【可愛い子には変化させよ】#毎週ショートショートnote
「いくら娘が可愛いからって、巣穴の奥に閉じ込めっぱなしは感心できないねぇ」
「そんなこと言ったって葛の葉姐さん。いつどこで娘が人に狩られるかわかったもんじゃない」
「だから昔から言うの。可愛い子には変化させよ。可愛い子にほど変化は必要なの」
「俺は…変化はできない」
「私があの子に教えてあげるわ。先代の葛の葉様直伝の変化を。何ならあんたにも教えてあげてもいいのよ」
「姐さんは簡単に言う。狸たちのように誰でも変化できるわけじゃないんですよ。狐は」
「誰に言ってんのよ。誰でも化けれる狸だって、変化に関しては得意不得意はあるらしいわよ」
「そうなんですか?」
「分福だって中途半端にしか茶釜に化けられなかったでしょ?」
「そういえば…」
「でも、その中途半端が可愛いとチヤホヤされた。ね?やっぱり、可愛い子は変化した方がいいんだよ」
「なるほど…わかりました。姐さん、娘をよろしくお願いします」
「任せておくれ」
これが三代目葛の葉の誕生である。