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生成AI活用術〜出力形式を指定して精度を高める方法〜


1. はじめに

近年、生成AI(人工知能による文章生成技術)の急速な発展により、私たちの日常生活やビジネスの現場でAIを活用する機会が飛躍的に増えています。多くの人々がチャットボットや対話型AIに質問を投げかけ、文章の作成や情報の検索、さらにはクリエイティブなアイデアの提案まで、幅広いタスクをAIに依頼しています。

しかし、思い通りの結果を得るためには、AIへの効果的な指示、いわゆる「プロンプトエンジニアリング」が重要となります。AIは人間の意図を完全に理解することはできないため、指示の出し方ひとつで結果が大きく変わることがあります。

本記事では、生成AIへの指示のコツとして、「出力を与える」ことのメリットと、その具体的な方法について解説します。具体的な事例を通じて、AIとのコミュニケーションを最適化し、目的に合った結果を得るための手法を学んでいきましょう。

2. やりたいこと

英語学習や専門知識の深化、または特定のトピックについての理解を深めるために、自分が興味を持つ英語の記事から重要な単語を抽出し、単語集を作成したいと考えています。具体的には、記事内で頻出する単語や重要なキーワードをリストアップし、それぞれの発音、日本語訳、さらに詳しい説明を付け加えた単語集を作成することを目指します。これにより、記事の内容を深く理解し、関連する語彙力を向上させることができます。

3. やってみること

実際に生成AIに依頼してみて、どのような結果が得られるかを確認します。

3.1. 生成AIへの指示

以下のように生成AIに指示を出しました。

「以下の記事について、単語集を作ってください。
Elon Musk's Nazi Jokes Article

3.2. 生成AIからの回答

生成AIから以下の回答が得られました。

以下は、指定されたCNNの記事「Elon Musk defends sharing a meme that makes Nazi jokes」に関連する単語集です。記事の主要なトピックや語彙に基づいて選定しました。

単語集

  1. Meme
    意味: インターネット上で急速に広がる画像や動画、テキストなどのコンテンツ。
    例: "He shared a controversial meme on social media."

  2. Nazi
    意味: 第二次世界大戦中のドイツの極右政治運動を指す言葉。
    例: "The meme referenced Nazi imagery, which sparked backlash."

  3. Backlash
    意味: 特定の行動や出来事に対する激しい反発や批判。
    例: "The tweet received significant backlash from the public."

  4. Defend
    意味: 批判や攻撃に対して自己の立場や行動を擁護すること。
    例: "Elon Musk defended his decision to share the meme."

  5. Freedom of speech
    意味: 言論の自由。意見や表現を自由に行う権利。
    例: "Musk invoked freedom of speech in his defense."

  6. Antisemitism
    意味: ユダヤ人に対する偏見や差別、敵意。
    例: "There were accusations of antisemitism regarding the meme."

  7. Controversial
    意味: 物議を醸す、議論の的となること。
    例: "The meme was highly controversial due to its sensitive content."

  8. Criticism
    意味: 行動や意見に対する批判や非難。
    例: "Musk faced widespread criticism for sharing the meme."

  9. Platform
    意味: SNSやブログなど、発信のためのオンラインメディアやプラットフォーム。
    例: "The meme was shared on Musk’s social media platform."

  10. Responsibility
    意味: 社会的または倫理的に正しい行動を取る義務。
    例: "Some argue that Musk, as a public figure, has a responsibility to avoid sharing harmful content."

  11. Public figure
    意味: 公的な人物や広く知られている人物。
    例: "As a public figure, Musk’s actions are closely scrutinized."

  12. Misunderstanding
    意味: 誤解、意図が正しく理解されないこと。
    例: "Musk claimed that there was a misunderstanding about the meme’s intent."

  13. Satire
    意味: 社会的または政治的な問題に対する風刺、ユーモラスに批判するもの。
    例: "He suggested the meme was intended as satire, not as an endorsement of Nazi ideologies."

  14. Hate speech
    意味: 特定の個人や集団に対して、差別的または攻撃的な言葉を使うこと。
    例: "The meme raised concerns about promoting hate speech."

  15. Public apology
    意味: 公の場で謝罪すること。
    例: "Some called for Musk to issue a public apology."

この単語集を基に、記事の理解がさらに深まると思います。


3.3. 改善点

生成AIからの回答は、単語の英語表記のみをリストアップしたものでした。私が求めていたのは、各単語の発音や日本語訳、さらにはその単語の意味や記事内での文脈など、詳細な情報を含む単語集でした。しかし、生成AIはそれらの情報を提供してくれませんでした。

この結果から、私の指示が不十分であったことがわかります。具体的には、どのような形式で、どのような情報を含めて欲しいのかを明確に伝えていなかったため、生成AIは一般的な単語リストのみを提供したのです。期待する出力や詳細な要件を明示しなければ、AIはユーザーの意図を正確に汲み取ることが難しいのです。

4. 改善する

より良い結果を得るために、生成AIへの指示を改善します。

4.1. 生成AIへの指示

前回の指示では詳細が不足していたため、以下のように具体的な指示と出力形式を提供しました。


「記事内で使用頻度が高い単語の上位10個について、以下の出力形式(表形式)で教えてください。

  • カラム

    • 単語(英語)

    • 単語(発音)

    • 単語(日本語)

    • 説明

表はMarkdown形式で作成してください。

記事のURL: Elon Musk's Nazi Jokes Article


4.2. 生成AIからの回答

生成AIからは、以下のような詳細な単語集が提供されました。


以下は記事内で使用頻度が高い上位10個の単語とその詳細です。


5. もっと詳しく

生成AIをより効果的に活用するための指示方法について、具体的なアドバイスを3つご紹介します。

5.1. 役割を与える

生成AIに特定の役割や人物像を与えることで、回答の質や内容が大きく向上します。例えば、「あなたは英語教師です」「あなたは経験豊富な翻訳者です」といった役割を指定すると、AIはその役割に適した知識や語彙を使用し、回答を生成します。これは、AIが人間のように振る舞い、専門的な視点から情報を提供するのに役立ちます。

メリット:

  • 回答の専門性が高まる

  • 適切な文体や語彙を使用してくれる

具体例:

「あなたは英語を教えている教師です。学生が記事を理解できるように、重要な単語の単語集を作成してください。」

5.2. 文脈を与える

タスクの背景や目的、対象者などの文脈をAIに伝えることで、より的確な回答を得ることができます。文脈情報は、AIが何を求められているのかを深く理解し、適切な情報を提供するための重要な手がかりとなります。

メリット:

  • 回答が目的に合致しやすい

  • 不要な情報や的外れな回答を避けられる

具体例:

「英語学習中の高校生がこの記事を読む際に役立つように、重要な単語のリストを作成してください。各単語には発音記号、日本語訳、簡潔な説明を含めてください。」

5.3. マークダウン形式で指示を出す

マークダウン形式を利用して指示や期待する出力形式を明示することで、AIはその形式に沿った回答を提供しやすくなります。特に表やリストなど、構造化された情報を求める場合に有効です。

メリット:

  • 出力形式が明確になり、読みやすい

  • AIがフォーマットに従った回答を生成しやすい

具体例:

「以下のフォーマットで、記事内の重要な単語を表形式で示してください。表はマークダウン形式で作成してください。

| 単語(英語) | 単語(発音) | 単語(日本語) | 説明 |」

これらのポイントを組み合わせることで、生成AIからより精度の高い、目的に沿った回答を得ることが可能になります。

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6.1. 問題(Generative AI Test)

記述式)Zero-ShotプロンプトとFew-Shotプロンプトの違いを説明してください。

6.2. 解答と解説

解答:

Zero-Shotプロンプトとは、AIに対してタスクの具体的な例を一切与えずに、指示だけで回答を求める方法です。一方、Few-Shotプロンプトは、タスクの例をいくつか提示した上で、同様のタスクを実行させる方法です。

解説:

Zero-Shotプロンプトでは、AIは与えられた指示のみをもとにタスクを遂行します。これは、AIが既存の知識や一般的な文脈理解に基づいて回答を生成するため、新しいタスクや未知の問題に対して柔軟に対応できます。しかし、ユーザーの期待する出力形式や細かいニュアンスを理解しにくい場合もあります。

一方、Few-Shotプロンプトでは、ユーザーがタスクの具体的な例をいくつか提示します。これにより、AIはタスクの性質や期待される回答の形式、レベル感などをより正確に把握できます。結果として、回答の精度や一貫性が向上し、ユーザーの期待に沿った結果を得やすくなります。

例:

  • Zero-Shotプロンプトの例:

「以下の記事について、重要な単語の単語集を作成してください。」

  • Few-Shotプロンプトの例:

「以下のように、記事から重要な単語を抽出し、単語集を作成してください。

例:

| 単語(英語) | 単語(発音) | 単語(日本語) | 説明 |

[記事のURL]」

6.3. アドバイス

生成AIに指示を出す際に、期待する「出力」を具体的に示すことは非常に重要です。出力の形式や具体例を提供することで、AIはユーザーの意図をより正確に理解し、それに沿った回答を生成することができます。

出力を与えることのメリット:

  • 期待する形式での回答が得られる: フォーマットやスタイルを指定することで、AIはその形式に従った出力を提供します。

  • 解釈のズレを防ぐ: ユーザーとAIの間で期待する結果にズレが生じにくくなります。

  • 効率的なコミュニケーション: ユーザーは望む結果を得るために何度も指示を修正する必要が減ります。

具体例:

「以下の表形式で、記事内の重要な単語をリストアップしてください。

| 単語(英語) | 単語(発音) | 単語(日本語) | 説明 |

記事のURL:[リンク]」


まとめ

生成AIを効果的に活用するためには、AIへの指示が明確で具体的であることが重要です。役割や文脈、出力形式を明示することで、AIはユーザーの意図を正確に理解し、期待通りの結果を提供することができます。これらのポイントを押さえて、生成AIとのコミュニケーションをより円滑にし、目的に合った成果を上げましょう。

参考




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