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面白い人たちと,INCLINE
INCLINE(インクライン)は,面白い人を集め,面白い人を育て,面白い清荒神というマチをつくる場所,複合施設です.
僕の住む清荒神の衰退していく商店街(参拝道)で,たくさんの人が集い、この場で何かをチャレンジし,人と人を繋いでいます.
駅と清荒神清澄寺というお寺をつなぐ道の中腹に位置し,その参道に面した3階建ての建物です.
1階/レンタルスペース
ギャラリー展示,映画上映会,POP UP 飲食店など,様々な使い方ができ,何かを実現したい人がチャレンジできる場です.
2階/シェアアトリエ(オフィス)
事務作業や多様な製作活動を行う,月額制のシェアスペース
住宅地の広がる地域で自身で仕事を受ける人が集い仕事を共有したり,お互いにサポートし合える環境です.
3階/プライベートハウス
愛され力のあるオーナーが自ら住みイベントがあるときは全力でサポート,人を招き,受け入れ,許容してくれます.
面白い人が集まり,面白いことが起こる.楽しさが地域へ,遠くの友だち同士に、伝播していく.そんな場所です.
とても不思議な施設なので順を追って説明していきます.
INCLINEのオーナーは自費で購入した
”愛ある大家”
建物のオーナーである,通称チャン(あだ名であり日本人です)は,マチをより良くしたい,楽しくしたい,面白い場所をつくりたい.そう思って市役所に就職した公務員さんです.
外大卒業後,別の大学で建築技術を学び直すという異色の経歴を持ち,在学中に”場をつくること”に興味を持ち,デザインやまちづくりのワークショプに参加する中で,目指すべき魅力的な先輩との出会いをきっかけに公務員の道を選びました.
しかし現実は難しく,公務員の立場で企画を立ち上げることは想像以上に大変で,与えられた日々の業務をこなすことだけでも精神がすり減る仕事でした.(本人談)
そんな毎日の中で,自分の想いを実現し自分自身が楽しいと思える場づくりに関われることは何か,マチを魅力的に更新するためにできることを考え続けて思いついた結論は…
「大家になって場を持ち、面白い人につかってもらう」
ということでした.
物件を探し,自費を投じて購入し,たくさんの人とシェアできるよう
リノベーションをしたのがINCLINEのはじまりです.
まさしく”愛ある大家”です.
⇧大家の学校 青木純さんの言葉
チャンは,とてもノリが良くて楽しむことが上手.
自分で企画することより,面白い人の企画を全力で楽しみ,たいていのことを許容してくれます.サポートすることが得意な人です.
そして誰からも愛される人柄.
物件購入前に,このINCLINEの企画を話し合ったとき.この人が場を持つことは,すごい可能性を生むなと感じました.
清荒神は,もともとは観光地
これからは住んで楽しい,遊びにきて面白い
ハイブリットなマチになる
宝塚市にある清荒神(きよしこうじん)
宝塚は昔,温泉街,遊園地,歌劇団,映画撮影所(東宝)で栄え
阪急電車の華やかな終着でした.
清荒神は,宝塚から1駅大阪寄りの裏の観光スポットとして賑わい
かまどの神さま,清荒神清澄寺(三宝真言宗)の参拝道には多数の飲食店,お土産物屋さん,宿泊施設などが立ち並んでいました.
清荒神清澄寺を有する中山連山(長尾山)は,もともと北摂地域の里山(燃料にする薪を拾ったりする場所)であったことから,関西の広範囲の人々にかまどの神さまとして愛され信仰されていました.平成前半までは、年末年始だけでなく,かなりの参拝人口がありました.
時代は変化し,若い世代の信仰も薄れてきて,清荒神は郊外住宅地としての役割に偏っていきました.
参拝者も,参道商店街の店々も高齢化が進み,レトロで雰囲気のある参道は,無機質で趣もなにもない住宅地になりつつあります.
その状況にもったいなさを感じ,僕自身をはじめとして5年ほど前から,
「ただの住宅地よりも、住んで楽しい心地いいマチがいい」
という共感の渦が広がってきました.
シチニア食堂
もののひ市
リュックサックマーケット
宝塚音楽回廊
kalehair
casimasi
Beforedark
KIKILUAK
Coffee stand Wily
uhhwee
トコテコ紙芝居小屋
「このマチをもっと楽しくするために,自分がお店をはじめる」
「清荒神でしっかりといいものをつくり,発信する」
という想いを持った仲間ばかりです.
他にも空き地でイベント出店があったり,クリエイターやデザイナー,自分で何かをはじめようとする人が少しづつ住みはじめています.
もちろんレトロで心地いい雰囲気を守ってこられた,昔ながらのお店たちも,時代に合わせてバージョンアップしています.その方々にも尊敬を払いつつ.
かまどの神さまの観光のマチは,
”食や暮らしにまつわる、楽しみがあふれるマチ” に,
進化しつつあります.
INCLINEを設計,というよりみんなで企画
「マチを面白く,自分自身が楽しく暮らすための場所を持ちたい」
というチャンの意思をきっかけに,このプロジェクトがはじまりました.KIKILUAKがオープンした2018年の後半のことでした.
それからは,共同プロジェクトのように共に物件を探し,融資を受け,どんな場所にするか企画を考えました.
「清荒神にもっと店が増えるようなきっかけの場所をつくりたい」
「自分の家がいつも楽しい場所でありたい」
緩やかな想いを具体的な形するために.
企画をふくらませるために,内装を解体しただけの状態で「現場BAR」を開催し,夜な夜な仲間と語り合いました.
設計というより,いろんな人を巻き込み,相談しながら建物の構想を練り上げていきました.
この現場BARで,グラフィックデザイナーの平野新とディスカッションし
INCLINEという名前ができました,
⇧INCLINEロゴ
英語で「傾ける/人の気持をこちらに向ける」の意
坂のマチ,傾斜地に建っていること,駅遠いなど不利な立地ながら,想いを持ってたくさんの人にこの場所に来てもらう.清荒神に興味を持ってもらう人を増やすという意味を込めた名前です.
シェアをする場所は,
施工もたくさんの人とシェアしながら
3階プライベートルームは主に業者さんに依頼しましたが,
1階・2階のシェアする部分は,々(noma)の野崎将太と共同で施工を進め,現場を常にオープンにしてワークショップ形式のように施工することで,地域の人や,SNS上の友人知人の手を借り認知してもらい,建物が出来上がる過程を共有することに徹しました.
⇧いろんな人の手を借りて施工する様子
⇧完成してないのに施工そっちのけで流しそうめんをする様子
⇧施工途中の状態でトークイベント開催する様子
長い施工期間を経て完成を迎えるころには,たくさんの方に「あのINCLINE!」と言ってもらえるようになっていました.
2019年10月の竣工パーティは,KENT FUNAYAMA さんにLIVEを行ってもらい,施工を手伝ってくれた bar inspire の上村一暁くんの出張BAR,料理家西浦ともみさんの豪華なケータリングもあり盛りだくさん,総勢100人くらいの人が集まりました.
竣工後は,僕が2階シェアアトリエ入居し,オーナーのチャンと提携し奥田達郎建築舎がINCLINEの運営を行っており,いろんな方に借りて使ってもらえる状態をつくっています.
生き方の多様性を感じれる場所に
宝塚市は,市長が性的マイノリティ(LGBTQ)を受け入れますと宣言されていたり,就職氷河期世代の雇用をしたり,社会的弱者を受け入れる姿勢をとっておりその点はとてもいいことだと感じています.
ですが、実際のところ地域の商業がほとんどない郊外住宅地なので,いわゆる一般的なサラリーマン世帯が多く土地的に多様性を感じにくい環境だと思います,
僕らはいろんな生き方があっていいと思いますし,普通ってなんなの?違う価値観の人と対話したり,コラボレーションすることで自分の価値観が広がっていくことを実感しています.子供たちにとっても,多様な生き方,多様な社会があることを地域で感じられるようにしたいです.
いろんな生き方の人が集まり,交流することを目指しています.
「一般的じゃないけどこんなことやってみたい!」「こんな活動してみたい!」って方にこの場所を使ってほしいです.
竣工後のINCLINEと1周年を迎えて
POP UPカフェ,BAR,飲食店営業や映画上映会,マチを考えるワークショップ,アートギャラリーイベントなど,数々のイベントが行われ,シェアアトリエで働く人,製作作業する人も増え,アトリエのシェアメイトの間で新しい価値感や仕事が生まれつつあります.
⇧INCLINE CAFE STYLE (POP UP CAFE)
⇧「SEED」映画上映会同時開催、オーガニックマルシェ
⇧SAD PARK WANTS YOU!! ワークショップ
オープンして間もなくのコロナ禍で厳しいこともありましたが,今後は間違いなく,清荒神のランドマークになる場所だと思っています.
一周年に際してカタチラボの田中さんに,新しいコピーを考えてもらいました,それがこちらです.
新しいキャッチコピー
面白い人たちと、INCLINE。
INCLINEは、面白い人が集まり、面白い人を育てて、面白い清荒神をつくる場所です。
面白い人たちが今の時代に必要なものを提供し、新たなシーンを生むということ。
INCLINEに行けば、自分を刺激するものやことと出会えるということ。
清荒神と言えばINCLINE、INCLINEと言えば清荒神となる新たな名物に。
おいしい料理をつくる人、デザインをする人、建築をする人、パフォーマンスをする人、
音楽をする人、ものづくりをする人、新たな価値を届ける人など
面白い人たちは清荒神から発信される新たな名産です。
駅から清荒神清澄寺へ行く坂を上がり、ちょうどその真ん中にあるINCLINE。
誰かにとっては通過ポイント、誰かにとっては休憩所、
誰かにとっては日常のルートであるように。
INCLINEを使うことによって,魅力的な人が生まれるような.
個人にとっても,マチにとっても,きっかけの場所になってゆきます.これからもINCLINEをお見逃しなく.
【企 画】チャン、奥田達郎建築舎/設計事務所、tateitotoyokoito/岩田健
【運 営】奥田達郎建築舎/設計事務所
【施 工】々(noma)野崎将太、上村一暁、ダイエンテック小仁鏡智、奥田達郎建築舎、seule et unique、ワークショップ参加のみなさま
【グラフィック&ネーミング】typoesie™/平野新
【コピー】かたちラボ/田中裕一