「自己決定力」とは何なのか?新春に思う
上り坂の東川町と、そろそろと下る未来へ
正月休みに読もうと「せんとぴゅあ」(東川町のおしゃれな図書館)で「経済成長なき幸福国家論」(平田オリザ・藻谷浩介)を借りました。
副題は「ー下り坂ニッポンの生き方ー」とあります。
東川町は人口が増え、予算規模も大きくなっていて今まさに上り坂を駆け上っている状況にあります。
人口は8,600人前後で行き来していましたが、北町に分譲された「ノースビレッジ」の新築住宅工事が完成しつつあり、全部出来上がると8,800人台になるでしょう。
アパートや新築住宅の工事も旺盛にあるところから、9,000人に到達するのも現実味を帯びてきました。
また町の予算規模も185億円(R6.12月補正後)になりましたが、この後の補正予算で200億円を突破するものと見ています。
全国の田舎町が衰退していく中での東川町の勢いは、非常に稀有な事例であります。
12月29日の日経新聞にはカラー3面にわたって東川町が特集されました。
この「経済成長なき幸福国家論」の中にも写真文化を基軸とした活力ある町として東川町に触れられています。
そんな東川町ですが、いつかは下り坂を降りる時がやってきます。町の推測によると人口のピークは2035年。
平田オリザ氏の別著タイトルにあるように「下り坂をそろそろと下る」心構えも必要だと考えながら、町議として取り組んでいるつもりです。
田舎が育む自己決定力と東川町の活力
さて、「経済成長なき幸福国家論」には「自己決定力」という言葉が出てきます。また、都市部で暮らすよりも田舎での生活のほうが自己決定力を発揮できるし、必要とされる場面が多いというのです。
そして自己決定力を発揮する人たちが活躍する田舎ほど、活力があるとも書かれています。
そう言われると、東川町も自己決定力の高い方が多いですね。
本の中には、東京には決まった枠組みがあって、自分がどのパーツに入るのかを決めることが自己決定力と思われている節があるけど、
田舎における自己決定力は、地域社会の中で自分の能力を活かして暮らしていくこと。複数のポジションをこなすとか、状況によって立場が変わるとか。
田舎は小さなコミュティだから、自分がどういう社会的な役割を果たすかを自分で決めていかなくてはならなくて、それが自己決定力だ。
そんな風に書かれてあります。
カメラマンから町議会議員へ
翻って僕は、大学卒業した後に企業に入ったまでは良かったけど、そのパーツに上手く自分をはめることができず、悶々とした日々が続きました。
そんな憂鬱さに耐え難くなり5年で退社しました。
まだ終身雇用が色濃い時代でしたから、後ろめたい気持ちのままに。
オンボロのワンボックスカーを買って、ベッドを作り、生活用具一式積んで目指したのは北海道。北海道の写真を撮りたいという思いだけでした。
28歳で北海道に定住を決めカメラマンになって以降、ここまで28年、あらゆることを自分の意思で決めて行動してきたつもりです。
上手くいかなかった時は一人苦しむ状況に陥りますが、会社や他人に押し付けられることがないだけに、楽な生き方をして来られたと思っています。
サボるのも自分勝手ですし。
気ままに生きてきて、写真を撮るという特技を活かして生計を立てて来られたのは幸運だったとしか言いようがありません。
(小学4年のクリスマスに一眼レフカメラを買い与えてくれた親に感謝)
その中でいつしか、自分中心の日々じゃなく、社会のために何か自分としてやれることがあるんじゃないかという思いが芽生え、思い至ったのが町議会議員への立候補だったのです。
2019年、4年に一度の選挙を目前にした頃のこと。
その前の選挙で誰に投票したのかも曖昧で、まさか自分が立候補するなんて思いもよらなかったのですが・・・。
東川小学校や、せんとぴゅあの建設などなんだか都市化していくような東川町の様子にどうにもしっくり来なかったという思いと、「議会だより」も読んだことなかったけど、議員は何をやってるんだ?という気持ちと。
またその頃「東川のプロフェッショナルたち」という冊子を自主的に中学生向けに制作した直後でした。
23人の町のプロフェッショナルたちにインタビューしたことで、東川町をより良くしたいという気持ちを持った方々が多くいることを知った時期でもありました。
(ちなみにそのうちの一人が町長になり、一人は農協の組合長になり、今町の行事で顔を合わせる機会がよくあります)
そんな誰かが議員に立候補してくれないかなという気持ちでしたが、いつしか他人に期待するのではなく、自分で立とう。その方がスッキリするという思いに至ったのでした。
今まで自分本位でやってきたけど、地域のために何か活動すべき順番が巡ってきたんだと。
情報を伝える議員としての役割と自己決定力
それが今から6年前、2019年、50歳のことでした。
現在2期目の2年目でちょうど折り返しになります。
6年間議員をやってますが、議員として何かを成し遂げたという成果はありません。
そもそも実現したい政策を持っている訳ではありませんし、福祉や教育など得意な分野がある訳ではありません。
ただこうやって書くことは自分の役割として存在意義はあるのではと考えています。
町民に議会や町政に関心を持ってもらうことは、民主主義や住民自治の観点からも大事なことだと思うからです。
先に「田舎における自己決定力は、地域社会の中で自分の能力を活かして暮らしていくこと。複数のポジションをこなすとか、状況によって立場が変わるとか」と「経済成長なき幸福国家論」の一節を紹介しましたが、飯塚の議員としてのポジションは情報の伝達というところになると思います。
もちろん自分の意見や思想(というほど大袈裟なものは持ち合わせていませんが)、嗜好はありますが、それを主張するのが第一義ではないのがこのnoteです。
皆さんがそれぞれ考えたりする材料として、活用してもらえたら幸いです。
何を書こうか、どこまで触れようか、それも自己決定力。
今年もどうぞお付き合いください。
2025年の抱負でした。 飯塚達央
以下、飯塚の各ポジションのリンクです。
写真スタジオ「フォトシーズン」
写真家として20年続けているブログ「Breeze from Hokkaido」
2024年7月に立ち上げた一棟貸しの宿 「フレッドハウス東川 FredHouse」