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小説家のネタバラシ🍀世界観の作り方①

これから不定期で、ちょっと僕の小説の書き方のネタバラシをしようと急に思い立ちました。
正直、偉そうできるほど有名でもないし、売れてる訳でもないのですが、少しでも参考になればと思い、僕がどうやって小説を紡いでいるかをこれから書いていこうと思います。

最初は何かと話題になる世界観ってどうやってつくるの? ってお話にしようかな?
どうやら世界観を作るのって結構ハードルが高いみたいで、苦しんでる人が多いと聞いたので、少しでもお手伝いできればと思った次第です。

■最初に基本のおさらい

世界観についてお話しを始める前に、まずは小説の書き方についてちょっとおさらいしてみましょう。

物語、あるいは小説の構成要素は大きく分類するとこんな感じになるはずです。
✅ キャラクター
✅ コンセプト
✅ テーマ、ないしはストーリー
✅ 世界観
✅ その他細部の設定など

このどれを優先するかは作家さん次第です。キャラを作ってからストーリーを作る人もいれば、テーマ優先でそれを伝えるのに必要なキャラクターを作る作家さんもいます。あるいは舞台(=世界観)を構築してからそこにフィットするキャラクターを配置する作家さんもいますね。
ちなみにライトノベルだと、やっぱりキャラ優先になる事が多いのかな?

僕の小説もある意味ライトノベルなので、コンセプト作りと主人公の人物造形から始まる事がほとんどです。そして世界観をじっくり練って、ストーリーは最後になります。
世界観は非常に重要です。これがブレブレだと話がブレます。仮にシリーズ展開する場合も、シリーズでの統一感を作るためには統一された世界観が必須要素となります。そういう意味でも世界観がちゃんと構築してあるとお話を作る上で便利なんです。

■わかった、わかった。で、世界観って何なの?

では世界観とはなんなのか?
世界観とは簡単に言えばストーリーの土台、物語を紡ぐ上で舞台の統一感を醸すために絶対に必要な部品です。
Wikipediaによれば

世界観(せかいかん、独: Weltanschauung)とは、世界を全体として意味づける見方・考え方のことである。人生観より広い範囲を包含する。単なる知的な理解にとどまらず、より情意的な評価を含むものである。情意的な面、主体的な契機が重要視される。

とあります。

まあ要するに世界観とはキャラクターと舞台と時代設定を繋げて矛盾しないようにするためのルールみたいなもの、と捉えればいいと思います。

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ところで天才タイプの小説家の場合、世界観なんて意識しないで書いているケースもあると思います。
これはどういうことかというと、小説家の中に何か統一したお話の舞台設定とか、時代設定とかが(意識していないにも関わらず)しっかりと存在するんだと思います。そういうタイプの人だと世界観の構築はあんまり意識していません。
世界観は作品の中で勝手に醸されてしまうんでしょう。
でも、僕を含めて普通の人はやっぱり世界観の構築は意識していた方が安全です。

■世界観と物語ってどう関係するの?

さて。世界観と物語は密接な関係にあるのですが、これが実は分かりにくい。実は世界観と物語には明確な切れ目がないのです。お互いが相互に関係して一つの大きな塊、小説になると思ってください。ですから、世界観はお話を作る過程で徐々に、だけど同時に構築されていきます。
これはおそらく、お話が作られる過程を追っていけばわかりやすいと思うので、僕の書き方を紹介しますね。

僕の場合、だいたいこんな順番でお話を作ります。
まず出発点はアクション物かそうでないかの選択、つまりはコンセプトの決定です。
「魔法で人は殺せない」の場合は「魔法xミステリー」というお題が最初からあったので、そこは比較的簡単でした。ある程度アクション要素やリリィ(メインヒロイン。ダベンポートのハウスメイド)との淡い恋愛や交流も取り入れつつ、でも基本は謎解きなので推理小説の体裁を取る。これが「魔法で人は殺せない」の基本コンセプトです。
作品のオリジナリティはコンセプトに現れます。「魔法で人は殺せない」の場合は「魔法は物理の法則に逆らえない」がキーワードですが、そういう感じでキーコンセプトを作っておくと後々楽です。

これに合わせて主人公のキャラクター造形を同時にやんわりと始めます。「魔法で人は殺せない」の主人公、ダベンポートが魔法院の捜査官であるという設定は比較的すぐに出来ました。でも魔法院の捜査官ってなんなのかという事はこの段階では深くは考えなかったかな? もっぱら名前が格好いいって事で仕事を決めてます。そうは言っても一応モデルはあって、魔法院の捜査官と決めた段階でウンベルト・エーコの「薔薇の名前」の主人公、バスカヴィルのウィリアムみたいなキャラクターにしたいなとは思いました。あと性格はいつも通り、ブラックジャックね。「人の心の持ち合わせが足りない捜査官」と言うキーフレーズもこの段階で作っています。

■じゃあ世界観を練り込もう

ここからがいわゆる世界観と呼ばれるものになります。
最初は時代設定。自明ではありますが、SFだった場合には未来、ファンタジーなら多くは過去、あるいは現代になります。
でも、これがどれくらい未来なのか、あるいは過去なのかはちゃんと細かく決めます。未来だったらそれが2100年なのかあるいは3000年なのかはたまたもう訳判らないくらい未来なのか、過去だったらそれは近世なのか中世なのか。考えなければならないことはたくさんあるはずです。

同時に良く考えておかなければならないのが地理設定です。日本なのか、架空世界なのか、あるいは欧米なのか? 架空世界だったらそこの文化はどうなっているのか? 文化的にはアジアっぽいのかヨーロッパっぽいのかあるいは北欧なのか?

これらはキャラクター造形にもコンセプトにも大きな影響があるので真面目に考えます。必要だったらリサーチもします。
「魔法で人は殺せない」の場合はヴィクトリア朝のイギリスっぽい架空世界を作りたいと思いました。この場合、ヴィクトリア朝のイギリスのことを徹底的に調べる必要があります。こういう調査においては多くの場合、インターネットでは不十分です。結局、僕はあの本のためにヴィクトリア朝の本(ほとんどはもう絶版なので大変でした)を30冊以上買いました。

果たしてここまでする必要があるの? って思う人もいるかも知れません。
でも僕の答えは「YES」です。
これは僕の本の講評に書いてあったのですが

荒唐無稽な話を面白くするコツは、現実の知識や技術をしっかりと描くこと

なのだそうです。
そしてこれはおそらく真実です。
これを読んだ時に、僕はなんか報われたなと思った同時に、「そうか、これがコツか」と気づきました。
神は細部に宿ります。同時にそこには矛盾があってはいけません。そこを十分に練り込めば、良い世界観は半分以上完成したも同然です。

……ところで、思ったよりも長くなってしまいました。まず今回はここまでで一度筆を置きますね。でも中身は書けているので、続きは②としてすぐにアップします。



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蒲生竜哉@『魔法で人は殺せない』著者🎈
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