見出し画像

試合に出られない時にすること


このホッケー大国でなにを魅せるか

©︎2024 Verity Griffin


アメリカに来て1ヶ月半

ここまでわずか20分の出場のみで、すでに二度のカット。

ここまでの経歴は何も評価に値せず、

見られているのはここで何をしたか。

そしてそれを証明するチャンスも今のところはない。

これは周りのせいではなく、練習の中で圧倒的なパフォーマンスを発揮できていない自分の責任。


北米では世界最高レベルホッケーシステムが確立されており、世界各国リーグ助っ人選手の獲得のために目を光らせる、世界最高峰のリーグが3つ。

NHLには世界最高レベルのゴーリー

そしてその下には、

NHLレベルのAHLゴーリー

AHLレベルのECHLゴーリー

と、枠が少ないこのポジションは、本来は一つ上のリーグでプレーできるレベルのゴーリーでも、
その競争率の高さから溢れて下に押し出されるため、
ゴーリーのレベル他のポジションに比べて一つ上のリーグと言われたりもする。


実際、AHLの選手を見ていると多くがNHL経験者であり、
時にはECHLにまでNHLのゴーリーが落ちてくる。
(年齢の関係もあるが、今季でいうとサンノゼでプレーしていたAaron DellECHLでプレーしている。)

画像タップでDellのスタッツページに飛びます。


そんな難しい環境、シーズン前には挑戦を反対されるも、比較的安定しているヨーロッパでの契約が決まらなかった事で、ここでのプレーを決意。

やはり現実は甘くなく、現在はニューヨークのチームの補欠

いつクビになってもおかしくない状況。

そんな中でも、どんなマインドを持って戦っているか、みんなに知ってもらいたいし、

次に挑戦する後輩のヒントになれるかもしれない。


絶体絶命のピンチは、大きく成長するチャンス

試合に出られない時だからできることもある。

高校生、大学生、カテゴリは違っても、
チーム内の立場が近い人はきっといるはず。

そんな人にも届けたい。


トレーニング

一番大きな要素は、このトレーニング。

試合に出られないということは、週末はオフ。

試合に出るメンバーは試合の経験値を得る。

それを得られないことは絶対に不利

上手くなる1番の方法は試合に出ることだから。

けど、彼らが試合に向けてコンディションの調整をする間に、フィジカルの差を埋めることができる。

シーズン中には扱いづらい重量のウエイト、高強度のスプリントや氷上練習に影響のあるトレーニング(僕の場合はスクワット、ジャンプ、スプリント等)をとことん追い込む。

明日のを気にする必要はないし、むしろ気分が良くなってくる。

時間が許す限り、一番最後までに乗る。

ゴーリーなら、プレイヤーと遊びのシュートアウト100本受ければかなり練習になるしスタミナもつく。
彼らはゴーリーの休憩を考えてない。

走る暇があるなら、100本シュートアウト受けたほうがいいかななんて思ってる。

その中でも疲れを言い訳にせずに全力で止める。

練習で息の上がる疲れの感覚は、PPの緊張して脚が固まる感覚に似てる。

疲れたときのような不利な状況でのパフォーマンス向上ピンチに強くなれる。


今所属してるチームは、ありがたいことにリンクにジムがある。

試合前には、監督に「6時に戻ります」と伝えて、いつもできない高強度のウエイトを組む。


終わると、

「今日を一生懸命戦った。」

と自分に自信が持てる。

それが来週の練習エネルギーになる。

頑張ることで、頑張れる。変なサイクルだけど。


チームのサポート

どんなに腹が立っても、この仕事をおろそかにしたら必ず自分に返ってくる。

小学生の時、まだルーキーだったレッドイーグルスの成澤さんがチームの練習に来てくれた。

当時からイーグルスは地元少年チームとの交流を行なっていて、僕もイーグルスの大ファンだった。

ああいった小さな活動がファンを増やして、プロを目指す子どもたちを増やし、この競技の発展に繋がるのだと思う。

成澤さんには

「プロになるためにはどうしたらいいですか?」
「家ではどんなトレーニングをしてますか?」

そう質問したけど、

「おれはトレーニングはしなかったよ。氷上練習を一生懸命やっただけ。」

と、あまり求めていた答えは返ってこなかった。
おそらく、当時すでに僕のことをライバル視していた。

そんな成澤さんの話を勝手にしてしまって申し訳ないけど、

とある選手から

「成澤さんは試合に出ない時は一生懸命チームのサポートをしてたよ。だから、成澤さんが出る時にみんな頑張って守る。」

という話を聞いた。


ゴーリーが3人登録されているチームの場合、
毎試合1人がベンチ外になり、特に若いうちは年間ほぼ全ての試合ベンチ外で過ごすこともある。

水を汲んでも全ての選手にお礼を言われるわけでないし、
自分が飲むわけでもない水を汲むのはどう考えてもつまらない。

けど、やっぱり見てる人はいる。

僕自身もGRITSにいた頃、87番の茂木慎之介さんとはよく一緒にメンバー外を経験した。

お互いにメンバー外になる悔しさ仕事の大変さを知っているからこそ、

彼が試合に出て僕が試合に出なかった日は

「水とかスティック整理ありがとう」

と、必ず声をかけてくれた。


その一言が嬉しくて、逆の時には必ずお礼を言うようにした。

そうやってチームは信頼関係を築き上げていくし、
慎之介さんが点数を決めると嬉しい。もしさんがミスをしても、絶対にカバーしようという気持ちにもなれる。


やってるフリをすると必ず周りには伝わるし、一生懸命サポートすることは必ず自分に返ってくる。

アメリカでもそう。

チームに生き残ろうと思ったら、すぐにグッドプレイヤーになれなくても、まずはグッドガイになる。


自分なら勝てたと信じる

ここまでと180°ひっくり返るような話だけど、

全員がハッピーになれる展開はない。

僕が試合に出るということは、誰かが外れるということ。

僕にチャンスが回ってくるということは、前の試合で誰かがミスをしたということ。


試合に出てそのポジションを獲得するためには、
他の人に同情してられない。

勝利を目指す競技スポーツ教育・健康のためのスポーツは違うから、同じ話を子供にするつもりはないけど、

少なくとも高校、大学、プロとカテゴリが上がるにつれて、この要素は強くなる。

他の選手の道具壊すとか、そういう「蹴落とす」話ではない。

これもチームのサポートと同じく自分に返ってくる。

けど、他人がミスした時、友人として、チームメイトとしての声掛け気遣いは必要。

だけど、そこで終わったらただのいいやつとして消えてくだけ。

チャンスだ

とか、

俺ならこうしよう


なんて、常に自分が試合に出ることを考えて、いつでも行けるという気持ちを持たないと、

同じ境遇の他の選手にのまれてしまう。


正直、技術の差なんて小さいもので、ほとんどは精神的な強さ経験値だと思う。

他の選手のミスの原因負けの原因を技術的観点から考えながらも、俺が出ていれば…と自信を持ち続けて、

絶対にいいやつで終わらない。


他人の不幸を望むのではなく、

練習から

「お前がミスしたらいつでも出れるよ。」

というプレッシャーを与え、

監督にも

「こいつは準備ができてる」

と、次の入れ替え候補の一番上に数えられるよう練習に取り組む。

いつ入れ替えが起きるかはわからないけど、準備が十分だったら必ずいつかはチャンスが来る。

もしカットされることになってしまっても、

あの日の練習で手を抜かなければ」

と後悔せず、

「ここまでやって無理なら俺にはどうしようもない。次のチームで頑張ろう。」

と、思えるよう、今を全力で頑張る。

毎日が戦い。

今週の試合に出られないなら、
来週準備を始めよう。

今月出られないとしても、
来月の試合の準備今から始めよう。

そう自分に言い聞かせて、
明日も朝からリンクに向かいます。

いいなと思ったら応援しよう!