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風を治すクスリ(毎週ショートショート)
その風は病んでいた。
いっときには激しく吹き荒ぶかと思えば、次の刹那には音も無くその存在を消してしまう。
それは時には人を殺め、家屋をたちまちの内に損する。ある時にはまた病を遠方まで運び、舟を彼方へと拉致した。
そんな怪異『障り風(さわりかぜ』を人々は恐れていた。今よりはるか昔の事である。
それは呪いであり、祟りで且つ、神でもあった。その神が病になった姿、それこそが障り風である。
だが中には無謀にもその病を治そうとする者たちもいたのだ。
彼等は『射矢師(いやし)』と呼ばれ、特殊な薬を箱に入れて常に持ち運び、その薬効を施した矢で以て、障り風を射ていたのである。
彼等はもはや歴史に埋もれてしまった。
悲しい哉、風を治そうとしたその試みは、一掴みの砂の如く儚く消えてしまったのである。
しかし、実は今に名残あるものもまた多い。
現在の癒しの語源であり、医師(箱から矢を射る者の意)の語源でもあるのだ。風の運ぶ邪悪なるものが風邪である。
というのが私の妄想だ。
久方ぶりに参加してみました!
完全に僕の妄想なので間に受けないで下さいね。
読んでいただきありがとうございます。
またよろしくお願いします。