いつか自分たちの首を締める?「年齢=経験値」の縛り
転職活動を支援していて、気になるお見送り理由
こんにちは。ワーキングペアレンツ向けのハイクラス転職サービス"withwork"を運営するXTalent(株)代表取締役・上原です。
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ちょっと前にこんなツイートをしました。
年齢と経験値は「必ず」バランスするのか?
転職サービスを運営していて、よくあるお断り文句として聞くのが「ご年齢とご経験のバランスが……」というもの。
年齢とスキルのバランスは転職市場で重視されがちですが、ワーキングペアレンツの転職支援をしていても、よくぶつかる課題でもあります。確かに、ご年齢からイメージするスキル、というのは我々にもあります。
例えば「xx歳だったらマネジメント経験がほしい」とか「ちょっとチームの年齢構成と合わないな」というものです。
正直、自分も採用する側だった頃に全く気にしていなかったかというと、嘘になります。というか20代の自分はかなり気にしていて、今になって視野が狭かったな、と感じる面も多々あります。
そういった「目に見えないイメージ」というのは、自分の経験や見聞きした周囲の環境に、大いに振り回されてしまうものではないでしょうか。
僕自身、20代を労働に振り切った経験があり、そこで積めたスキル、得られた経験もあります。しかし、周りの人に勧められるものではないし、正直これからの時代には即していない、という気持ちを強くもっています。
いつか自分たちの首を締める?「年齢=経験値」の縛り
というのも、これから先、20〜30代をすべてキャリア形成に使えない人も増えてくるのではないか、と思うのです。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「労働者アンケート調査(平成30年度)」によれば、保育所等へ入所済みの人に、末子の保育所等への入所時期が希望に合っていたかという質問をしたところ、「あてはまる」と回答したのは、正社員の女性で67.2%、非正規社員の女性で68.2%でした。
こうした調査でも分かるように、希望した時期に保育園に入れず、職場復帰を延期したり、諦めざるを得ない人は少なくありませんでした。(この数年でだいぶ改善しましたが、保育園に入れずブランクが・・という方には沢山お会いします)
日本社会ではそのしわ寄せが女性側によりがちですが、これは育児に限った問題ではないと考えています。
内閣府男女共同参画局の調査によると
ダブルケアを行う者の男女計年齢階層別割合をみると、40~44 歳が最多の 27.1% 、次いで 35~39 歳の 25.8%、30~34 歳の16.4%、40~44 歳の12.5%と、30 歳~40歳代で全年齢層の約 8 割を占め、平均年齢は 39.7 歳となっている。
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/ikuji_3_suikei.pdf
と、働き盛りのアラフォー世代がダブルケア(育児と介護の両方)を担っているケースが最も多いと推計されています。
「育児」や自身の「ケガ・病気」とならぶ離職の要因としてあるのが「介護」。2025年には国民の4人に1人が75歳以上になり、後期高齢者人口は約2,200万人まで膨らむと言われています。数多くの高齢者を現役世代が支えていく必要が生じ、肉体的・時間的制約から休業やキャリアのペースダウンを迫られる人も増えてくるでしょう。
こうした数字を見ていると、育児や介護でキャリアから離れざるを得なくなる人が増え、「年齢」と「経験値」をイコールとした判断軸は、いつか本当に優秀な人材を獲得するための足かせになってしまうのでは?と思うようになりました。
既存のレールにとらわれず、その人自身を評価してもらうために
キャリアの道筋を一直線に進んでこられなかった人材に対し「xx歳になったらマネジメントくらいは経験していてほしい」という今までの価値観だけで判断すると「経験不足」と見えてしまい、お見送りの対象となるかもしれません。
が、履歴書や職務経歴書に現れてこない面、たとえば育児や介護で、また別の能力を身につけている可能性もあるのではないかと感じています。
忍耐力や見守る力といった「人間としての引き出し」だけでなく、スピーディな判断、情報収集能力、調整力など、仕事以外にも我々が直面し、乗り越えることで得られる能力はあると思うのです。
また、育児や介護、家族のケアを経験することで、当事者目線で社会課題に目を向けられるようになるということもあるかもしれません。
経営者としても、転職エージェントとしても思うのが、多様性に富み、様々な価値観が入り混じる「強い」組織を作るためには、いままでの画一的な評価基準での選考には限界があるのではないか、ということ。
我々が支援した事例でみると、こんなケースがありました。
・40代で3児のママ、ブランクを経てのキャリアチェンジ転職
・お子さんの障害のケアのため一時的に離職し、ブランクを経てスタートアップに転職した方
・経験を活かしスタートアップで働きたいが子どもの時間も大事にしたいと、週4時短で転職した方
こうした転職事例を目の当たりにし、年齢や経験、ブランク年数という数値だけで人を判断するのは、良い人材を逃してしまうことになりかねないと思うようになりました。
30代でマネジメント未経験でも、40代でキャリアにブランクがあっても、その期間、その人が何を考え、どんなことをしてきたのか。そしてそれはどのように社会や会社に貢献できるのか。
そういった「経験の密度」というものは履歴書に現れにくく、わかりやすい年齢というデジタルな指標に頼って判断してしまいがちです。
年齢と仕事での経験はイコールであるべき、という価値観はまだまだ強くあります。我々もその偏見を打破するための第一歩を踏み出したところですが、人には仕事以外を通じて得られる能力があり、経験にも密度がある、ということに気づけたのは、この事業を運営している上での大きな発見でした。
何を経験したか、ではなく、何ができるか
ある外資系企業で働かれている方から聞いて確かに、と思ったのが「日系企業は『どんな会社で何を経験したか』を聞くが、外資系企業は『今、何ができるか』を重視するよね」というお話でした。つまり転職歴が多かろうと、キャリアにブランクがあろうと、その人が「今できること」が、会社の求める人物像とマッチすれば、過去の経験よりも優先されるというのです。
これは非常に面白い話で、こういった考えが日本でまだ一般的ではない理由のひとつに、我々の中にある「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」があるのではないかと思います。
これはまさに「xx歳ならマネジメント経験をしているだろう」「40代でブランクありは活躍が難しいのでは」といった「年齢と仕事での経験値はイコールになる」というイメージにも影響しているでしょう。
そう思ってみると、いま我々が持っている「経験値」への価値観は、男性社会的な先入観にとらわれているのではないか?ということに思い至りました。
家庭を妻に任せ、夫は会社で収入を得る。
夫はキャリアを一直線にひた走り、ブランクはキャリアダウンを意味する。
長く一般的とされてきたこのスタイルは、今までマジョリティだったというだけで、それぞれの家庭や個人にとってベストかというと、そうではないかもしれないのです。
育児や介護、留学や学びなおしなどの理由で離職期間があったとしても、その期間で得た「経験の密度」に応じて、その人ができることというのは大きく変わっているはず。
会社の採用という大きな判断をするのに、何らかの指標は必要です。でもそれは「年齢=経験値」といった単純なものではなく、「経験の密度」を見ていく必要があるのではないでしょうか。
履歴書や経歴書では見えてこない、その人自身の強みを引き出して言語化し、良いマッチングを作っていくのが我々エージェントが存在する意義です。
まだまだ課題は山積みですし、我々自身も、自分の中にある「無意識の偏見」に日々気付かされるばかりです。とはいえ、気付けなかった時代に別れを告げ、「気付けていないかもしれない」という仮説をもって様々な視点を検証していくのが、これからの時代をつくるために必要な思考回路なのかもしれません。
ニューノーマルな時代をつくるべく、柔軟な会社組織を目指す企業との良いマッチングを作ることで、社会を少しでもよりよいものにしていければと思っています。
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