.菊池からはもちろん、2.依頼する力や3.疑う力をブラッシュアップします。例えば、初級編の疑う力では、「ならば」と「すべてとある」を扱いましたが、過度な一般化やゼロイチ思考などの論理について書く予定です。