巧遅は拙速に如かず~完璧に拘るより、拙くとも早くアウトプットする~

皆さんこんばんは、福田達也です。

「巧遅は拙速に如かず」、皆さんはこの言葉を聞いたことがあるでしょうか。古くは、1200年代に、中国宋の謝枋得が編纂した、唐宋の「古文」の名作文章の選集文献、「文章軌範」にあらわれている言葉です。「巧遅拙速」と4次熟語として扱われることもあります。

この言葉の意味は、

《「文章軌範」有字集小序から》仕事の出来がよくて遅いよりは、出来はわるくとも速いほうがよい。

巧遅は拙速に如かず|コトバンク

という意味です。パッと聞いたところでは、仕事の出来は良いほうがいいじゃん!と思う方もいるかも知れません。なぜ巧遅は拙速に如かずと言われるのか、詳しく説明していきます。

巧遅と拙速

繰り返しになりますが、まずは言葉の構成から。巧遅とは、巧み(質が高い)だけれど遅いということ。逆に拙速とは、質が高くないが早く結果を出すということです。

一般的にですが、仕事の質と時間はある程度の相関関係があります。時間をかければかけるほど、仕事のアウトプットの質を高めることができるからです。

例えば、自分が絵を描こうとしている場合。適当に書きなぐった絵よりも、こだわりにこだわって時間をかけた作品の方が質も高くなりますし、世間からの評価も高くなるでしょう。

あるいは、テスト問題を解こうとしている場合。勘で答えを書いたり、計算や証明を適当に済ませていくよりは、一つ一つの問題にじっくりと腰を据えて、確実に点数を取った方が、ミスが少なくなり、結果的に高得点を狙いやすかったりします。

そういった意味では、拙速よりも巧遅の方が良いのではないかという意見も理解はできます。しかし、少なくともビジネスの場においては拙速である方が明らかに重宝されます。それはなぜなのでしょうか。

なぜ拙速の方が良い?

ビジネスの場において、拙速の方が良いとされる理由、その一番の理由は仕事は1人でするものでは無いからです。

例えば、自分が上司の立場で二人の部下(AさんとBさん)に2週間の期限で発表資料をつくる仕事を依頼したとします。Aさんは質を高めなければ…!と思いギリギリまでこだわりにこだわり、期限ギリギリに提出してきました。しかし、出てきたものは、資料としての質は高くとも、自分が意図した事と根本からズレていたりします。こうなると、修正する時間も無く、どうしてギリギリまで確認に来なかったんだと頭を抱えるでしょう。

逆にBさんは、次の日にアウトラインだけを書いたラフな資料を挙げてきました。メッセージがズレていると感じたあなたは、アウトラインを修正するように依頼します。するとBさんは次の日にアウトラインを修正して持ってきます。アウトラインが問題なさそうだと感じたあなたは、より詳細にするように指示します。Bさんはまた、二日後により詳細になった資料を持ってきます。それを見ていたあなたは、細かい所が気になったので修正を依頼します…。

いかがでしょうか。このように、複数人が関わるビジネスの場において、ギリギリに提出するというのは、何かがズレていても修正する時間がなかったり、外から見て進捗が分からないという大きな課題を抱えています。

それよりも、細かくアウトプットしながら一緒に質を高めていく方が、上司としても現状が把握しやすく、致命的なズレも避けやすいです。だからこそ、ビジネスの場では巧遅な人よりも、拙速な人の方が重宝されます。

また、従業員やフリーランスとしての仕事以外でも、例えば経営者のように決断を求められる場合においても、巧遅拙速は成り立つと言われています。なぜならば、事情や状況は私たちの決断を待ってはくれず、じっくりと考えているうちに機会を逃してしまうからです。

なぜ巧遅の方が良いと思ってしまうのか

なぜ巧遅の方が良いと直感的に思ってしまう、あるいは思ってしまう人が出てくるのでしょうか。少なくとも私は最初、巧遅の方が良いと思いこんでいました。

それは、これまでの学校教育に原因がありそうです。大学までの学校教育の中で、私たちは沢山のテストを受けてきました。そのテストでは、できるだけテスト時間ギリギリまで粘って質を上げ、ミスを無くすことが評価される状況です。更にいうと、テスト問題を解くというのは自分一人で完結する行為であり、また一度出した解答を修正する機会は与えられません。

すなわち、テストという環境においては、拙速の一番の強みである、アウトプットとフィードバックを繰り返して、軸を合わせながら質を高めるというアプローチが取れないのです。

この環境に長く漬かってしまったからこそ、自分のように巧遅拙速という価値観に切り替えるのに時間がかかった方も多いかも知れませんね。

終わりに

今回は昔の名言「巧遅は拙速に如かず」から、仕事においては質にこだわるよりも早くアウトプットしてチューニングを合わせていった方が、結果として仕事の質が高まるという事を紹介しました。

仕事というものは、テストのように一度提出すれば終わりというものではありません。寧ろ最初からうまくいかないことは織り込み済みで、何度も修正を重ねながら質を高めていくものです。

であればこそ、1人きりで質を高めようとするのではなく、第三者の目線や力を借りながら、フィードバックループを回す方が、結果的に早く高品質なアウトプットになります。

ついつい仕事の質に拘って時間がかかるという方は、「巧遅は拙速に如かず」という言葉を思い出してみてください。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。
また次の記事でお会いできることを、楽しみにしています。

参考文献

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