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気道の細菌叢と喘息はどんな関係?

皆さんこんにちは。生命科学研究者のTatsuyaです。

腸内、皮膚に引き続き、今回は気道の細菌叢の働きをご紹介します。
前回は皮膚のアトピーと皮膚の細菌叢の変化の相互関係についての論文でしたが、今回は喘息と気道の細菌叢の変化という同じ慢性アレルギー疾患と細菌叢の相互関係についての論文です。
今回の論文は2019年のNature communicationsに掲載された"The upper-airway microbiota and loss of asthma control among asthmatic children"というアメリカの多施設研究グループの論文です。

概要

幼児期の気道の細菌叢は、その時期の喘息の悪化だけでなく、その後の症状にまで影響を及ぼすことはこれまで報告されてきました。
しかし、学童期以後の喘息のコントロールにどのような影響があるかについては報告はありませんでした。そこでこの研究では喘息がコントロールできている5歳から11歳の254人を対象に、平常時と喘息の悪化時の2回に分けて鼻腔内の細菌叢を採取して比較検討しました。その結果
1、5歳から7歳までと8歳から11歳までの期間で分けたときに若いグループではStaphylococcusが多く、喘息が悪化する危険性が高かった。
2、平常時の比較では、Corynebacterium + Dolosigranulumが多数の細菌叢の人では喘息の悪化するリスクが低かった。
3、喘息が悪化した時の比較では、Streptococcusが多数の細菌叢が増加すると悪化しやすかった。

ということを発見しました。
これらの事から筆者らは、
1、学童期においても上気道の細菌叢は喘息治療に影響を与えること。
2、細菌叢と喘息の関わりでは、喘息の症状がない時であってもCorynebacteriumなどの低下は、喘息発作の可能性を高めることや、喘息が悪化した際にはStreptococcusが増加していることを発見し、今後はそのメカニズムについても研究していきたい。
としています。

今日のポイント

さていかがでしたか?
喘息もアトピーと同様に、小児期に多いアレルギー性の疾患です。このような病気では、長期的に炎症が持続したりするため、それぞれ個人の免疫機能と細菌叢には密接な相互関係があります。なので、アトピー同様に喘息でも細菌叢の変化が病気の状態に深く関わってきていることは想像しやすいのではないでしょうか?

上気道の細菌叢

腸管、皮膚に続いて、気道(鼻から喉、さらには気管や肺まで)にも最近は常時存在しており、それを気道の細菌叢と呼びます。さらに詳しく見てみると、上気道には大きく分けて4つの細菌が住んでおり、それらのバランスがやはり喘息などの病気の状態と相関していました。(ディスバイオーシス)

年齢による変化

さらに今回明らかになったのは、幼児期、学童期の前半、後半と細菌叢の特徴が変化していると言う点でした。人は成長と共に免疫機能も学習していきますので、それに伴って細菌叢も大きく変化することはよく知られています。そんなダイナミックな変化の途中の年齢でも、喘息発作が起きにくかった子供達に多かった、Corynebacterium + Dolosigranulumの細菌叢は、気道における善玉菌的な多様性と言えるかもしれません。

最後に

気道の細菌叢の研究は、他の細菌叢と比較するとまだまだこれからです。今回初めて学童期の喘息の子供たちの細菌叢の特徴が報告されたので、今後は細菌が分泌する物質や、その効果について詳しい研究が進められるでしょう。こうやって早く喘息や、コロナウイルスなど普通の感染症にも応用される気道免疫の研究が盛り上がってくることを期待したいですね!

それでは今回はここまで。
ご質問、ご感想などありましたらお気軽にコメントしていただけると嬉しいです。それでは!



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