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【キンモクセイ盗賊団の池】#毎週ショートショートnote

昔。巷でキンモクセイ盗賊団と呼ばれる義賊たちがいた。
彼らは転売ヤーと呼ばれる者から物を奪い、本来それを必要としている人へ渡していたという。
「え?転売ヤーの個人情報を国税局に渡していたと聞いたわ」
「ゲフン」
盗賊団の標的は転売ヤーと、転売ヤーを野放しにしている企業だった。
彼らが残す唯一のものがキンモクセイの香り。それも天然ものではない。某企業の作るトイレ用芳香剤の香り。
「相手を馬鹿にしていたんだ」
盗賊団は10年ほど活動を続けたが、ある日、活動終息宣言を出した。
これほどの間、転売ヤーを野放しにしている状況に嫌気がさしたのだ。
「我々はここに敗北を認め、盗賊団の終わり告げる」
多くの者が驚き悲しんだ。逆に標的にされてきた者たちは「ザマァ見ろ」と喜んだ。
転売ヤーのひとりがこの池にキンモクセイ芳香剤を放り込んだ。
真似して次々とそこに芳香剤は投げ入れられ香りは途絶えることがなくなった。
これがキンモクセイ盗賊団の池の謂れである。



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