【風見鶏ローディー】#毎週ショートショートnote
風見鶏ローディーなんて有り難くない渾名で呼ばれる。
夢は楽器店を開くことだが、今の世の中それはどうだろう?と思うようになった。修業のために老舗楽器店への就職をしたはずが、社長が代替りした途端経営方針が変わって、気がつけば派遣のローディー。毎日くるくる嵐の中で自分がどっちを向いているのかもわからなくなりそうだ。自分が求めていたのはこういうことだったのか?この屋根にしがみついている意味はあるのだろうか?
「笠間くん。うちの専属になる気はない?」
バンドリーダーが長引いている照明機材の調整の合間に囁いた。
「完璧なんだよね。段取りも調整も」
「バンド専属ですか?」
「ライブだけでなくてレコーディングとかもね、いろいろ携わってほしいなって思うんだ」
第一線で活躍し続けているグループだ。その申し出はとても嬉しい。何よりも自分のしていることが認められていることが嬉しい。
風見鶏も自分の足で歩けるはず。
「よろしくお願いします」
と即答した。