【レビュー/アイスホッケー】DF山口堂々デビューも、攻守共に見せ場なく…… 駒大はリーグ戦初戦で筑波大に完敗
2019年8月31日
関東大学アイスホッケーリーグ2部
駒大0ー3筑波大
得点者:大森、高口、広瀬(筑波大)
完敗という他ないだろう。駒大は筑波大相手にほぼ何もできないまま開幕戦を終えた。
リベンジの場も……
4日前まで新潟市・MGC三菱ガス化学アイスアリーナで合宿を行っていた同士の対戦。駒大にとって筑波大は秩父宮杯決勝リーグで0―1で敗れた相手であり、リベンジの場でもあった。
試合開始時の両チーム第1セット(紫が駒大)
立ち上がりから押し込まれる展開になった。
先制点は2分6秒。FW大森新に右サイドでパックを拾われ、ゴール裏まで突っ込まれる。駒大選手(よく見えなかったがDF照井健だろうか?)が対応に行くが、ターンしながら左右に振る大森の動きについて行けず、ゴール左に進まれると、そのままねじ込まれてしまう。
その後も攻め込まれたが、なんとか押し返すと、一進一退の展開に。
5分50秒頃には左サイドで縦パスに上手く抜け出したFW渡辺信勝がシュートを放つと、ルーズパックを角度のないところからFW小笠原偉大が強引にシュート。だが、いずれもGK稲葉拓美に止められてしまう。6分57秒にはDF平入駿がニュートラルゾーンから右サイドボード際を強引に突破、ゴール裏まで回ってシュートを放ったが、ポストに嫌われた。
さらに11分52秒にはFW矢口隼樹と小笠原で、14分7秒には小笠原のドリブルから矢口と渡辺で、それぞれチャンスを作ったが決めきれず、追いつけないまま第1ピリオドを終えた。
防戦一方
駒大はDFにけが人が続出。DF西田朋生、照井がプレー不能となり、DF2ポジションをDF川野翼、平入、DF山口大貴の3人でまわす事態に。第2ピリオドからは急遽大黒柱の矢口をDFに入れ、矢口の抜けたセンターフォワード(CF)には第2セットから久保田を上げた。
第2ピリオドからは防戦一方となった。基本的に押しこまれる展開となり、ニュートラルゾーン、ディフェンディングゾーン(Dゾーン)でプレーする時間が続く。展開に優れる矢口がCFから抜けたことで攻撃力が落ちた一方、“DF矢口”が気の利いたプレーで貢献。なんとか防いでいたが、24分1秒、メンバーオーバーでキルプレーを迎えると、直後Dゾーン右サイドでのフェイスオフから失点。フェイスオフを取られると、6秒後、右サイドからのスラップショットにGK菊池亮介の左肩を射抜かれた。遠めからのシュートだったが、筑波大FW広瀬弘幸がスクリーンになっており、菊池は反応できなかった。
第3ピリオドでは再び矢口をCFに戻したが、流れは変わらず。押される展開が続く中で次第に疲れが見え、足が止まるようになる。特に3人まわしになったDF陣の疲労が明らか。攻め込まれればなんとか足を動かしたが、攻撃ではまるで機能しなくなった。35分、FW陣がカウンターを狙って攻め上がろうすると、FW陣が一気に前に出たのに対し、DF陣はついて行けず。中盤でパックロストすると、FWラインの後ろにルーズパックが転がる。通常ならDFが拾う場面だが、DF陣はついてきておらず、広大なスペースができていた。広瀬にフリーで拾われ、ドリブルされると、ここでDF2人は距離を詰めることなくズルズル下がりながら対応してしまったため、2対1の数的有利な場面でありながら、広瀬にフリーでドリブルされる事態に。そのままフリーでシュートを打たれると、パックは菊池の股間を抜けていき決定的な3失点目を喫した。
その後もなんとか一矢報いようと反撃を試みたが、足が動かず、ミスも多発。攻撃の形をなかなか見せることができないままタイムアップ。攻守共にいまいち見せ場がなく、リベンジどころか、秩父宮杯よりも悪い内容で初戦を落とした。
3点目を決めた広瀬(左)はスクリーンなどでも活躍し、駒大守備陣の脅威となった。(右は川野)
課題は守備
大きな課題は守備面だ。秩父宮杯ではよく守れていたが、この日はなかなかはまらなかった。一次攻撃には概ね対応できていたが、Dゾーンからパックをかき出せず、波状攻撃を浴び続けた。特に目立ったのが、ゴール前にこぼれるルーズパック。菊池の奮闘もあり失点には至らなかったが、ゴール正面のルーズパックをフリーで拾われ、シュートを浴びる場面が何度もあった。
もう1つ目についたのが、バックドアの守備が甘いこと。筑波大は(駒大視点で)右サイドからの攻撃が多かったが、右サイドに気を取られてゴール前~左サイドに入ってくる選手へのケアが疎かになる場面が散見された。右サイドからのシュートを菊池が防いだ後、リバウンドに先に反応していたのは多くが筑波大の選手。結果的に一度も合わず、失点にはつながらなかったとはいえ、「触れば1点」の場面に相手選手のみが走りこむ状況が繰り返されたのは問題だ。
前回の対戦で完封された攻撃陣は今回もノーゴールに終わった。
単発の攻撃はあったものの、チームとして組織的に攻められたのは開始52秒、矢口が右サイドからゴール前へ斜めにパスを送り、左サイドから斜めに走り込んだ渡辺が合わせたシーン(シュートは稲葉がストップ)などわずか。この試合のSOGは9に留まったが、「わずか9本」というよりは、「9本も打ってたっけ?」と言いたくなる出来であった。
シュートも少なかったが、そもそもなかなか効果的にパスがつながらず、チャンスに至らなかった。DFからの効果的なパスが少なかったこと、第2ピリオドで“CF矢口”がいなかったことも一因だろう。平入のドリブル突破や、後方からの思い切った縦パスでは前に出られただけに、パス精度向上と共に攻撃の選択肢も増やしたい。
山口堂々のデビュー
良かった点もある。筑波大の一次攻撃を防げていたのは悪くない点だろう。3分46秒、パックを持って下がった筑波大DF宮下亮一がターンしてFW川崎友鳳をかわし、そのまま一気に持ち上がってきた際は一瞬戸惑いが生まれたようにも見えたが、冷静に対応し外に追いやった。
さらに新潟合宿の成果が少しは見られた。そこまで多くはなかったが、秩父宮杯では見られなかった攻撃パターンやコンビネーションが見られた、少なくとも見せようとはしていた。合宿にはインラインスケート日本代表主将の西永健太郎(駒大OB)とアイスホッケー日本代表・平野裕志朗の2人の代表選手も参加。多くのアドバイスを受け、様々な練習に挑戦した。今後のリーグ戦でその成果をどこまで見せることができるだろか。
そしてなんと言っても山口だろう。この日が公式戦初出場。大学から競技を始め、1年数カ月でデビューにたどり着いた。新潟合宿ではプレー、スケーティング共に危なっかしい場面もあったが、試合では冷静に対応。防戦一方で出番の多い展開にも大きなミスはなく、フリーの場面では先輩にパスを要求するなど、初出場とは思えない堂々としたプレーだった。手薄なDF陣の一角を担えるか、期待がかかる。
初出場ながら冷静にプレーした山口
新潟合宿では多くの選手がスケーティングや技術面で大きな成長を見せていた駒大。初戦はほとんど見せることができずに終わったが、成果を発揮することができれば優勝争いにも絡む可能性がある。次戦以降でその力を見せることができるだろうか。