【La Petite Mort】
確か、開高健のエッセイで知ったと思うんだけど、情事のあとのまどろみのことを、フランス語で「小さな死」と言うらしいんだけどね。
まぁ、長いこと情事自体を経験してない=「小さな死」からも縁遠い毎日なんだけど、昨夜、別の意味の「小さな死」を経験したので、備忘録的に。
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経緯は不明なのだが、高校の通学路だった箕面は牧落の住宅街を、右腕につけた扇風機のようなドローンを操り低空飛行で散策するワシ。白雪姫の小人たちが階段に飾られている洋館の先を右折すると(現実には存在しない)小川が流れている。
すると急にドローンが不調になり、川を渡った先の公園に不時着。
公園にいたバーベキュー客達がわらわらと物珍しげにワシの周りに集まってきたので、慌ててドローンの操作パネルの赤いボタンを押すと、右腕を引っ張られるように急上昇し、何故かテーマパーク風の施設へ飛ばされる。
その施設でのワシは、スプラッシュマウンテンのような急坂を使ったサーフボードのフライングUターンアトラクションのサポート役で、湖面に浮かんだカヌーの船底に寝そべって、飛来するサーフボードを観察する役目のようだ。
滝のような急坂を滑り降り、ジャンプ台から飛びだしたサーフボードが、ワシの乗ったカヌーのエッジに付いたスロープに一旦着地し、そのスロープを利用してUターン後、再度スタート地点に向かって飛んでいくといったアトラクションなのだが、ボードが着地する度にカヌーがゴトン!っと激しく揺れ、船底には水が入ってくる。こんな仕事に何の意味があるのかさっぱりわからないまま、ひたすらサーフボードを観察する。
客から見えないように寝そべってるワシの半分ほどまで水が溜まったあたりでその日の仕事は終わったようで、他のクルーと一緒にカヌーを片付け、ワシは湖面の先の欄干から小道へ上がる。どうも季節は夏の夕暮れっぽい雰囲気だ。
(この辺りで不意にナレーションがはいる)
「この時彼は、舟に乗るのはまだ少し早すぎた事を知る」
...なんだ、そりゃ? っと思いながら、着替える為に、スプラッシュマウンテンの麓にあるスタッフ用のロッジへと向かって小道を歩いていると、湖のほとりに真っ黒なウエットスーツを着た女性がずぶ濡れで倒れている。どこかで会った気がするが、頭までスーツを被っていて名前を思い出せずモヤモヤ。
その女性が、ワシに向かい、
「ごめんね、私、あなたのトレーニングプログラムの内容を間違えてたみたいだわ」
と謎の言葉を発する。
その瞬間、ワシの視界は急激に狭くなり、強烈な寒気で立っているのも難しく、堪らずその場にうずくまる。振り返ると、カヌーの片付けを終えた同僚3人が談笑しながら歩いてきてるのが遠くに見えるが、ワシの異変には気付いてない様子。
「ヘルプ」
何故かワシは英語でそう叫ぶが、囁くような声しか出ない。異変を察知したのか、ロッジから医療用と思われる白衣のアンドロイドがやって来て、ワシを介抱するも、生憎、即効の頓服薬は持っていないとしか言わない。
「助けてあげて」
ウエットスーツの女性がアンドロイドにそう言うが、アンドロイドはただ首を振るばかり。意識はますます遠くなり、胸のあたりも重苦しいのだけど、不思議と気持ちが穏やかになってきて、もうこのままでエエかって気分になってきたのだが、気力を振り絞って
「No!」
と叫んだところで目が覚めた。
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目覚めた時の状態:
汗もかいておらず、寒気もないが、目覚めた後にだんだん過呼吸気味になり、最後はゼイゼイと呼吸が荒くなって来たので、ひょっとするといわゆる無呼吸に陥ってただけなのかも。
が、意識がはっきりするにつれ怖さが増してきたので、呼吸が落ち着いた頃を見計らい、枕元のiPhoneを手に取ると時刻は3:05だった。
台所に行き、カップに残ってたコーヒーを飲み干し、寒さに震えながらベランダでタバコを1本喫う。
死にかける夢を見るのは久しぶりだけど、いずれも目覚める直前は結構気持ちがいいので、次見る時もまた「No!」と思うかは自信がないなぁ。
「あんた、なんか昨日の夜中、うなされてたな」
朝飯を食いながら妻がそう聞くので、「死ぬ夢を見たわ」と笑いながら答えたんだけど、ピンピンコロリって、きっとこんな感じなんだろうなぁ。
けどまぁ、どうせならワシは「La Petite Mort」のほうがイイかな(笑)