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【沈む寺】#毎週ショートショートnote

日が沈む。
多くに僧兵が立て篭もる寺を包囲する。
仏に仕える者を的に回す自分達は一体何者だろう?と思った。
中には国宝である仏像もある。
「それはすでに偽物と入れ替えている」
驚くことに2年も前の話だった。
しかもそれは今僧兵と共に寺に籠る大僧正の手によるものだった。
「間違った方向に進んでしまっている。それはこの寺もそうだが、世界全てが違ってきている」
と彼は言ったという。
「もしも仏が生きるものたちを本当に救ってくれるのならば御印を」と国宝の
弥勒像を持ち出した。
「最後のひとりでも仏が救ってほしい。そうでなければ私は何を信じて生きてきたということになる」
大僧正は顔を歪めた。
狂った世界。
最後の説得が寺の外と中から行われている。
誰も寺から出てこない。
「撃て!」の号令が出る直前、寺から火が上がった。自院全ての建物から。更にそれらを囲む山林が一斉に崩れ始めた。
自分達は呆然とそれを見ていた。
誰も声を出せず、闇に沈む寺を見るだけだった。



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