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楽園

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何もない町だった
「町だったところ」と言うのが正しいかもしれない
町の人は全て、便利な隣の町に移っていった
ここは無用の町だった
小高い丘にある強固な建物と少し離れたところに風車がひとつだけ、ぽつんと置いてけぼりをくらったかのように佇んでいた
かつては動いていたであろうそれは、今では強風に軋むように揺れるだけだった
私はこの丘を、この町を買った
無用の町は子どもの玩具とかわらぬ金額で私のものになった
数日分の食料と何冊かの本を抱えてここに来る
食料尽きるまでここに居て、読み終えた本と自分が作り出した“ごみ”を持ってここを出る
雨の音と風の音しか聞こえない
何もない場所
ここが私の楽園

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