#05 鈴々
どうにも長い夜になりそうである。
妻に陣痛がき始めたようで、夕方あたりから
立ち合い出産のスタンバイをしているが全然お呼びがかからない。
※今回の病院において、入院中の妊婦の立ち合いに関しては
陣痛がかなり狭まり生まれる手前にならないと来訪NG
仮眠をとっておこうと思い早めから布団に入っていたが全然眠れない。
しょうがないので、2024/11/14(木)の一日を振り返るとともに
今の心境も綴っておこうと思う。
妻の出産を待つ夫のリアルな気持ちとしてご覧いただければと思う。
2024/11/14(木)
AM
【妻】
妊娠誘発処置が<薬剤>のフェーズに入る
点滴を設置、血圧は買ったり胎児をモニターしながら食事。
いつどうなってもいいよう、入院していた4人部屋から個室へ移動。
【夫】
妻から、病院食が足りないからと
こっそりレーズンとチーカマを差し入れに頼まれる。
→僕は練り物が嫌いなので商品の区別がつかず
間違ってふつうの魚肉ソーセージ買ってしまう失態
前日預かってた洗濯物を洗う
簡単に昼食を買って出発
14:00~15:00
【夫婦】
夫(ぼく)が面会に到着。
その時もAMと大体同じで個室内で点滴中。
昨日の物理での誘発処置ほどは陣痛がなく、感じるのは感じるが弱め。
今週中に産みたいけど今日はないかもね的な談話。
いつも見ている『ソーイング・ビー』を録画してほしいとの依頼。
看護師さんがいらっしゃり、医師に相談の上で点滴レベルを+1。
30分ほど滞在し、体調に変化ないためその場を辞する。
15:00~17:00
【夫】
帰宅。預かった洗濯物を再び洗う。
今日の出番はないかもな、と思いながら番組の録画予約、HDDの整理。
Switchで『ドラクエⅢ』買いたいなぁと思いながら我慢。
久々に『ストライカーズ1945Ⅱ』やったらとても下手になっていた。
【妻】
点滴継続。
じわじわと陣痛が加速し、10分間隔よりも狭まり始める。
個室なのをいいことに、気分転換で櫻坂46を歌った(らしい)。
17:00~19:00
【夫】
妻から「2分間隔で陣痛がき始めた」と連絡あり。
いつでも出られるよう、夕食として卵焼きウィンナー定食を作り食す。
しかし病院の立ち合いシステムの関係で 、まだ行くことができない。
しょうがないので以前買っていた『風来のシレン6』をやる。
当然あんま進まない。
【妻】
陣痛の間隔が狭まる。
本人曰く、涙しながら看護師に背中をさすってもらわないと耐えれない痛み。
合間合間で夫と実家のお母さまにLINE。
19:00~24:00
【夫】
なんとなく東京ホテイソンのYouTube見たりするが落ち着かず。
自分の実家サイドの家族LINEで仮眠とっとけば、との提案があり
21時ごろ眠ろうとする。が、眠れないのでシャワーを浴びる。
まださっぱり眠気が来ないのでPCを開く。 ←今ここ
【妻】
押し寄せる陣痛を泣きながら耐えているらしい。
18時以降に後退した遅番の看護師さんはなかなか部屋に来ず、
フラストレーションを募らせているようだ。
どんどんメッセージ内容も単語のみになってきている。
偉いと言ってほしいとか、早く生まれてほしいという心境だが
まだ子宮口が準備万端ではなく、延々陣痛に苦しめられている。
疲れた、とかイヤになった、とかも増え始め応援に苦慮する。
【立ち合い出産スタンバイ中の今の気持ち】
というわけで、おそらくこのまま生まれたとしても
明日15(金)の午前中、下手したら昼頃になるだろう。
出産は思ってた以上に長い。
時間に融通の利く無職でよかったのかも。
仕事やってたら確実にイライラしている。
家で陣痛がスタートしてたら空気も最悪だった。
今さっきも、延々と続く痛みに対し呪詛に近いメッセージが来ていた。
入院中でよかったのだろう。
ここにきて夫である僕が考えていることは
生まれてくる子に思いを巡らす、とかではない。
正直なところ子供のことを今は考えていない。
妻が苦しんでいてめちゃめちゃ不機嫌になっているのがつらく、
家から離れた病室で、泣き叫ぶほど痛いというのが
もう不憫でしょうがない、という心境だ。
それを早く取り去ってあげたいけどどうすることもできない、
産むしか終わらす手段がないのであれば
一刻も早く産まれてきて、彼女を解放してあげてほしいという気持ち。
本当に今、それしか考えていない。
胎児に妻を人質に取られているような感じである。
早く円満解決させたい。ほんとただそれだけ。
今この段階で、妻より子供が気がかりですって言える人がいたとしたら
その方はスーパー偽善者だと思う。
まだ顔を見たこともない我が子より、
毎日顔合わせてるパートナーじゃない?と思っちゃう。
もし僕の子供が将来、この文章を目にして気を悪くするかもしれないが
それだけ今の僕は妻を大事に思っているのだ。
【病室の妻について考える】
妻と初めて会ったのが昨年の9月。
結婚するつもりで付き合い始めたのが12月。
突然の妊娠発覚が3月。
急いでした結婚が5月。
同棲開始したのが6月。
出会って以降、1年と少ししか経っていない。
もちろんプロポーズもしたけどイマイチ期間が短く、年齢も13歳差と非常に大きな隔たりがある。
我ながら、まだなんとなく関係性が熟していないなと思っていた。
出来ちゃった結婚ではあるが、もちろん相手のことが好きで結婚したわけで。日常の家事をこなしているのもこの人に褒めてほしいからだし。
ちゃんと愛してはいるんだけどこの愛ってもしやまだ浅漬けかな?と。
が、出産という困難かつ最大なイベントを前にし、
やっぱり僕はこの妻のことが今一番大事なんだなぁと再認識した。
たぶんこれは愛しているということなんだろう。
今になって関係性が熟したのかどうかわからないが、人生のパートナーとして信頼を置いており、なくてはならない存在になった。
あの人がいなくなったら困る。
お産を耐えきって元気な子を産もうとするあの姿勢を見るとそう思わずにいられない。ぶっちゃけ家でちょっと泣きそうになっている。あの人が母になるのなら僕も堂々とした父になる必要がある。
僕とあの人で始めた活動にもう一人、子が加わって家族という単位になろうとしている。3人で形成する家族を、世界中どの家族よりもあたたかいものにしていけるよう、必死でかんばってみようと思っている。
今はそんな気持ちだ。
【夜更けに家で一人】
この文章を書き始めたのは23:00ごろだったが早くも1時間以上経過、
お呼びはかからぬまま日付が15(金)に変わってしまった。
引き続き待つことしかできない。
今夜はおそらく徹夜だ。
文章を書いたらちょっと脳が疲れたので、
今なら呼び出しがかかるまでの間、仮眠が取れそうな気がする。
次回は父になった日記でお会いしましょう。