ラインアウトの鍵を握る ”トリガー”
2021年9月&10月に日本ラグビー協会のTIDユースキャンプ、BIGMAN & FASTMAN キャンプにFWコーチとしてオンラインでラインアウトの話を行いました。
講義後に選手から貰った質問に回答していく企画で最近いくつか記事を書いていますが、講義中の選手の反応、講義後の質問を見ると、もう少し整理して書いた方が良いなと思った部分があったので、今回は「ラインアウトの鍵を握る”トリガー”の話」です。
1.講義で話した内容
今回のキャンプでは「最高のラインアウト」というテーマで2回の講義を行いました。
第1回は、「最高」=最も高い という趣旨で、ジャンプ&リフトの部分にフォーカスして、基本的なスキルの話をしました。
第2回は、「最高」=ベスト という意味で、ベストに近づけるためにラインアウトの構成要素、時系列で紹介しながら選手たちと話をする機会を増やして行いました。
2.ラインアウトの鍵を握る「トリガー」の話
第2回の講義の中で、「覚えて帰って欲しいポイント」としてプレー動画を使いながらトリガーの話をしました。(Zoomなので確実に見れたのかわからないのが不安な所です・・・。)
しかし、今回はnoteなので動画を使わずに文章で表現する事になるので、微妙なタイミングの話が伝わるのか?と言う懸念はありますが、主に参加した選手への補足の意味合いなのでこのまま書いていきます。
ます「トリガー」とは、英語そのままの意味で「引き金」です。
多分、多くのチームで使われている言葉ですが、ラインアウトにおける「すべての動作のきっかけ」と言う意味となります。
例えば、ストレートボールでスローワーが投げてからジャンパー、リフターが動くならトリガーはスローワーとなります。
トリガーという言葉を使う時にストレートボールのオプションを使う時に「フッカートリガー」と言っている事で、「フッカーが投げ始める動きの事をそういうのかな?」と誤解をしている選手もいるようですが、「すべての動作のきっかけ」の事なので覚えておいてください。
3.なぜトリガーが必要か?
ラインアウトの獲得率を上げるためには、
常に同じ絵を作り全員が決められた通りに動くこと
が重要になってきます。
トリガーが決まっていることで「このサインの時はこの動き出しでどこで跳ぶ」という事がわかり、各自が正確な動きができるようになります。
というか、むしろトリガーが決まっていないと行先はわかっているけど、それぞれいつ動いたらいいのか?どのタイミングで投げればいいのか?がわからないので成功するのはかなり難しいのではないかと思います。
チームとしてトリガーが決まっていないのに「問題なく成功している」と自信をもって言える人は教えてもらいたいです。
4.トリガーは誰にするのがいいのか?
基本的にストレートボールはスローワーがトリガーの事が多いです。
多くの場合、ストレートボールは、DFも各ジャンパーの目の前にいるので、スローワーがトリガーでジャンパーがボールに合わせて飛び上がる事ににより、どこで跳ぶかわからないという状態を目指す必要があります。
下記動画でわかりやすく説明をしてくれているので、参考にしてみて下さい。(跳ぶ場所によってストレートボールでもフッカートリガーではない方が良い場合もありますが、それについても触れられています)
もちろん、全てストレートボールではなくダミーを入れるなど動いてから獲得する時もあります。
その際に、「誰をトリガーにするのか?」を決める判断基準は大きくは下記3つのポイントです。
◆トリガーを決める3ポイント
・適切なタイミングで跳べる事 = 誰かがジャンプする場所で待たない
・他の動きと裏/表の関係となっている = 同じ動き出しで違うムーブになる(「ラインアウトムーブの視点」参照)
・シンプル = できるだけわかりやすく(サイン毎に全て変えない)
以上がクリアになるように決めるとスムーズな流れで獲得できるようになっていきます。
5.トリガーがずれると起こる問題は?
続いて、実際にトリガーがずれるとどんな問題が発生するか書いていきます。
試合で「ミス」という事実が見えるのは大きくは下記2つの状況だと思います。
①DFにターンオーバーされる
②オーバーボール
この原因として「サインムーブの動きが悪い」とか「スローイングの精度が・・・」となりがちです。
しかし、トリガーが正しく設定&実行できていないからミスが発生していると言う事も考えられます。
正しいタイミングで跳んでいたらorボールが来ていれば実はミスしていなかったかもしれません。
(スキル不足のミスも当然あります)
こちらは講義ではクボタスピアーズの練習で実際に起こった映像を動画と静止画を使用して解説しました。
シンプルに言うと、トリガーがズレるとどこかでボールorジャンパーorリフターを待つ空白の時間が生まれます。
その間にDFに動かれてしまい獲得できないと言う事になります。
高校生で多いのが、⬆️の絵のように先に上がってしまってボールを持っている状況です。
理想は「最高到達地点についた瞬間にボールがピッタリくる」です。
高校生は一瞬で成長できるので、もう一度「トリガーはこれで良いのか?」「全員が共有できているか?」を確認してみてはいかがでしょうか?
思ったよりすぐ成功率は上がります。
6.トリガーを意識する簡単な練習方法
とりあえず最初はスローワートリガーの練習でしょうか。
下記のようにリフター(L)、ジャンパー(J)が4人並び、全員がスローワーを見れる体勢になります。(真横を向いても良いし、斜め45度でも良いです。
赤か青か決めておいてスローワーのスローに合わせて動きます。
最高点でピッタリ取れるタイミング、前後の距離感を模索して下さい。(前後の距離感が広い方がDFはしづらいけど、リフトの難易度も上がる)
注意点としては、スローワートリガーで間に合うのは赤の10mくらい〜15mの間くらいです。
前のボールでそれをやると間に合わないことが多いです。
チーム・選手の状況に寄って許容範囲は多少変わるので個別に調整してください。
それができたら次はDFをつけておこないます。
プレッシャー下で同じようにできるのか?
どんなテンポでやると獲得しやすいのか?
身体の向き、目線はどうする?
跳ぶまでの足の運びは適切かな?
等、相手がいるからこそ気付く事があります。
またついでにミラーDFの練習にもなるので、
どこに立てばプレッシャーを感じるのか?
何を見ればスティールしやすいのか?
なども勉強になると思います。
7.まとめ
ラインアウトも積み重ねです。
トップレベルの選手も短い時間ですがほぼ毎日シンプルな練習を行っています。(内容は変えたりするけどね)
1日に詰め込みすぎず、コツコツやっていきましょう
以上です。
とりあえず今回でBIGMANからの質問シリーズは終わりです。
次回のキャンプに参加できて、そこでまた何かあれば書きたいと思います。
ありがとうございました。