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2023年の新年を迎えて

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

思い返せば学生時代にゼミの仲間たちとNPOを立ち上げて活動を始めて23年が経ちました。
最初は仲間たちと大学で学んでいるだけでなく実際の地域に役立てる意味がある(と当時は思いましたが、今思えば実感のある)ことがしたいと活動を始めましたが、その中で様々な人たちと出会う中で、自分の好きな人たち、仲間たち、まちに暮らす人が幸せであるために、社会の中で「『嫌だ』と思うことを無くしたい」というのが僕自身の原動力となりました。

残念なことに昨年(2022年)は
その「嫌だ」と特に思うことがいくつも起きました。

1月には岡山市内で辛い児童虐待事件がありました。
「なぜ、こうなってしまったのか?」を考える中で、こうしたことが今後起きないために何ができるのか。それを同じようにわがことと考える人たちと話し合いたいと、SNSで呼びかけをさせていただき、それに応えて集まってくださった子どもの支援に取り組むNPO・地域・専門職などの有志の方と集まり、それぞれができること・すべきことを話し合いました。
ここで出た意見はその後、KOTOMO基金の取組などの子ども支援に関する取り組みの中で実現すべきことと捉えて動いています。

2月にはロシアによるウクライナ侵攻が起きました。
ここ5年程、戦争に関する不安を個人的にもずっと感じていましたが、それが最悪の形で実際に起きてしまったと感じました。
一体この事態に何ができるのか。年の初めから大きな課題を突き付けられたと感じました。非力ながらできることは限られており、個人的には難民支援に動いてくださるNGOの皆さんへの寄付をし、岡山NPOセンターではウェブサイトでメッセージを出すと共に、NGO等の有志が行うメッセージ発信にも加わらせていただきました。
その後も情勢を伝えるニュースを見る中で、またこのニュースにも日常として慣れていってしまうことにぞっとしながら自問自答を繰り返すことしかできていません。

その後も様々な事件が起き、また災害もまた各地で起きました。

円安や交際情勢の変化、物価高騰などもKOTOMO基金や北長瀬コミュニティフリッジで微力ながら支援させていただいている方々の生活に大きな影を落としています。

そうした中で、より岡山で暮らしの豊かさを高まること、人と人とのつながりを強めることで、状況に対応していきたいと取り組んでまいりました。

岡山NPOセンターでは特に岡山交通さん損保ジャパンさんとの災害時における支援の協定、トヨタモビリティ基金さんが岡山国際サーキットで開催されたMobility for Allの現地支援では県内大学やプロジェクトへの参加チームであるOHKさんや、WAMの助成をいただいて実施した高校生・大学生との子どもの権利条約に関するウォーキングキャンペーン等などは新たな連携を実感するものでした。

また、一昨年から引き続き行っている山陽新聞社さん山陽新聞事業団さんとのKOTOMO基金では多くの寄付者の方に支えていただき、870件もの支援を支える事が出来ました。あらためて支え合いの力を感じています。

同じく北長瀬エリアマネジメントで取り組む「北長瀬コミュニティフリッジ」は寄付登録をくださる個人の方が1,100人を超え、企業・団体の寄付登録くださる組織も118社となりました。2021年度の寄付は市場価格換算で約4,800万円分となり、今日も毎日430世帯を超える方々を支えてくださっています。新聞やニュースで今、地域に起きていることを知り、子どもたちのために「何かしたい」と多くの方が行動くださっています。

一方、北長瀬駅前に建設中の新公園の指定管理者とPFI事業者の公募が行われ、大和リース株式会社さんとファジアーノ岡山さんとと共に北長瀬エリアマネジメントが選ばれました。来春に向けて、より市民が関わる・みんなの公園となるように、その場を最大限活用できるように準備しています。

地域の新しい資金の流れと企業連携としてPS瀬戸内株式会社で取り組んできた「おかやまケンコー大作戦」も本年度が評価の年となっています。年度内には出資者の皆さまに最終のご報告をさせていただく段となっております。

そして、地域のためのシンクタンクとして2012年12月に設立した「みんなの集落研究所」は無事に10期を迎えることができました。10年で9割以上の会社が倒産すると言われる中で、研究員・調査員の職員それぞれが地域と向き合ってきたことをご評価いただけたと感じています。


年が明けて本年。

あらためて考えておりますのは昨年に引き続きつながりや連携の強化を図る、それを足元と言いますか自身の組織やNPOというセクターにおいてもしっかり考えるということです。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、「エッセンシャルワーカー」という言葉が注目を集めました。今、この続くコロナ禍や物価高騰などが多くの人の生活や心理に影響を与え「孤独・孤立」ということが政府でも課題と捉えられる中で、NPO・NGOもエッセンシャルワーカーと呼ぶべき仕事になっていると感じています。しかしながら、僕自身が入職した18年前さらに言えばNPOという世界に飛び込んだ23年前に比べれば幾分かよくなったとはいえ、NPOやNGOで働く人たちの環境はよいとは言えません。
公共機関ではなく民間で、しかしながら社会的な仕事に取り組むNPOはどうしても収益が上げにくく経営が不安定になりがちで、職員数も少ない組織が多く、単体で働く環境改善やキャリア形成を支援するのは難しい状況です。これは一昨年からの僕自身の宿題ができていない(うまく進んでいない)状況ですが粘り強く改善に取り組んでいきたいと思います。

特には僕のマネジメント力不足により代表を務める法人の職員の皆さんにも負担をかけている部分の改善やそれぞれのキャリアデザインができる環境づくり・仕組みづくりに、代表を務める組織を越えて取り組んでいきたいと思っています。

そして「中間支援組織」と呼ばれる組織やその人材についての確立や育成も長年の宿題でしたが今年は一つアウトプットをと考えています。


「誰ひとり取り残さない」という言葉を少しずつでも真実にしていくためにこうした内輪とも言える部分にも取り組むと共に、より「当事者の声と行動」をどう支えるかという原点的な部分にも向き合っていきたいと考えています。

昨年末に高校生たちの声から「生理の貧困から当たり前を考える」というシンポジウムを開催しました。このシンポジウムのタイトルは発議者でもある高校生たちの議論を聞いて、僕自身が「女性の当たり前が社会の当たり前になっていない」また「それにしっかりと向き合っていなかった」ことを自身の意識として反省したことを反映して付けました。誰にもに起きる排泄という生理現象のためのトイレットペーパーは無料配布されることが当たり前なのに、同じく生理現象である生理用品は配布されていない。かつ民間の美容院や飲食店等のお店ではサービスとして設置されるのが当たり前でもあるのに。こうしたことがまだまだあることを先にも書きましたMobility for Allの支援をさせていただく中で、視覚や聴覚、身体の障害がある方とご一緒する中でも痛感しました。

これまでも岡山NPOセンターでも知り切れていない・聞ききれていない声を聴かせていただくために「よる会」という当事者の声を聴く会を開催してきましたが、あらためて今年は当事者課題となっている社会課題について、もっと様々な方と議論して解決策づくりや政策提言を行っていく、こうした基礎とも言える取り組みをさらに大切にしていきたいと思います。

そしてテクノロジーと課題解決の融和も、主語が入れ替わらないように注意しながら、しかし、その可能性は十分に発揮できるようにも取り組んでいきたいと考えています。特に災害支援分野の出の取組はこれまでも新たなソリューションの開発を重ねてきましたが、冷たい体育館の床に多くの方がすし詰めで長期間暮らさないといけないような災害支援は変えていきたい、と言うのも願いの一つです。

あらためて不幸の連鎖を生み出すような、暴力ですべてを解決するような世の中にしないためにも、一人ひとりの人の力を信じて繋がりづくりの結び目をどんどん増やすことに微力を尽くしていきたいと思います。

長くなりましたが、本年もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


追伸
写真は初詣後に子どもと遊んだ牛窓の砂浜です。

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