医療行為か否かの判断が曖昧になっている
こんにちは!
今日も僕のnoteへようこそ!
これまで「美容医療の適切な実施に関する検討会」の様子についてお伝えしてきました。
検討会の内容はウェブで公開されているので、
興味のある方はぜひ読んでみてください。
さて、今日は第1回検討会のなかで話題になった
“医療行為か否かの曖昧性”について、お話ししたいと思います。
■エステでの脱毛は医療行為?
永久脱毛は医療行為であり、
エステで永久脱毛はできないことは
みなさん、ご存知だと思います。
しかし、「永久脱毛」と謳ってはいないものの、
エステでは、実質「永久脱毛」になっている施術が
多くなされているのが事実です。
では、そのエステでの施術は医療行為に当たるのか?
といったら、その判断は曖昧です。
■自分たちの都合がよいように解釈できてしまう問題
医療行為か否か。
その線引きが難しいのは、法律やガイドラインでは、
自分たちの都合がよいように
“解釈できてしまう”ところにあるように思います。
例えば、ある施術に対して、
行政がエステにとって有利な見解を出したとしましょう。
その見解がすべての施術に当てはまらなくても、
それを聞いたエステの人たちは、
「やってもいいんだ」「医療行為じゃないんだ」と
自分たちに都合よく解釈してしまい、 どんどんやり始めてしまう。
裁判も同じで、自分たちにとって有利な判例がひとつできれば、
「この判例があるから」と、
自分たちの都合の良い方向に流れてしまいます。
このように、
法律やガイドラインで明確な判断基準がなく、
あらゆる解釈ができてしまう曖昧さからくる問題は
次はアートメイクに飛び火するのではないかと僕は予測しています。
■オンライン診療の解禁
クリニックへ足を運ばずとも、
パソコンやスマートフォンなどで手軽に受診できる、オンライン診療。
診療だけでなく、薬の処方も可能です。
オンライン診療の初診診察は、 2020年4月から一時的に解禁になり、
その後、2022年の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」改定で
正式に“初診から”の受診が可能になりました。
初診からオンライン診療を受ける場合、
かかりつけ医による実施やリアルタイムのやり取りなどの条件があります。
しかし、そのチェック機能はありません。
そのため、医師が患者さんに会っていないのに、
点滴やGLP-1の処方、アートメイクの施術などが行われてしまうことが実際にあるのです。
特にオンライン診療の規制は
法律というよりも、指針レベルになるので、
遵守できているかの判断はグレーゾーンになります。
■保健所もどうしたらいいか分からない
ナースがアートメイクや点滴をするために患者の個人宅に出向くのは、
現状として、規定を満たしている訪問看護ステーションからの訪問看護のみです。
医療機関を受診するのが困難な方や認知症、寝たきりの方、 緩和ケアが必要な方などであれば、許されています。
では、患者さんはすべて寝たきりか?といったらそうとは限りません。
実際は寝たきりではないし、
医療機関を受けるのが困難ではない人に対して、
点滴やメイクを施しているケースはあるのです。
これについても、
サービス提供側が拡大解釈している懸念があり、完全にアウトではないグレーゾーンでうまい具合にやっているのだと思います。
実際、日本医療アートメイク財団に、
ある企業から、
“アートメイクのクリニックで自分はオンラインでカウンセリングだけして、看護師を出張させたいけど、それは違法ですか?“
といった問い合わせがあります。
このようなグレーゾーンに対して取り締まるのは保健所です。
しかしながら、違法性はないので、
保健所もどうしたらよいかわからず、
結局指導しかできないのが現状ではないでしょうか。
■学会に入っていなければレギュレーションが効かない
グレーゾーンに関する対策は厚労省の課題ですし、
曖昧な部分はある程度クリアにしていかないと、
グレーな部分で躍進してしまうかもしれません。
クリニックの場合、医師法や医療法などの法律によって、
さまざまな規制がされていますが、
医療行為を行っていくにあたって、医療規範のようなものが医療人と企業人では異なることが多々あります。
最近増えているのが、一般社団法人のクリニック運営です。
法人が運営しているため、医者でない人が取り仕切っており、
そういうところは、JSAS、JSAPSの会員になっていないことが多いので、
学会としてのレギュレーションが効きません。
学会に入るメリットとしては、
医療を学び、自分たちのスキルを上げていくことや医療の向上を目指すこと、あるいはそこで発表することによって
自分自身のステータスを上げていくといった点が挙げられます。
しかし、ビジネス主体の場合、
最低限の技術と知識を持ち、それ以上に向上心がなければ、
年会費を払って、わざわざ企業が学会に所属する必要性はあまりないですよね。
■がんじがらめは良くないがルールは必要
僕も、検討会で報告するために、
周囲にいろいろとヒアリングをしているのですが、
実に、次々といろいろなことが出てきます。
例えば、大きなグループのクリニックが、
ぼったくりのようなことをやっていて、
そこを辞めて独立した医師がその手法を真似ていたり、
さらに輪をかけてひどいやり方をしていたりします。
こうした悪徳の対策として、
JSASの会員にはモラルについて周知し、
もし、無視して明らかによくない行意をしている場合、
会員はく奪の手もあるでしょう。
でも、その人が会員であることにメリットを感じていなかければ、
そんなことは痛くもかゆくもないかもしれませんよね。
法律であらゆることをがんじがらめにするのは反対ですし、
現場としても、やりにくくなってしまいますが、
医師法、医療法のように
これは駄目でしょうと明確に言えるルールはしっかり守らせないといけません。
美容医療業界では、施術だけでなく、
契約関係の問題も多く、
消費者契約法、特定商取引法および景品表示法など、
医療以外でも適応とされるルールも含めて、
しっかりと監視していかないといけない。
このままでは本当に日本の美容医療が沈んで行きかねないと、
危惧しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
検討会のなかで、美容医療でトラブルが発生したとき、
アフターフォローができておらず、
保険医療に頼らざる得ない状況になっている点について問題があるという話がありました。
つまり、トラブルについては、美容医療(自由診療)の範囲で対応するべき部分を、なぜ一般医療で診なければいけないのか?ということです。
実はこれと同様の意見が、昨年の日本形成外科学会で出たことがあります。「美容医療のトラブルをなぜ形成外科が保険で見なくちゃいけないの?」といった内容でした。
そのとき、僕の意見として、確かに美容医療による合併症の多くは自費診療で対応する必要があると思うけれど、例えば、アナフィラキシーショックなどの、緊急性を要するもの、人命に関わるものは、保険適用で対応するべきではないかと伝えています。
検討会では多くの問題が議論され、
回数を踏むごとに、
どんどん深くなっていきそうです。
8月26日に開催された2回目の検討会のレポートもまたお伝えしますね。