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【87 6億年後】#100のシリーズ

6億年後の地球には海がないという話がある。
台風の近づく海を見て、ぼんやりと考える。
1年前に座礁したタンカーが遠くに見える。
船尾側が海面に出ているタンカーが波の間に見え隠れしている。
遠浅の海底に引っかかったままのタンカーはいつまでそこにあるのだろう?
さすがに6億年はないだろう。
5千万年後にはすでに人とは違う姿の生き物が地球の多くに生息するといっている本を読んだこともある。
5千万年後の
生物はそこにあるのが元タンカーだと理解できるのだろうか?
「くだらない」
隣に立つ同僚が笑う。
「人が滅んじまった時点であれが何かは関係なくなるさ」
時折吹く強い風に背を丸くする。
「人が滅びる前でも、俺らが死んじまったらそれで終わりだろう?誰かがあのタンカーのことを気にしてないいても俺たちには関係ない」
そう言った同僚へ車に戻ろうとこちらを見た。
「あぁ」
頷いて歩き出す。
同僚が運転席に、自分は助手席に座る。
雨が落ちてきた。
「今夜はこの町に泊まるのが無難かな?」
「そうだな」
頷きながら、自分たちが気にする未来なんてせいぜい数時間後のことだと思った。


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