医療機関 ~医療システムと診療情報提供書~
医療機関勤務、立花です。
医療機関と一言に言いましても何百床と入院ベッドがあって高度な検査や手術のような急性期医療をやっているような大学病院のようなところから、大学病院みたいな高度ではないけど医療処置だとかリハビリテーションとか必要な人が入院するような医療機関(一般的には亜急性期とか療養病床とか回復期リハビリ病床とかいろいろある)。更に入院施設を持たない診療所とかいろいろな種類あります(入院機能のある診療所もあります)。
本来なら、救急含め病気や怪我の高度な急性期治療が必要な人が大学病院のような大きい病院行って、症状が落ち着けば退院して家に帰ったり、まだ家に帰れるようなレベルでなかったりするなら転院して身体状態に合わせた治療や療養を行います。そして自宅で生活するレベルの人でも定期的に通院して薬をもらったりとか必要な人もいますので、そういう人は地域の診療所とかクリニックのようなところをかかりつけにして治療していきます。もし症状が悪くなったり高度な治療や検査が必要になればかかりつけにしている診療所から大きい病院に紹介してもらうという、大まかに言うならば医療業界はこんな仕組みになっています(ややこしくなるので介護系の話は除きます)。
この仕組みがちゃんと機能しているかというと、ちょっと疑問符を出したくなるところがあります。
医療システムの問題
一つは医療保険制度にあるフリーアクセスの制度。これは患者が受診する先を自由に選ぶことができるというものです。
極端な例を挙げれば、鹿児島に住む人が受診したいからとわざわざ飛行機に乗って東京の医療機関に行って受診しても良いわけです。
もちろん良いシステムであるのですが、一方で問題もあります。
(一般に言われる「ドクターショッピング」と言われる一つの疾患に対していろんな医療機関を渡り歩いて受診する問題もこのあたりかと)
昨今は紹介状なしで大きな病院に行くと初診時に選定療養費で別途料金を取られるようになりましたが(これは国が医療の機能分化を進めているため公的に定められています)、それでもいろんな検査がそろってるとか有名な医師がいるとかで患者の大病院にかかろうという指向は相変わらずみられます。
もう一つは医療の地方格差。
東京の都心部や大都市に住んでいるとわかりにくいですが、地方になると医療機関自体が不足していることも少なくありません。
かかりつけに通院しようとしても、その辺りの地域に診療所自体が存在していないということだってあります。
その結果、大きな病院の外来がかかりつけを兼ねてしなければならないということだってあります。
また、高齢者となると移動するのも大変になるので、「家の近くの医院を紹介しますよ」となっても、「ここ(大病院)が一番行きやすいのでここがいいです」というのも割と多い話(大きな病院は駅近くだったり送迎バス持ってたりするので)。
診療情報提供書の話
あと、これは内部事情になりますが、他院に患者を紹介するというのは割と面倒なことがあります。
患者を紹介するには「診療情報提供書」という紹介状を書いて、治療経過などの患者情報を渡す必要があります。
合わせて検査結果やレントゲン写真のような資料も用意して渡したりするわけです。
まあ、それら用意するのって割と面倒なわけです。それが嫌で他院に紹介しない医師がいるという話も聞くくらい。
一方で内容がスカスカな診療情報提供書を寄越してくる医師がいるのも事実。
昨今の専門化した医療になってくると、自分が診ている疾患以外の病気について書いてこないということもよくあります。
つまり、紹介された患者がもらった診療情報提供書に書いてないような病気とかを持っているということも珍しくないということ。
しかもそれについて先方が知っているか知らないのかもよくわからない。
知らない場合は先方に問い合わせしてもわからないとしかならないからもうね。
紹介状持って行ったのにやたら問診で聞かれるというのはこういう事情があったりもします。
あと、紹介する側からすると、どこの医療機関に紹介するかというので悩むこともあります。
患者の方から「○○医院をかかりつけにしたい」という場合もありますが、一方でよくあるのがそんな希望のない場合。
これは先ほど書いた移動の問題もありますし、医師や医療機関の専門や治療内容の問題もあります。
特に後者は「うちではそんな治療やってないんで」と断られることだってあるわけで。
こういう場合、医師同士が仲がいいと上手くいくことが経験上多いです。
何せどういう分野の治療に強いとか分かるため、患者に対しても強くおすすめができるわけです。
コミュ強の医師にかかっておくと、こういうとき有利かもしれません。
現場の苦労を知ってか知らずか機能分化を進めている国の政策に流される医療機関でありますが、それ故に同業他社ということで他の医療機関と単純な競合関係にはなれないんですよね。
お互い持ちつ持たれつでやっていかないとやっていけないので。