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この世界で生き残るために

腐ってもプロ。命懸けの北米5部

アメリカに来て5日が経ちました。

ここまで2回の練習を終え、次回水曜朝は3回目の練習

練習の流れは、最初の1時間を1-0.1-1.2-0.2-1.5-5といった、定番のもの。
そして製氷後に20分×数回の紅白戦を行います。

初日は時差ボケなど色々な悪条件が重なり、本来の50%ほどのパフォーマンスしか発揮できませんでした。

みんな生活をかけてここにやってくるので、ワンプレーたりとも手を抜きません。

日本人がよく言われる、パックを持った時の足の速さではなく、
攻防が瞬時に切り替わり、0.5秒で展開が大きく変わる。

国際規格リンクよりも狭いリンクということもあり、
そんな早さ、速さを感じています。


北米5部。と言われると、上にさらに4つのリーグが存在することがわかります。

そうなるとなんとなく

5部は誰でも入れそう
そんなにレベル高くなさそう

そんなイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、

誰でも入れるようなレベルのリーグの試合に、本当に4000人もの観客が集まるのでしょうか?

初日は、僕もどんなものだろうと、いろんな感情をグルグルしながらリンクに到着。

4000人集まるからには、やはり理由がありました。

みんなパスできるし、悪い態勢からもすごいシュートを打つ。

そして、本来はもっと上のリーグでやれる実力があるのに、良い給料を貰えるため5部でプレーし活躍する選手もいる。

ある意味、独立リーグならでは。

誰でも入れるおじさんのリーグで、チームが全ての洗濯物を管理して大きなロッカールームを用意して、好きな時に飲めるドリンクや軽食が用意されるわけがありません。

練習を始めてすぐに、

これ俺、ヨユーでクビあるな。

そう感じました。


契約までの道のり


そう感じた理由は単に参加者のレベルの高さだけではありません。

この環境の中で、たった6回の練習で、

自分が他の人よりも上手い。それを証明すること

が、想像していたよりも難しい。

ということに気がつきました。

スポーツは相手がいて成り立ちます。

相手がいるということは、さまざまなプレーが起きる中で最終的にゴールが生まれ、その過程は毎回違うため、飛んでくるシュートも毎回違います。


彼が止めたシュートよりも、

自分が止めたシュートの方が難しかった

彼が許した失点よりも、

自分が許した失点の方が難しかった

それを証明する方法がなく、残るのは、止めたか、止めていないかという結果のみ。


さらに、GKは試合の結果を左右できる影響力がある一方、GK成績は味方の守りのクオリティに大きく左右されます。

必ずしも上手なゴーリーが一番いい成績を残すわけではないのです。


その中で、どうやってチームにとって契約したい選手になれるか。

失点を減らす
あっと驚くセーブをする

色々な方法がありますが、コーチは答えを示してくれません。

一番失点が少なかったゴーリーと契約します!
一番セーブ率が高かったゴーリーと契約します!

そんな指標があれば、やることは明確になりますが、実際はそうはいきません。


マイナスからのスタート

さらに恐ろしいのは、どんな世界でも知り合いの力は強い。ということ。

コーチの息子、すでに所属している選手の兄弟、いろんなアドバンテージを持っている選手がいます。

もちろんプロの世界でそれだけを理由に契約することはありませんが、少なくとも大きな差が感じられなければ、そちらを選びます。

そして、その大きな差を証明するほど十分な時間がありません。

これが、アメリカで生き残ることが難しいとされたり、運要素が強く大きな賭けになると言われる理由です。

実際にアメリカに来て、それを痛感しました。

もしこの選手たちと、3試合ずつ試合に出られたら、
間違いなく一番いい結果を残す自信はあるのに…

日本から来た、一番身長の低いGK

ここでは、僕の肩書きはそれしかありません。

けど、ここまで来たらやるしかない。

幸い、2日目は初日に比べてかなり良いパフォーマンスを発揮できました。
練習中にもチームメイトやコーチの印象に残るセーブはいくつかあったのではないかなと思います。


生き残るために


ここまで、先の計算が全くできないこのリーグで生き残ることの難しさをお伝えしましたが、

2回の練習を終えての感覚、自分なりに見えてきた答えがあります。

まず、初日こそ全体的に反応は遅れたものの、それは単にアメリカ最初の練習で感覚が鈍っていたため。
2日目には完全に本調子となりました。

パスに対しても、事前にパスしたいであろう選手を想定できているため余裕を持ってついていけており、
自分の強みである

シューターの選択肢を絞っての読み
横パスへの対応

は十分に発揮できています。

ただし、このリーグ何が恐ろしいかというと、
全員が基礎能力に加えて

ロケットシュート
悪い態勢からのシュート

のふたつの特殊能力を持っていることです。

どんなに味方がいい守りをしても、自分がいいポジションどりをしても、

突然飛んでくるその一本で全て決まってしまいます。

そんな単発シュートによる失点は、ゴーリーの印象が悪くなる大きな原因の一つです。


・リーグのレベル的に横パスには十分に対応できること

・パスされての失点は単発のシュートによる失点よりは悪い印象を与えないこと

のふたつを考慮すると、このトライアウトにおいては、

1本目のシュートを止めることのみを想定したプレーでも良いんじゃないか。

という結論に至りました。

パスをされての失点は、味方と責任を分けられますが、
単発での失点はゴーリーのみが減点される可能性が高いです。

この作戦がどんな結果をもたらすかは、現地時間土曜夜に分かります。

GK4人のうち、上位2人の評価を得て開幕メンバー入りを果たす。

元は最低条件と考えていたラインが、今は超えられるかわからない試練となりました。

ポンとランダムに与えられた環境で、自分のベストなパフォーマンスを発揮しつつ、周りの選手よりも優れていることを証明する。

運要素が大きく影響する状況で確実に実力通りの結果を出す。

どれも今後プロ選手として生き残るためには必要な要素であり、得ることができれば精神的に大きな武器になる。

そんな練習を今できていると思うと、こんなに良い経験はありません。

初日はナーバスだったけど、今は十分な自信があります。

そして生き残ることができれば、ここには世界のトップリーグに引けを取らない設備環境。

ホッケーだけに集中していい、夢のような環境。
チームカラーで塗られた壁、大きなロゴ、1万人収容アリーナ、飲み放題のゲータレード(←?)

憧れていたものが目の前にある。

良い結果をご報告できるよう頑張ります。

©︎ 2024 Verity Griffin


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