夏の季節に神社の鈴を鳴らす
◯◯:あっちぃ、、、なんだこの暑さ、、
手で必死に仰ぐが、生暖かい風しか来ない。
俺は幼馴染に炎天下の中、駅前のベンチで待たされている。
あいつが今日、絶対海へ行くって言うから。
連絡も来ない、多分寝坊かな。
でも遅刻は絶対しない。
多分、いつの間にか寝てしまって、朝の時間がバタバタになってしまったのだろう。
俺は目の前にあるコーヒーショップでコーヒーを買うために店に入った。
身体全体がひんやりする。
メニューをみて、色々考えた結果
◯◯:アメリカンブラックコーヒーとアップルジュースをひとつずつお願いします。
コンビニで買えばいいラインナップなのに、コーヒーショップで買って、少し多めの出費。
ペットボトルじゃ、君はなかなか開けられないもんね。笑
だから俺はいつもストローで飲める飲み物を買って君を待つ。
幼馴染と過ごす20回目の夏。
よくある漫画の世界みたいな、俺と幼馴染。
家が隣で、家族同士も仲良くて、自分の部屋の窓開けたら、目の前に幼馴染の部屋。
窓開けて喋りながら夜更かししたり、色々してきた、
中学の時も付き合ってるだろ、って噂されて、付き合ってない!って2人で声を揃えて否定する。
こんな漫画の世界なやつら、絶対にいない。笑
コップの水滴が地面に滴り落ちるようになった頃、突然目の前に君が現れた。
夏鈴:あっつい、、おはよ。
◯◯:よく遅刻しなかったな、じゃ行くか、
と言いながら、俺は2つの飲み物を差し出した。
幼馴染は無言で、リンゴジュースを手に取った。
最近ブラックコーヒーとか、ワサビとか好きになったらしく、大人だなって感じてたけどね笑
特急列車の切符を夏鈴に渡し、2人掛けのシートに座る。
もちろん窓側は夏鈴。
正午ちょうどに出発する特急は1時間半で海までたどり着く。
横で風景も見ずに寝ている夏鈴、
ツヤツヤな白い肌にサラサラな髪の毛、可愛らしい顔。
なんか俺、気持ち悪いこと言ってね?笑
ひたすらトップスピードで走り抜ける特急はあっという間に終点の駅へ。
電車を降りて、改札を出て、2人して放った言葉は、
◯◯、夏鈴:あっちぃ、、、、
2人してお腹空くタイミングも一緒で、海鮮が有名な場所なので海鮮丼を食べに行く。
◯◯:美味しすぎる、、、
夏鈴:美味しいね。笑
店員のおばちゃんに、あんた可愛いからサービスしちゃるって言われて、夏鈴と俺の海鮮丼にサービスのエビフライが出てきた。
◯◯:まさかのサービス笑
夏鈴: 言ったじゃん、私、運が良いって笑
満腹なはずなのに、たまたま通った商店街でかき氷を食べる。
頭キーン、夏らしいや。
身体が冷えているのか、夏鈴が神社の近くにある足湯に入りたいと言った。
温泉も有名で、近くにあった足湯に2人で浸かることに。
◯◯:気持ち良すぎる、、、
夏鈴:ふぁ〜、、、
気持ちよさそうな夏鈴。
温まってきたので◯◯は出ようとしたら、夏鈴が腕をガッと掴んだ。
◯◯:え!どした?
夏鈴:足を温めないと、人ってやばいよ。
謎の夏鈴の説が披露された。
脳内では、サスペンスのアイキャッチが流れた。笑
夏鈴の目はめっちゃ真剣な目をしてる。
◯◯はもう一度入ることにした。
足湯入って45分、かなり足もふやけてきた。
持ってきたハンドタオルを夏鈴に渡して、一緒に出た。
気がついたら夕方になりかけてきた。
海へ行く2人。
夏ということもあり、海水浴場にはたくさんの人達。
夏鈴:水着持ってくればよかったかな。
◯◯:肌焼けちゃうよ笑
夕方になっても太陽の陽射しが照りつけているが、海の風は涼しい。
防波堤に2人で座る。
2人で風を感じる。
◯◯:飲み物買ってくる。
夏鈴:行ってらっしゃい。
最近値上がりした自販機で飲み物を買う。
◯◯:ほれ。
俺は夏鈴にカルピスソーダを渡した。
ギャップはもちろん開けた状態で。笑
夏鈴が飲む姿は某CMみたいになってる。
甘酸っぱいこの気持ち、波と弾ける
身体にピー、、、やめておこう。笑
俺は久しぶりに飲みたくなった、マウンテンデゥーを飲む。
夏鈴が突然、言い放つ。
夏鈴:神社行こうか。
夕陽が1/3になってる。
それを背に向けて、石段を登る2人。
階段の中段で休む、夏鈴。
手を差し出した。
◯◯:もうちょい、頑張ろ☺️
夏鈴と手を繋いだ。
20回目の夏。
思ったより冷たかった手。
階段を登り切り、2人で後ろを振り返る。
夏鈴:わぁ!!綺麗な夕日!!
もうすぐで山の中に沈みそうな夕陽。
肌が白すぎる夏鈴。
そのまま手を繋いだまま、神社の境内に入り、拝殿へ向かう2人。
2人並んで、お願い事をする。
夏鈴:世界が平和になりますように。
世界規模の平和を願う夏鈴。
今にでも消えそうな声で願う夏鈴。
俺は、どうしようかな。
一つだけ叶うなら、、
◯◯:生きている夏鈴に会いたい。
鳴った鈴は一つ。
幼馴染と過ごす20回目の夏。
夏鈴は18回目で止まっている。
膝から崩れ落ちる◯◯。
◯◯:会いたいよ、、、夏鈴に会いたいよ、、、
夏鈴が亡くなった海に来た。
だから、今日は1人で来た。
二十歳になっていたら夏鈴はこんな1日を過ごして、付き合ってたらこんなデートだったのだろうか。
夏鈴が居なくなった時も泣かないようにしていた。
みんなの前では泣かないようにしていた。
でもやっぱり一人きりの時は無理だ。
◯◯:好きだ、、夏鈴のこと大好きだ、、、
夏鈴にもう伝わらない想いを、神社の鈴に載せることにした。
長めに鳴らす鈴、夕暮れの境内に響く鈴の音。
夏鈴に届け、この想い。
だから、俺は夏の季節に神社の鈴を鳴らす。
END