恩師の「美意識」
島田先生が率いる大阪商業大学(大商大)バスケット部は、最高成績が大学インカレベスト4で優勝経験は無し。
しかし関東の有名大学に比べると選手のリクルートにも不利な関西だから、高校で大活躍した選手が来る確率も低いので、それもある意味十分な成績だとも思える。
そんな大商大が関西や西日本でも優勝の常連校になり、多くの日本リーグ(当時のトップリーグ)や日本代表の選手を輩出できた。
その理由は島田先生が持つバスケットボールへの「美意識」の高さが要因だったんだと山口周さんの本を読みながら確信した。
バスケット界は勝ち負けがハッキリしている競争社会。
誰の目に見ても分かりやすい勝負の世界。
だから勝つ事に皆が必死になるし、負ける事を嫌う傾向がうまれる。
従って勝ちを急ぐ思考が「シュートをよく決める選手」「背の高い選手」「スピードがある選手」「パワーがある選手」「経験がある選手」など一見誰が見ても分かりやすい優位性でメンバーを選ぶ事が少なくない。
しかし島田先生は違った。
どちらかと言うとバスケットボール競技に適してる選手を見抜く力があった様に思う。
実際のメンバー選考も、選手がチームの歯車になれるかどうかが鍵だった。
だから低身長でも、不器用でも、スピードがなくても、過去に実績がない選手でも1軍になり本大会に出場できた。
その理由はチームのテーマに対する遂行力が高かったり、チームプレー(フォーメーション/型)に沿って努力してスキルが向上していれば当たり前のようにメンバーになれた。
私的には、島田先生が作られたチーム環境は、バスケットボールという競争社会において集団心理がポジティブに働くシステムが出来上がっていたんだと思う。
何故なら私が選手として「自然に個々の努力と成長が称賛される価値観」がそこにあったからそうとしか言いようがない。
そんな島田先生のチーム作りのシステム一部を紹介すると
①1軍2軍とチームを分けて練習をする
②大きな大会前1か月に「入れ替え戦」を実施される
③チームでやる事が徹底されている
【ディフェンス】
※ハーフコートチームディフェンス
(質を上げるための要素)
「ハリバック・ピックアップ・コミュニケーション」
「ハンズアップ・ヘルプポジション・スクリーンアウト」
「ボールマンプレッシャー・コミュニケーション・ルーズボール・」など
【オフェンス】
UCLAハイポストオフェンス
(質を上げるための要素)
「ポジショニング・タイミング・コントロール」
「コンタクト・ボールキープ・シュートを決めきる」など、シンプルに書くとこのような感じになります。
③のようにディフェンスもオフェンスもやる事がハッキリしていて、しかも一つなので、シンプルで誰にでも理解しやすい。
だから①のように1軍、2軍と競争環境があっても、②の入れ替え戦を通して個の成長が見やすい。
言い換えると「質を高める為の要素」が明確だから評価基準も明確。
従って選手が日々の練習でそこに向かっていればきちんと評価される。
島田先生が「勝利するチーム」を作る為に研究し続けた結果、選択された道はシンプルで、選手が「平等に競い合える環境」を作る事だったのではないかと私は思う。(聞いた事はないけど。。。)
先生はリクルートが上手くなく、むしろ逆で色んなチームから様々なタイプの選手が来るので、まとまりにくいチーム作りを強いられていたとも言える。
それでも「負けにくいチーム」が出来たのは、島田先生のバスケット指導の根底には、個を尊重する質の高さがあったんだと思える。
指導を受けた体験者の1人として、バスケットボール界でも島田先生のバスケットボール観は何か違うとは感じていましたが、その違いが山口周さんの本を読んでハッキリした。
島田先生の勝利の拘りは、民主主義国の日本では最も大切な「個の尊重」が自然と芽生える競争環境を作る事だったんだ。
島田先生の「美意識」