唐沢俊一氏の功罪についての雑感

唐沢俊一氏の死去に伴い氏の功罪について考えました

まずは功の方から言及したいと思います。
氏の著作は、間違いや盗作などで批判されることが多いですが、自身の体験を反映した「薬局通」や潮健児氏をテーマにした「星を喰った男」は名著でした。

また、不確かな情報も多いとはいえ、B級雑学の著作を多く書き、トリビアの泉のアドバイザーを務めるなど、雑学分野の本やテレビ番組を開拓した功績は大きいと私は考えます。
この分野の仕事をしている人は、知らない内に氏の恩恵を受けていると言えましょう

次に罪の部分です。
90年代鬼畜系ライターの悪いところを体現したように、氏は他人への誹謗中傷まがいの評論を繰り返していました。
例えば、当時自分のところで働いていた伊藤剛氏をエヴァンゲリオンマニアの無能としてこき下ろした記事を書いていました。
伊藤剛氏がその後にマンガ研究で大きな仕事をし、大学で教鞭をとり、人間関係や仕事でのトラブルも起こさずに業績を挙げているのを見れば、氏はおよそ無能とは程遠い有能な人物であります。
唐沢氏の評論が一方的な偏見まみれの悪口でしかないことが分かる一例でありましょう。

仕事での不義理(無断引用による盗作事件や報酬を受け取って原稿を納めなかったトラブル)もよく聞きました。

聞きかじりの不正確な雑学を書き散らして信用を落としてもいました。

氏はお金に困っていたらしく、多くの人からお金を借りて返していなかったようです。
氏の社会生活での信用を最も落としたのが、数々の金銭トラブルであったと思われます。

ただ、氏の晩年のネトウヨ的発言を問題にしている人もいましたが、確かに偏っている発言ばかりではあるものの、限界右翼の陰謀論や差別発言に比べれば遥かに穏当で、特に問題視するほどの発言とは思えませんでした。

唐沢氏の政治的発言を批判している人自身が、普段は「安倍氏ね」などの別ベクトルで唐沢氏と同レベルの発言を繰り返していたりもします。
唐沢氏は左派のやらかしに嫌味を言ったり、執拗に批判をすることが多く、左派の人の視点から見れば「自分たちを攻撃する嫌な奴」であったことでしょう。
要するに「唐沢は堕落してネトウヨになった」という批判は、普段から悪口を言われていた左派の人が、唐沢氏への批判に便乗して仕返しをしているだけなのでしょう。

また、唐沢氏の言ったデマの1つとして「唐沢は北朝鮮の日本人拉致を否定していた」をあげる人もいますが、これは正確ではありません。
氏がデマ扱いしていたのは「北朝鮮が海底戦車を開発して日本に侵入し、日本人を誘拐している」という主張です。
後半は事実ではあったものの、前半の荒唐無稽さはデマ扱いされて然るべきものです。
北朝鮮による日本人拉致が事実と判明した現在でも、上記のような発言を聞けば、私だって否定します。

最後に私の唐沢氏への評価をまとめると、以下のようになります。

オタク文化や雑学が普及していない時期に著作やテレビを通して、オタク文化の市民権獲得に貢献し、雑学の楽しさを布教した功績は大きいものでした。

ですが、オタク文化が世間に浸透し、ネットが普及して人々が雑学に触れやすくなった現代においては、他人の悪口を言う鬼畜系のスタイルは世間の反感を買い、いい加減な発言はすぐにバレてしまい信用を落としました。

オタク文化黎明期に頭角を現し、オタク文化成熟期についてこれずに没落したのが唐沢俊一氏であったと思います