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【洲淡麗博士の研究記録】#妄想レビュー返答

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はじめまして。我々は洲淡麗貞治研究会。我々の研究、いや我々が現在引き継いでいる研究を多くの皆さんに知ってもらうべく、この配信チャンネルを開設致した。

洲淡麗貞治すたんれいじょうじ博士は元はジョージ・スタンリーという日本に帰化したイギリス人生物博士である。
帰化する際スタンリーを「すたんれい」読みにしたのは「りい」という漢字で好みの文字がなかったからと聞く。そしてジョージを貞治にしたのは、偉大なるホームラン王から戴いたとのことだった。
「イギリスは野球が盛んではなかったのでは?」
「日本に来てハマりました」とにこやかに答える。しかし、博士が日本に来た頃はすでに世界のホームラン王はユニホームを脱いでいた。
子どもの頃に読んだドリトル先生に憧れて動物との意思の疎通について研究していた博士が日本に来た理由は「イグノーベル賞を受賞している研究者が多いこと」を上げていて、「優秀な研究者の多くはアメリカに渡り潤沢な資金を得て研究を続けている。しかし、『これは研究に値するのか?』といった内容でも研究する機会を与えてくれるのは日本だ」と博士は言う。
「勿論、褒めています」
その博士がついにカタツムリとの意思疎通に成功した。
カタツムリが出す電気信号が彼らの言語だということを突き止めた博士はそれを日本語に変換することに成功した。
ただし、通常の大きさのカタツムリではその信号は微弱すぎて感知するのが難しい。幸運にも博士はバスケットボールほどの大きさの殻を持つカタツムリとの出会いにより研究を進めることができ、またそのカタツムリからそれまでのカタツムリの常識を覆す話を聞き出していた。
その模様が収められている映像を発見。
以下がそのカタツムリとの会話である。

「いつも研究に協力してくれてありがとう。クロフォード」
「いえいえ博士。あなたの役に立てて嬉しいですよ。今日はいつもわたくしたちのことを真摯に研究している博士にとっておきの秘密をお教えしましょう」
「秘密?」
「わたくしたちにはある特別な能力があるのです」
「特別な能力?」
「その前に博士。博士は以前、わたくしにどうしてカタツムリの研究をしているのか教えてくださいましたね」
「あぁ…あの頃はまだ私が一方的に話していただけだったがね」
「ドクタードリトルの中に出てくるモモイロカタツムリを探しているのだと」
「そのとおり。モモイロカタツムリ。Great Pink Sea Snail。子どもの頃に見た映画で見た時に恋に落ちたよ」
「わたくしたちカタツムリがあの大きさになるには相当の年月が必要ですがね」
「そうだろうねぇ。クロフォードはいくつだったかな?」
「私は今年で38年目になります」
「38年でもかなり長生きだろう?」
「そうですね。わたくしより長く生きているカタツムリには今まで3体にしか会ったことがないです」
「そうなのかい?」
「大抵のカタツムリは1年前後。3〜5年という種類もいます。まぁ、この国だけで800種程度いますから、博士の知らないカタツムリもまだまだいるというわけです」
「そういえば、クロフォードはもともと日本のカタツムリではないと言っていたな」
「そうです」
「ペット業者とかに連れられてきたのかい?」
「いえいえ」
「そうだ。そんな大きななり・・で今まで無事にいたと感心していたんだ。普段はどこにいるんだい?」
「クモザル島です」
「え?」
「それは冗談です」
「冗談?」
「本当はヘンダーソン島です」
「イギリス領の?」
「えぇ」
「え?」
「それも冗談?」
「本当です」
「え?ならばここにはどうやって?え?」
「博士。落ち着いてください。私たちは瞬間移動ができるのです」
「瞬間移動?」
「はい」
「本当?」
「はい」
「まさか」
「いいですか?博士。よく見ていてくださいね」
「え?・・・クロフォード?クロフォードが消えた?え?」
「博士。後ろです」
「え?おぉ。クロフォード!これはいったい?」
「これが瞬間移動です」
「25年を過ぎた頃からうまくできるようになりました」
「クロフォード。瞬間移動はキミのように長生きをしていなくてはできないのかい?」
「そうですね。自分の意思で瞬間移動できるようになるのは15年くらいかかります。距離もぐんと伸びるのは20年を過ぎてから。わたくしは普段は中央アメリカ、ギアナにいるんです」
「なんと!」
「あそこにはわたくしたちの天敵になるような生き物があまりいませんから」
「そうですね。今度わたくしにGPSを取り付けてみては如何でしょう?今の私でしたら、おそらく機械を落とさずに瞬間移動できるはずです」
「いやいや、キミのことは信じるよ」
「ありがとうございます。博士。本当は博士と共に瞬間移動できればいいのですが…」
「あぁ、いや…」
「残念ながらわたくしどもの瞬間移動は人間の体には無理なようでして」
「無理?」
「わたくしたちもこの殻の中に身を隠して移動します」
「なるほど…」
「わたくしがもっと大きくなったら、あの桃色カタツムリのように、博士をこの殻の中にお招きできるのに」
「そんなことができるのかい?」
「えぇ」
「なんと!」
「でもそれにはもうしばらく時間を有します。ですから博士、是非とも長生きしてくださいましよ」
「あぁ、わかった」

博士の笑い声でこの会話は一旦ここで終わっている。
確かにカタツムリは一度画面から消え、博士の背後から再び元いた場所に這ってきた。
映像が加工された形跡がないことは確認されている。
カタツムリ・クロフォードの声は電気信号を変換したものということだが、後から音声だけを合成いたものではないと確認されている。電気信号を集音していると思われる機械がクロフォードの殻に取り付けられているのが、拡大された動画画面で確認できた。
そして同じ媒体から、今度は音声だけが発見された。
正しくは映像であるが、なぜかカメラは天井を映すばかりだった。
そこに博士とカタツムリの音声が聴こえてくる。カタツムリのは先程の動画の声と同一である。
カメラから少し遠い場所にいるのか、先ほどの会話より声が小さい。
しかしながらきちんと内容は聞き取れるので、そちらも聞いていただきたい。

「しかし博士。どんなカタツムリでも一回だけは必ず瞬間移動できるんです」
「ほぅ」
「おそらく、それは博士も確認できます」
「なんと!」
「わたくしたちは、その生涯を終える時、それぞれに決まった墓場・・に飛ぶのです」
「墓場にか?」
「えぇ。博士もお気づきのとおり、カタツムリには墓場と呼ばれる場所があります」
「あの殻が集まっているところか?」
「そうです」
「多いところだと200個ぐらいも殻がある」
「えぇ」
「その墓場に瞬間移動してるのか?」
「そうです。本人の意思とはなんら関係なく、瞬間移動をするから死ぬのか?と思うタイミングで瞬間移動んで終わるのです」
「なぜ?」
「わかりません」
「確かに今までも殻の集まっている場所を調べている最中にそこにまた新たな殻が落ちてくることがあった・・・・・・・・・・・。大抵、その殻の溜まる場所というのは木の下や塀や壁の側だったから、それまでくっついていたものが落ちてきたとしか思っていなかった」
「そこに定点カメラを設置することをお勧めします。どこからかいきなり殻が現れる瞬間を捕らえられますよ」
「そうだな。クロフォード。早速設置してみるよ。ありがとう」
「いえいえ。ただわたくしたちにも自分の墓場がどこなのか?はわからないのです。ですから博士の研究で、わたくしたちカタツムリにとっても謎である、墓場について、その謎をあばいていただきたのです」

音声はここで終わっている。
残念ながら、博士が行ったであろう、カタツムリの墓場における定点観測の映像はまだ見つかっていない。
音声・動画は博士が亡くなる5年前のものと推測されている。
洲淡麗博士には残念ながら子どもがなく、唯一のご家族である奥様は博士が亡くなる1年前に亡くなっている。ゆえに博士の研究資料はきちんと管理されることなく、我々、洲淡麗貞治研究会が現在、世界中に散らばった研究記録を採集しているのである。
最晩年におかれて、博士はこの瞬間移動移動についての研究を中心に行っていた、というのは博士が残した膨大な量の研究・観察記録から伺うことができる。
その資料の中で博士は墓場に突如として落ちてくるカタツムリの殻をいくつも確認していることと、墓場ごとに落ちてくる殻に対して、なんらかの規則があることを発見した、と記載がある。
その大事な部分が抜け落ちているのは、何者かが故意にそこを抜き去った、と我々は確信している。
その記録の中にもしばしば現れる「Cro」が、博士の親友でもあるカタツムリのクロフォードであることは想像に難くない。
そのクロフォードが今でも生存しているかを確認することも我々研究会の課題のひとつである。
電気信号の言語化という技術も一度は失われたが、現在の技術で、ある大きさ以上にカタツムリが発する電気信号を受信することに成功している。
洲淡麗貞治博士の研究を補完すべく我々研究所も日夜努力していることを述べて、今日は終わりとさせていただききたい。

次回の配信は・・・

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