
兵庫県ならではのAI事情が見えてきたので整理してみる
AI開発をする弊社ですが、兵庫県に移転してきて約3年になります。
この間、様々なイベントに出て、多くの方に出会いました。また、個人的には兵庫県庁のデジタル化推進委員(DXを進める役割)も担いました。
こういった経験から、ようやく、
「なるほど、兵庫県のAI事情はこんな感じなんかな」
みたいな感覚が見えてきたので、まとめたいと思います。
業界の関係の方、地域の方のご参考になれば嬉しいです。
(本文中、敬称略。 厳密な調査というよりは、僕の主観が多い内容となっていること、ご容赦ください。)
まとめ
このnoteの内容を3行でまとめると、こんな感じです。
神戸市役所がAI活用に非常に積極的であり、地域の牽引役になっている。
民間では川崎重工、住友ゴムなどの大手企業がAI活用で成果を出している。特に今後はMicrosoft AI Co-Innovation Labは日本初の取り組みであり、要注目。
Sagri, TeleAxonなど尖った技術のスタートアップがあり、また関西学院大学や神戸大学などの各大学もAI分野の人材育成が活発。
では、各論に移っていきます!
自治体がAI活用に前向き
▶︎ 神戸市役所
まず、特筆すべきは神戸市役所の活動です。神戸市役所は全国初のAI活用条例を制定しました。2024年2月のことです。僕は当時、このニュースを聞いて「早いな!まだ民間企業でも生成AIに及び腰な会社が多いのに」と思った記憶があります。
また、神戸市ではMicrosoftの「Copilot」を全職員に導入するなど、自治体AI活用の先進例となっています。
この先進性たるや、「時代の先端をいく神戸!」みたいな雰囲気を(勝手に)感じる程です。
▶︎ 兵庫県庁
兵庫県庁も負けていません。兵庫県庁が生成AI活用プロジェクトを推進し、業務効率化のために「exaBase 生成AI (GPT-4)」を導入するなど、神戸市役所と追いつけ追い越せで、AI活用に積極的に取り組む自治体となっています。
また、兵庫県庁内部のデータに対する意識は高く、以下のような研修も弊社が実施させて頂きました。データへの正しい理解は、AIの活用に繋がります。こういった姿勢からしても、AI活用にさらに活発になる組織だろうと感じています。
▶︎ ちなみに、社員数を見てみる
なお、兵庫県内で最も雇用を生んでいるのも神戸市役所であり、神戸市の職員は約22000人もいます。次いで兵庫県庁が約7000人。そして姫路市役所4000人、西宮市役所3800人、尼崎市役所3000人、明石市役所2000人と続きます。
一方で、民間企業で最も社員数が多い組織は、川崎重工業株式会社で約16000人、次に神戸製鋼で13000人、ダイエーと住友ゴムが8000人程度と続きます。
つまり、何が言いたいかと言うと、兵庫県内で最も多くの人が働いている組織である神戸市役所にて、最もAI活用が活発であるというのは、兵庫県全体に対して非常にAIへの積極的な風土醸成に繋がっているだろう、ということです。
(参考URL)
▶︎ 神戸市によるAIスタートアップの加速
そして、その神戸市によるものですが、”SET SAIL"という名のAIスタートアップ支援プログラムもしています。こういう活動からも、神戸市のAI産業への積極的な姿勢が窺い知れます。

続いて、民間企業に視点を移します。
大手企業のAI取り組み状況
▶︎ 兵庫県の民間の代表的な企業は?
民間企業は、圧倒的に川崎重工、神戸製鋼、住友ゴムといった重厚長大な産業の会社の存在感が大きいなと感じます。僕の古巣の三菱重工の神戸造船所も数千人という社員が働いていましたし、三菱重工は兵庫県内に他にも高砂、二見などにも大規模な工場があり、何千人という雇用を産み出しています。いくつかの記事を見ても、こういった重厚長大な企業が兵庫県を支えていることがわかります。
また、兵庫県にてto C商材の雄と言えばアシックス 、P&Gかと思います。特にアシックス は創業の地ですね。
さらには、様々なバラエティ豊かな企業が本社を置いており、川崎汽船、兼松、白鶴酒造、山陽特殊鋼や西松屋など、挙げ出せばキリがないぐらいです。
実際、弊社が様々なAI関連のイベントに出席すると、上記に挙げたような会社の方々多く来場されている印象があります。
さて、では”AI”という意味では、どうでしょうか?事例と共にまとめてみました。
▶︎ Microsoftの研究拠点 Microsoft AI Co-Innovation Lab
まずは民間の活動で外せないのは、このニュースではないでしょうか。MicrosoftのAI研究拠点を神戸市に構えるというニュースです。2024年10月の話です。
主導は川崎重工の模様です。この拠点から共創や、AI人材の育成を目指されているとのことです。どんなサービスが生まれるのか、楽しみですね。
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_230713-1.pdf
▶︎ 川崎重工業
さて、兵庫県で大きな存在感を持つ川崎重工。
同社の顔ともいえるのが、バイクとロボットではないかと、個人的には思っています。(もちろん、重工業分野の多様な商品ラインナップはあるのですが)
そのロボット分野にて、既にAI導入を古くから同社では研究されています。物体認知、パターン学習などなど。
ロボットのインパクトが強すぎて、同社もわざわざ"AIなになに"を使っています、などと言わないのではないかなと思っています。
こういったハイテク産業があることも、川崎重工、ひいては兵庫県の特徴になっているとも思います。
ちなみに、川崎重工は、バームクーヘンで有名なユーハイム社と、かねてよりバームクーヘン製造のAIロボット化に取り組んできたとのこと。既に数十台が実用されており、習得が難しいと言われているバームクーヘンを作るノウハウを、AIがカバーする仕組みが実現しているようです。
▶︎ 住友ゴムの事例をよく見かける
僕のバイアスかもしれませんが、住友ゴムのAI活用の取り組みは多く見かける気がします。ゴムの材料分析など、設計や開発の実務に多くAIを活用しているとのこと。特に、ゴムの材料分析では、実験データの解析に約4年かかっていたものが、約2週間(100分の1以下)に短縮されたという驚異的な成果があります。
▶︎ 酒、乳製品など、兵庫の特産物への活用
・酒 山田錦
灘の酒蔵など兵庫県の酒は、日本全体へ著名なブランドとなっていると思います。
播磨・丹波地域では、酒米「山田錦」の収穫適期を判定するAIアプリや、レタスの生育・出荷予測システムの開発など、データ駆動型で収量予測や品質管理を高度化する取り組みが行われています。
https://hyogo-nourinsuisangc.jp/18-panel/pdf/2019/02.pdf
・畜産 六甲バターなど
神戸ビーフに代表される畜産業も兵庫の名物ですよね。
但馬地域では、乳牛の飼養管理にAI解析を導入しているようです。乳成分などのデータを独自モデルで分析し、牛群全体の健康状態を評価して酪農家にフィードバックする仕組みです。これにより個体ごとの乳量や健康を見える化し、生産効率の向上に寄与しているとのこと。
また、食品メーカーの六甲バターではベビーチーズの最終検査工程にAI画像認識を導入。カメラで流れてくるチーズの外観をチェックし、不良品はエア噴射で自動排出するシステムにより、1分間に最大540個のチーズをAIが検品可能となり、人手検査20人分の作業を省力化したとのことです。
これ以外にも、大量に民間企業のAI活用事例はありますね。
ただ、書く体力に限りがあるので、これぐらいにしたいとは思います。全てご紹介できないのが残念なぐらいです。。

スタートアップ事情は?
僕も一応スタートアップ業界の末席にいるつもりなので、スタートアップについてもまとめたいと思います。
▶︎ Sagri社
個人的にものすごくよく見かける印象があるのが、Sagri(株式会社サグリ)です。AI活用で衛星データを農業にいかすというビジネスです。本当に色々なところで良い評判を伺う印象があるので、兵庫の注目のスタートアップなんやなと思っています。
▶︎ TeleAxon社
株式会社テラアクソンも様々な場所で良い評判を聞くスタートアップの印象です。神戸大学発のスタートアップで、AIの学習領域に関する研究や、倫理的な部分の研究など、骨太な事業を営んでいる会社との理解です。
▶︎ ブレイン社
設立40年の歴史ある会社なので、スタートアップに入れること、ご容赦ください🙇♂️
ただ、株式会社ブレインの取り組みは、新進気鋭な技術開発が多く、ベンチャー気質を多分に感じており、良い意味でスタートアップぽいと思っています。
有名なのは、パン屋のレジにおける画像認識による商品判別システム。これを日本初?で取り組んでいたのではと思います。
▶︎ ROX
弊社でございます汗
一応、紹介をさせてください。
創業から10年になるAI開発の技術系ベンチャー企業です。自社プロダクトの来店客数予測AI -Hawk-は複数のPOSと連携するなど、需要予測技術の提供者として、裏方的な部分ではありますが、世の中に貢献をさせて頂いています。ダイナミックプライシングシステムなども、これもOEM的な裏方の開発を手掛けています。
自社プロダクトのみならず、「こういうAIアプリを作って欲しい!」というニーズに対する受託開発も幅広く対応させて頂いています。
AI関連のスタートアップもまだまだあるのですが、この辺にさせて頂きます。。

大学・人材育成
兵庫のAI事情にまとめ出すと、大学の取り組みも見逃せません。概要になりますが、まとめてみます。
▶︎ 関西学院大学
関西学院大学(西宮市)は日本IBMと共同で「AI活用人材育成プログラム」を開発し、文理問わず初心者でも学べるオンライン教材を提供しているようです。
▶︎ 神戸大学
神戸大学では全学的にAI・データサイエンス教育を推進し、学部横断での副専攻プログラムを提供。産学連携にも積極的で、学内センター発の技術を社会実装するスタートアップが誕生しています。上述のTeleAxon社は、まさにそれですね。
▶︎ 兵庫県立大学
僕の世代では、姫路工業大学と言った方が馴染みがあるかもしれません。兵庫県立大学も活発です。
兵庫県立大学大学院 情報科学研究科が神戸市立医療センター中央市民病院と連携し、2024年10月に「臨床AI研究部」を設立しました。個人的には、あくまで誤差(ミス)を含みがちなAIというものが、ミスを許されない医療という分野においてどのような成果を出すのか、注目したいと思っています。
https://www.kcho.jp/media/pdf/news/pressroom/20241101press.pdf
▶︎ 理化学研究所
また、AIの活用の基盤としては、理化学研究所の計算科学研究センター(神戸市、富岳スパコン設置)も貴重な資産です。膨大な計算を高速で処理できるスパコンですね。一時期の蓮舫議員などで話題になりましたが、それも過去のこと。生成AIなどに活用されているようです。
最後に
兵庫県という切り口で見てくると、
・ロボットをはじめとした先端テクノロジーの土壌があり
・一方で、酒、畜産などの特産品もある
・神戸市をはじめとしたアグレッシブな自治体が地域をひっぱっている
という特徴が見えてきました。
大学も、首都圏や京都、大阪ほどは多くはないですが、優良な大学多い印象です。
その結果、大学も地域企業や自治体と連携し、
「AI人材輩出 → 地域での活用 → 課題発見 → 技術改良」
という最良のスパイラルを生み出せる場所なのではないでしょうか。
AIという視点でみても、兵庫県はそのような成長性のある場所だと再認識しました。
長くなりましたが、以上になります。ここまでお付き合いいただき、有難う御座いました!
今日も読んで頂いて有難う御座いました😃
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